自分が正しいと信じる道を、ただまっすぐ進んでいく。
小倉昌男著『小倉昌男の人生と経営』(PHP)の読書感想です。
この本について
『クロネコヤマトの宅急便』の生みの親として知られる小倉昌男元会長の人生哲学を一般向けに分かりやすく紹介している本。
世の中で働くこと、人生を生きること、人としてのあり方。肝に銘じたい話が満載です。
以下、本書の読書メモです。
悔いのない人生を生きる(P17)
人生は光陰矢の如し。時間は思いのほか早く過ぎていき、モタモタしていたら、あっという間に寿命が尽きてしまう。
この限りある人生をムダにしないために大切なのは、人生で後悔をしないこと。
人生で後悔しないために大切なのは、自分のことだけでなく、他人の立場になって物事を考えることが大切。
なぜなら、生きていくことは人と人との関わりのなかで生きていくこと。人から後ろ指を指されるような生き方をしていてはいけない。
人はいつまでも未完成(P21)
人生順調で物事がうまくいっても。成功して世の中で満足できる結果を出すことができても。常に自分は未完成であり、発展途上であると考えること。
自分は完璧だと思ったらダメ。常に「自分はまだまだです」という気持ちを忘れないこと。
社会人としての素質(P28)
仕事をする上で大切なのは、人柄の良さ。
仕事とは人と人との関わりであり、どんな仕事にしろ結局は、常に人がそこにいる。つまり仕事とは人付き合いであり、だからこそ大切なのは人柄。
信頼されること。頼られること。安心できること。そんな人柄こそ、仕事をする上で最強の武器となる。
良心を忘れない(P33)
人生ときに、欲や虚栄心によって道を踏み外さんとするときもあるが、どんなときでも絶対に、人としての良心は捨ててはいけない。
いくらお金を儲けても、この世で良い思いができたとしても、そんなものは死んでしまったら何の意味もない。
ずるいことをして、良心がとがめる生き方をしていれば、つねに心にモヤモヤがつきまとい、何を手に入れても満足できないし、心は常に安心できない。
だからこそ自分の心に恥じない生き方をし、正々堂々まっすぐに生きる。そうすれば、本当の意味で心の平安を見つけることができる。
言い訳はしない(P39)
誠意がある説明と言い訳の違いは、自分の非を心から認めているかどうか。
自分は悪いと思っていないのに、形だけ反省を示しても、そこに誠意はない。そのずるさは相手に伝わる。
だから失敗して先方に迷惑をかけたら素直に説明し、謝罪する。それこそが本当の誠意ある対応というもの。
他社の苦情を参考にする(P57)
お客のクレームというのは不満。
不満というの共通点があり、この意味で同業他社に寄せられたクレームは、自社にも参考になる話が満載。
不満を解決すれば、それは大きなプラスとなる。文句を言ってくる人をただ目障りな存在として扱わず、必要な気づきを得ることが大切。
会社が大きくなるとダメになっていく理由(P60)
会社の増大化にともない、会社がダメになっていく理由が経営陣と現場の乖離。
会社がうまくいくためには、会社全体を統括する本部と、現場第一線で活躍する社員たちとの連携が必要不可欠。
ところが、会社が大きくなると、現場の声がないがしろにされ、経営陣は現場の状況を知らず、自分たちの机上の空論を現場に押し付けるようになる。
そのため、現実に則さない対応になり、会社はダメになっていく。
この意味で、会社の規模に関わらず常に大切なのは現場第一主義。経営陣が現場を軽視するようになった会社は、終わる。
マニュアル人間を作らない(P90)
言われたことを言われたとおりにしかできない人を、マニュアル人間と呼ぶ。
言われたことをできない人よりはマシだが、マニュアル人間はイレギュラーな出来事に対応するための柔軟性が欠けている。
世の中は変化球の連続であり、マニュアルどおりにやっていては、うまくいかないことが多い。
良いサービスを提供せんとするのであれば、育てるべきはマニュアル人間ではない。その場その場で物事を判断できる、柔軟な人材を育てることが大切。
会社から必要とされる人になる(P130)
会社的には、「ぜひいっしょに働いて欲しい人」と、「会社にいると困る人」がいる。
当然目指すのは前者であり、そのために大切なのは、高度な専門知識を持っている人材になること。
この仕事はこの人しかできない。この人は素晴らしい技術や知識をもとに、素晴らしい仕事をしてくれる。
そういう人材になれば、会社に必要とされ、食うに困らない人生を送ることができる。
リーダーに必要なもの(P161)
リーダーとして最も必要なのは、部下から「この人のために頑張ろう!」という気持ちにさせる人間力。
いくら、理屈や報酬で人を動かそうとしたところで、自発的に動く人間の力にはかなわない。
だからこそ、人を自然にやる気にさせられる影響力。「この人だから応援したい」「頑張りたい」と部下から思ってもらえる人間力。
それこそがまさに、リーダーとして最も必要な能力。
感想など
ひとたびページをめくれば、そこには心に直球で飛び込んでくる言葉が満載の本。
『クロネコヤマトの宅急便』の生みの親ということで、そのビジネス的な発想や人生観、仕事観を知りたいと思い本書を読みましたが、「この言葉は肝に命じたい!」という言葉が満載。
世の中を変えるような大きな仕事をした人の言葉というのは、本当に大きな重みがある、ということを実感しています。
それと最も印象的だったのが、「自分が正しいと思ったことは、どんなに妨害されたとしても、決して志を曲げてはいけない」ということ。
本書では、『クロネコヤマトの宅急便』の事業を展開していくにあたって、そのサービスによって既得権が脅かされる人たちによって様々な妨害を受けた話が語られています。
しかし、自分がやろうとしていることは間違いではない。
多くの人達にとってプラスになるという信念があったからこそ、悪い人たちの妨害にも負けず、信じる道を突き進む。
そして正々堂々、自らが主張すべきことを主張し、脅しや嫌がらせに屈服しない。
そんな小倉会長の強い信念があったからこそ、クロネコヤマトの宅配便が今があることが分かります。
つまりは自分のことだけを考えず、自分がやろうとしていることが多くの人の役に立つ。世の中をより便利にするために寄与する。
それが仕事の本質であって、それは何もお金を儲けることだけではない。この本を読めば、そんな「志」について、深く考えさせられます。