『「学力」の経済学』の読書感想 – データが示す教育効果の驚きの真実!

「学力」の経済学

データが示す正しい教育の在り方とは?

中室牧子著『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の読書感想です。

この本について

教育経済学という視点で教育問題を考える本。

教育経済学とは

子どもの学力などの教育問題をエビデンス(科学的、客観的根拠)に基づき理解しようとする学問のこと。

教育という個人の主観が入り込みがちなものに数値を根拠にした科学的アプローチを導入。

子どもの教育に本当に効果がある方法は何なのか、何が正しくて間違っているのか、新しい視点が見つかる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

はじめに(P7)

人は騙せる。でもデータが示す数値は騙せない。数字という真実が、本当のところを教えてくれる。そこに意義がある。

教育について(P14)

教育の話となると、全くの素人でも自分の意見を語りたがる一億層評論家状態。

どんな教育が子どもにとっていいのか、それを特定の原因に帰すことは難しく、子どもの教育は、いろんな要素が絡む。

とかく教育問題は個人の主観や体験が入り込みがちで、「我が子を東大へ入れた人の子育て法」を真似たからといって、それはあくまで一つの事象。我が子の役に立つとは限らない。

他人の子育ての成功体験はあくまで他人の話。

たった一人の子育て成功体験を信頼するより、様々な個人の体験の中から見出した規則性の方が、よほど信頼性が高い

その規則性を見出すのが教育経済学であり、そこに教育経済学の価値がある。

子どもにかける言葉(P29)

子どもを勉強させるときは、「今ちゃんと勉強しておくことがあなたのためになる」ということを伝える。子どもの頃きちんと勉強することは、将来の収入を高めることになる。

子どもを褒美で釣るときのコツ(P36)

子どもを勉強させたくてご褒美で釣るときは、

「本を読んだら○○をあげる」「宿題をしたら△△をあげる」というように、何をしたらご褒美がもらえるのかを、ハッキリさせる。

「テストでXX点とったら○○をあげる」のようなやり方はダメ。そのやり方をするなら、どうすればテストの点数が上がるのか、具体的な方法を子どもに教えて、指導すること。

褒めすぎ注意(P48)

子どもをほめる教育が流行っているが、結果が伴っていない子どもをやたらほめるのはダメ。プライドや自尊心だけ高く実力の伴わないナルシスト系の子どもになってしまう。

子どもをほめる場合は、頑張ったこと、具体的にしたことをなどをほめ、子どものもともとの能力ではなく、努力や行動をほめること。

「勉強しなさい」は効果なし(P60)

父母ともに親が子どもに「勉強しなさい」と口うるさく言うのは効果なし。

それより、子どもの勉強を一緒に見たり、勉強する時間を守らせたりすることなど、親自身が時間を犠牲にして子どもに手をかけるやり方が一番効果が高い

また、子どもの勉強については、子どもと同性の親が指導をするのが効果が高い。

男の子だったら父親が、女の子だった母親が、子どもの勉強を見てあげるのが良い。特に、苦手科目の勉強を見てあげるときは、なおさら同性の親が良い。

結局、子育ては手間がかかるもの。手を抜こうとすれば、子どももそれを見抜く。親が手間と労力をかけるのが一番効果が高い。

軽視すべからず!周囲の影響の大きさ(P65)

学力の高い子どもが多い環境では、元から勉強を頑張れる子はそれに影響され、学力が高くなる傾向がある(学力のない子どもは逆にやる気をなくす)。

子どもにとって周囲の環境は重要。

周囲に問題児がいると、その負の影響がクラス全体に及び、学級崩壊、いじめ、子どもの教育に悪い様々な悪影響が生じる。

特に子どもに影響力が大きいのは、周囲の友だちの「行動」。

暴力、飲酒、ドラッグ、カンニングなどをする悪い子どもが周りにいれば、それに染まってしまう危険も高い。

「悪友は貧乏神」という言葉は正しい。我が子の教育に相応しくない環境であれば、即刻その場所から離すことが大切。

備考

この本では、環境の大切さが分かる、アメリカとイギリスの事例が紹介されています(P71)。

アメリカの事例では、経済的に貧しい家族が貧困層の地域から富裕層の地域へ引っ越し。すると、引っ越しした家族の子どもは、犯罪で逮捕される率が下がり、負の影響から逃れられたという話が。

一方、イギリスでは、貧困層が暮らす公営住宅の一部が壊され、引っ越しを強制された家族が。引っ越しした家族の子どもは、暮らす地域が変わることで、子どもが落ち着きだし、学校へ馴染んだり、問題行動が減少したそうです。

周囲の環境が悪ければ、子どものその負の影響を受け、犯罪に手を染めてしまう確率が高くなってしまうという話ですが、この例を読むと、いかに環境が子どもの成長に大きな影響があるか、恐ろしくなってしまいます。

住む場所を変えれば会う人や付き合う人が変わり、生活習慣も変わる。結果、人生も変わる。となると、住環境、子育て環境が悪ければ、兎にも角にも、まず環境を変えることが第一なのかもしれません。

しつけを受けた子どもの将来(P95)

子どもの頃、親からしつけや基本的なモラル(嘘をつかない、人に親切にする、ルールを守る、勉強する)を教わった子どもは、そうでない子どもよりも年収が86万円高くなる傾向が。

親が子どもにしつけすることで、子どもの自制心が育ち、勤勉性も高くなる。結果、結果的に年収もアップする。

親からしつけを受けなかった子どもは、自制心が育たず、酒やタバコ、ギャンブル、借金などへ走ってしまう傾向が見られる。

学力テストの結果は信頼性が低い?(P125)

学力テストの結果を学校ごとに報告すべきという考え方があるが、正しく学校の学力を公正に知るためには、その学校の地域の生活保護率、就学援助率、学習塾の繁盛率など、複合的なデータを取る必要がある。テストの結果だけで学校の評価を決めるのは不公平。

備考

逆に言うと、塾が少なく、生活保護率や就学援助率の高い地域(学区)は、子どもの子育てにとって良い環境ではないのかも。

平等教育から「イヤなやつ」が生まれる理由(P133)

平等主義的な教育の根本は、生まれながら皆同じ能力を持っていると考え、努力次第で皆良い点数が取れると考える。

しかし、それは現実を無視した絵空事の考えで、実際問題、子どもの学力は家庭環境、遺伝子、子ども自身がどうしようもできない様々な要素によって、生まれながらに差がある

平等教育はこの現実を無視しているため、「子どもができないのは本人が努力していないから、怠けているから」と考えてしまう。

この間違った平等教育が原因で、不利な環境におかれている他人を思いやることのできない「イヤなやつ」を生んでいる。

感想など

「テストで良い点を取ったらご褒美をあげる」VS「本を一冊読んだらご褒美をあげる」

など、教育の身近で分かりやすい例が多く、即日読了。

学力と年収の話、子どもへの声掛けなど興味深い話はいろいろありましたが、個人的にこの本で特に印象に残ったのは環境の影響力の話。

「環境を変えることで子ども自身が変わる、悪影響の連鎖から抜け出せる」という話がありましたが、このへんは特に興味深かったです。

大人でも環境から受ける影響は計り知れませんが、子どもならその影響は更に大きく致命的。

住む家、周囲の友人、学校、それらを環境と考えてその影響力を軽視せず、場合によっては孟母三遷、悪影響があるなら思い切って環境を変える必要があるのかも。

花は、咲き場所を間違えると、いつまでもつぼみのまま。花を咲かすことはできません。

環境が悪いところで暮らし続けると、その悪影響はプライスレス。よく育とうとするのであれば、第一に環境を意識することが大切なのかもしれません。

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