新しいうつの正体に迫る。『職場を襲う「新型うつ」』を読む

職場を襲う「新型うつ」

好きなことをするときは元気、しかし会社に行くとうつ病に。

新型うつの正体に迫るNHK取材班編著『職場を襲う「新型うつ」』(文藝春秋)の読書感想です。

内容について

若者に多いとされる新型うつを特集したNHKの本。NHKスペシャルを書籍化した内容で、新型うつと従来のうつとの違い、なりやすい人や原因など、様々な視点から、新型うつの正体に迫っていきます。

以下、本書の気になった内容です。

新型うつとは(P8~21)

新型うつは若年層に多いと言われる軽度のうつ病。性格的なものが絡み、投薬では効果が出にくいのが特徴。

うつ病とは違い、好きなことをするときは元気で、出社するとうつ症状が出るというように、周囲から理解しにくいところがある。病気なのかわがままなのか、区別がつきにくい。

新型うつになりやすい人の特徴(P29~32)

新型うつを発症しやすい人の3つの特徴。1・人間関係が苦手。2・ストレスに弱い。3・失敗を過度に恐れる。

こだわりが強く、プライドが高い人が多いため、仕事で注意されると、それが当人にとって大きなストレスになってしまう。自分の間違いを認めず、他に責任を転嫁するため、周囲とトラブルを起こしやすい。

新型うつの人にはどう接するか(P57~62)

新型うつを患う人は、プライドが高いが、自分から問題を解決するような行動力はない。

プライドが高いため、頭ごなしの叱責は効果がない。信頼関係を築くことが第一で、叱咤激励は人間関係を築いてから。本人を一から育てるつもりで接する。

新型うつが若者に多い理由(P84~85)

若者を中心に新型うつが多いのは、社会環境の変化が要因にある。核家族化が進み、昔のような地域のコミュニティが減少、子どもがいろんな人間関係を持つ機会が減った。結果、こどもが人から叱られたり怒られるという社会教育を受ける機会がなくなってしまった。

親は子どもを叱らず、学教でも、教師が子どもを叱らない(というか叱れない)という状況、子どもが甘やかされ、責任感の乏しい、精神的に未熟な若者を増やしている。

新型うつは自信のなさが原因か(P104~108)

新型うつ患者の若い女性の例。

他罰的で感情の起伏が激しい、0か100かの極端思考の彼女は、過干渉の母親の厳しい教育により、自分の意見や意志を主張することができず、自分に自信を持てずにいた。

失敗=叱責であるため、彼女は失敗を極端に恐れてしまい、何でも母親の言うとおりに生きてきた。新型うつの背景には、親子関係の問題があり、本人だけの問題とは言えない。

成果主義導入で増えたうつ病社員(P142~145)

成果主義を導入したある会社の話。

成果主義を導入したら、社員同士の関係がギスギスしだし、社員の給与格差が広がった。そして、うつ病で会社を休む社員、メンタルの不調を理由に会社を辞める社員が増えた。

結果、会社は一時的に伸びたが、すぐにダメになってしまった。そこで、成果主義を見なおし、社内の人間関係を修復するため、クラブ活動などのソフト面の充実をはかった。すると、社内の空気が変わり、離職率は減った。

成果主義は、結果を出す人は、どれだけ給与を増やそうと、やがて会社に不満を持ち出し、「もっと良い給与」を出してくれる他の会社に行ってしまう。結果を出す人だけが評価される会社は、多くの人の居場所を奪ってしまう

一人だけ評価されるようなシステムの会社ではなく、みんなで協力できる会社の方が良いのではないか。

感想など

従来のうつ病と、新型うつがどう違うのか、なぜ若い人に新型うつが多いのかが分かる本。

新型うつになる人は他責的な特徴があって、人間関係でも仕事でも、「自分が正しい、だから周りが間違っている」という考えが前提になっているそうです。

この点、『オレ様化する子どもたち』という本とあわせて読むと、新型うつにかかる人の個人的要因が、より深く理解できると思いました。

個人的に印象に残ったのは、第二章に書かれている新型うつの人との接し方。

ここでは、部下を丁寧に社会人として育てていく感覚が必要ということが書かれているのですが、最近の即戦力が求められる就職戦線において、彼らの存在が、会社に人を育てることの大切さを伝えているように思えてなりませんでした

効率重視、すぐに結果を出すことを求められる世の中だからこそ、時間をかけて、ゆっくり大切に育てていく。人が大切にされる社会が来ればいいのですが。

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