自己啓発にハマる前に知っておきたい不都合な真実。『「自己啓発」は私を啓発しない』を読む

自己啓発に600万も使ったからこそ言える自己啓発のダークサイド。

齊藤正明著『「自己啓発」は私を啓発しない』(マイナビ新書)の読書感想です。

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この本について

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』で有名な人材コンサルタントによる自己啓発のダークサイドを語った書。

著者の斉藤さんは大学卒業、研究開発に仕事に就きますが、そこで上司との関係に悩むことになります。

そこで、「自分を変えたい!」という思いで、記憶力アップの教材やら、コミュニケーション力アップのセミナーやら、様々な自己啓発関連に600万円ものお金を使うようになります。

「自己啓発にハマった結果どうなったのか?」というのか本書の内容。

「自分を変える、自己実現」などポジティブで前向きなイメージがある自己啓発のダークサイドや注意点が、誠実かつ公平に書かれています。

以下、本書の気になった内容の要約です。

自己啓発セミナーの危険性(P58)

自己啓発セミナーで教えられることは、人のせいにしない自責性、ポジティブシンキング、チーム作りの大切さ。

どれも確かに大切で良いことのように思えるが、セミナーのなかには主催講師に洗脳されるリスクもあるので注意が必要

ハマってしまうと、文字通り「ネギを背負ったカモ」になり、次々と高額のセミナーに勧誘されていく。

セミナーと洗脳(P64)

自己啓発セミナーのなかには、意図的に参加者を洗脳させようとする危険なものがある。そのため、次のようなセミナーは注意する。

1)隔離された会場で、数日拘束されるセミナー

2)セミナーに参加すると、自分の生き方や価値観を否定され罵倒される

3)「○○を信じればいいのですよ、△△が正しいのですよ」と参加者を心理誘導する。

これらは、カルト教団が用いる洗脳のテクニックであり、自己啓発セミナーのなかには、このような洗脳テクニックを用いたものがある。

自己啓発は意味がない?(P80)

自己啓発をする人の背景には、自分を変えることで、誰かとの関係を良くしたり、今の状況を変えたいという気持ちがある。

しかし、自己啓発して自分を変えようが変えまいが、変えられることもあるし、変わらないこともある

むしろ、何もしなくても状況が変わることもある。

異業種交流会に参加しても人脈は作れない(P112)

異業種交流会に参加する人は、自分をPRして、自分の顔を売りたい人。

気の強い人、オシの強い人が「私はこんな人です」とガンガン頑張り、気の弱い人は、売り込まれる人になる。

人脈を作るなら、自分自身が、「会ってみたい、この人といるといいな」と思われるような、魅力的な人間になること。

「自分で人生を切り拓く」という考え方(P127)

人間が生きていく上で、自分で変えられること、変えられないことがある。思い通りにいかず、運命に流されてしまうようなこともある。

そんなとき、人間の意志というのは何の役にも立たない。

「人生は自分次第、自分は何でもできるようになるし、人生は思う通りに変えられる」という自己啓発の考え方は自然の流れの中から見ると不自然な考え方。

ポジティブ思考は正しいのか?(P165)

「ネガティブなことを考えてはいけない。悪いことは口にしてはいけない。どんなときも前向きに考える」というポジティブシンキング。

前向きな考えは大切かもしれないが、ポジティブシンキングによって現実把握ができず、状況が悪化してしまうことはよくある。

ポジティブ教の信者にならず、ポジティブさとネガティブさ、状況に応じたバランスが重要。

無名な人が本を出版して成功するには(P171)

金なし、人脈なし、実績なしの新人が本を出して成功するためには、企画の斬新さが必要。定番のテーマやその道の権威がたくさんいる分野は、チャンスがないかも。

人は結果でしか判断しない(P177)

人が自分を見る目は、自分の外面。

職業や経歴、実績など、見えているもので判断する。上司だろうが友人だろうが、人の評価は当てにならず、気にしても時間のムダになることが多い。

人からどう思われているかは意味のないことなので、人の評価は気にせず、自分のやるべきことをやっていくことが大切。

商売するなら人から求められていることを(P188)

商売するなら、「自分がこうしたい!」ではなく、人が自分に期待していることをやる。耳や目、感覚を使い、お客の反応を観察、期待することを探り当てる。

自由な時代の苦しみ(P193)

現代の私達は、江戸時代の人々とは違い、役人を目指すこともできるし、独立して商売をすることも選べる。

選択は私達が行い、それにともない、結果責任を追う。

誰もが成功する可能性があるため、みんな自分の人生に期待するが、現実問題、成功できるのはごく一部の人だけ。

一部の成功者がいるからこそ、なぜ自分は成功できないのか、悩む人が増えていく。

自分の人生にチャンスと可能性を感じて、期待するからこそ、苦しみも深い。江戸時代のように生き方の選択肢が少ない時代の方が、人々の幸福度が高かったのではないか。

自己啓発は自分のため(P204)

自己啓発は自分のためにやるもの。自分が成長を目指しているからといって、人様の生き方にあれこれ口を出してはいけない。

感想など

自己啓発費用に600万円使った著者の赤裸々な体験談が胸を打つ面白い本でした。

自己啓発にハマるときというのは、「自分を高めたい!」という意欲や、「今のままではいけない!」という現状否定が背景にあると思います。

しかし、「よくなりたい、現状を変えたい!」という思いが、実は我々を不幸にしているのではないかということを教えてくれるのがこの本。

個人的に印象に残ったのは、158ページあたりに書かれている著者と超ポジティブシンキングな村上さんの会話。

元会社役員、年収1000万円以上でセミナー講師として独立した村上さんという男性が登場するのですが、超ポジティブな考え方に驚いてしまいます。

高い会場でセミナーを開いても、お客ゼロ。集客もダメで、売上もさっぱり。奥さんとは離婚。愛車は売り払い、ハタから見ると「これは厳しいだろう」という状況。

にも関わらず、村上さんは、「何とかなるさ」と超前向きな態度で著者と会話をしています。

結局、村上さんは姿を消してしまうのですが、ここに自己啓発の危険性というか、ダークサイドを見たような気がします。

いくらポジティブになっても、人生どうにもならないこともあります。

適切なバランス感覚で、ポジティブなこともネガティブなことも、正面から受け止めていくのが大切なのかもしれません。

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