夫婦は結局契約関係?
斉藤学著『「夫婦」という幻想』(祥伝社新書172)の読書感想です。
この本について
精神科医による夫婦論。
夫と妻、家族として生きていくこと、そもそも夫婦関係とは何なのか、なぜ結婚で失敗するのか、未婚者既婚者問わず、夫婦や家族について、考え方を深められる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
結婚の恐ろしさ(P21)
結婚すると「自分の家族と同じような家族ができる」と思っているが、それは幻想。
男と女、それぞれが持つ家族像は全く違う。だから、結婚後に「何かが違う・・・」と焦るようになる。
結婚とは、全く異なる家族像を持つ男女が自分のそれぞれに思い描く「理想の家族」ができるものだと勘違いして一緒になること。
妻が無口になったら要注意(P36)
妻の無言は抗議のサイン。
放置しておくと、「夫には何を言ってもムダ」と諦められ、離婚へ一直線へ。不満を聞き出し、対処すべし。
子どもの行動は夫婦関係のパラメーター(P47)
子どもは夫婦が抱える問題を行動で示す。
非行、ひきこもり、援助交際などの問題行動の背後には、夫婦の問題が隠れている。
特に、思春期の子どもの問題行動は、子どもではなく、夫婦の問題として考えることが大切。
結婚欲が薄れる現代において(P52)
未婚率の問題等の背景には、結婚観の変化がある。男性も女性も、結婚することへの意識が確実に変わっている。
特に男性は結婚のリスク(結婚による不自由さや離婚後の慰謝料などの金銭的なリスク)を知る人が増え、「何がなんでも結婚!」と考える男性が少なくなった。
結婚需要は今後ますます減少していく。昔のような結婚観ではなく、結婚する必然性や意味を考えることが重要。
なぜ女は豹変するのか(P61)
結婚後に激変する妻の態度。
夫は「なぜ妻が変わってしまったのか・・・」と嘆くが、真実はシンプル。妻が猫をかぶっていた、それだけの話。
結婚前の女は本当の姿を見せない。出会い、交際、そのなかで、男にとって魅力的な女を演じていることを意識しておく。
日本の家族制度の変化が分かる小津安二郎の映画(P109)
日本の映画監督、小津安二郎の作品を見ると、日本人の家族のあり方の変化が、実によく分かる。
『晩春』→『東京物語』を見ると、日本のそれまでの家族制度が崩れ、家族像、システムが変化していることが分かる。
核家族はもろい(P115)
就職で都会へ、会社に勤め郊外に一軒家を購入。
自分の住んでいる土地に格別な愛着がなく、近所付き合いはほどほど。せっかくローンで購入した一戸建ても子どもが住み着くわけでなく、子どもも独立、家を出て離れていく。
親は老後一人で一軒家の家で過ごし、孤独死に。こうした、問題が郊外都市で起こっている。
結婚後は定期的に結婚相手との関係を見直す(P168)
人間は変わっていく。彼女がどんな可愛い子ちゃんでも、年を取れば容貌は変化する。性格も変わる。
結婚して、同じような相手と、同じような生活が続くことはありえない。
だからこそ、結婚するなら、定期的にパートナーと話し合って、お互いより良く暮らしていける暮らしが必要。
賃貸のように契約事を決める必要はないが、定期的に、互いの関係、求めることを話し合うことが大切。
人生は多少のいい加減さが必要(P182)
世の中、こだわりや自分の考え方を固執しすぎると、生きにくくなってしまう。
人生は自分の思い通り、計画通りにはいかない。突然のトラブルで、予定がガラリと変わってしまうこともある。
だからこそ、人生、硬くなりすぎず、多少の融通、柔軟性を持つ。
「絶対に○○する!」など決めつけず、その場その場、取り組み変えていけばいい。起こったことに応じて柔軟にやっていけばいい。
妻選びは投資物件選び(P207)
著者による男性へのアドバイス。妻は投資物件を選ぶように考える。
結婚を考えたら妻を物件だと考える。魅力的でお金を払う価値があるのであれば投資する。魅力を感じなければ投資しない。他の物件へ投資し直す。
結婚という投資の安全性を考える上で大切なのは、集中よりも分散。一人の相手に全てを賭けるのはやめておく。それが危険を回避する予防になる。
感想など
「夫婦関係は変わるから賃貸のように定期更新を」
「男は結婚相手は投資物件選びと考える」
など前進的な結婚観が刺激的な本。
結婚したら夫婦仲良く一緒に暮らしていけるというのは幻想で、実際は夫婦仲を保つ工夫が必要。
本書の「結婚するというのは、家族観が異なる男女が、顔族に対してそれぞれの幻想を抱えたまま暮らしていくこと」という指摘は素直に納得。
30代で早くも離婚した周囲の人の話を聞くと、その通りだと思います。
未婚者は「その結婚は大丈夫なの?」と決断の材料に、既婚の人は、「パートナーと今後はどう付き合うの?」と覚悟を問う、そんな本です。