岸田秀著『ものぐさ精神分析』(中公文庫)の読書感想です。
こちらは、日本近代の精神分析から性、人間、ナルシズムなど、いわゆる精神分析的な方法で、独自の論が展開されている本。
歴史や国家を精神分析するという点が独特で、
・幕末の日本が近代化していく分析(ペリー来航と日本の分裂症発症)
・吉田松陰と近代日本の関係
などは、読んでいて面白く、「こんな考え方もあるのか、いろんな物の見方があるものだな」と感じました。
心を分析すること
「なぜか木曜になると、キット◯ットのチョコレートが食べたくなる」
「ベージュ色のスカートの女性を見ると、なぜか悲しくなる」
なぜそうなるのか、理由が自分でも分からない。そんなことがあります。
ある心理学者は、「人は様々なことを心の奥底に抑圧し、それが原因でいろんなメンタルの病気を引き起こす。問題を解決するには、心に抑圧したものを見つめなおす作業が必要だ」ということを主張しました。
ここから、心への探求が始まり、カウンセリングなどの分野が生まれましたが、心というのは数式のように、具体的で分かりやすいものではありません。
3+3が10や29になることもあります。曖昧でつかみにくい。
しかし、「なぜ?」という問を見つめていくうち、「そうなのか!」と答えが見つかるときもあります。
その腑に落ちたときの感覚、なぜなのかを納得できた感覚、それが問題の解決につながることがあり、だからこそ、心の問題は一筋縄ではいかないものなのかもしれません。