現役クリエイティブディレクターが教えるセンスの見つけ方・磨き方。
水野学著『センスは知識から始まる』(朝日出版社)の読書感想です。
この本について
センスとは何なのか、どうやったら磨くことができるのかを、現役前線で活躍するクリエイティブディレクターの著者が語っている本。
仕事でもプライベートでも、人生どんなときでも、センスがある人はあらゆる面で自分を他人と差別化することができます。
ではどうやってセンスのある人になればいいのか?この本を読めば、「センスのある人」になる方法が分かります。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P7)
センスの良さは特別な誰かだけが持っている才能ではない。
センスは誰でも、どんなときでも、自らの創意工夫で身につけ、上昇させていくことができる「能力」。
センスとは(P18)
センス=数値化出来ない物事の良し悪しを判断し、それを最適化する能力のこと。
例)
おしゃれ→服装の良し悪しを自分で判断でき、自分の個性に合うように最適化できる。
センスアップのためにまず必要なこと(P20)
すべての基本は普通から。普通が分かっていなければ、何が良くて悪いのか、その判断基準を持つことができない。
普通とは違うセンスの良いものを作りたいのであれば、まずは普通のものをきちんと作れるようになること。
時代は揺れ動く(P45)
時代が最先端のものを求めれば求めるほど、その流れの反動が必ずやって来る。すなわち、新生の気風のあとには必ず懐古の流れがやって来る。
技術や便利さばかり追い求められてきた時代の流れはやがて、ノスタルジックなもの、美しいものが求められる流れに変わっていく。
時代は絶えず揺れ動く。その流れの動きをよくつかむこと。
クリエイティブディレクターとは(P60)
これからの時代に求められるのは、スティーブ・ジョブズのようなクリエイティブディレクター。
すなわち、自分が本当に欲しいもの、みんなが欲しがっているものを知って、それを創り出すことができる人。
それこそがクリエイティブディレクターであり、今の時代に求められる人材。
クリエイティブディレクターの条件としては、
1・センス力があり、自分は何が好きで、どんなものを作りたいのかを、自分自身の頭で考えることができる。
2・自分の仕事に責任を取ることができる。
この2つの条件は必須。
もっと面白いものを作りたい。人をワクワクさせたい。そして、自分の仕事にはきちんと責任を持つ。
この姿勢こそが、核心的な商品を世の中に提供することができる。
経営者=会社の鏡である理由(P63)
会社は一言で言って、経営者のセンスのそのもの。経営者のセンスがない会社は何から何まで統一性がなく、いろんな面で醜い。
そしてこれからの時代、経営者のセンスそのものが、企業価値につながっていく。つまり、センスや美意識に敏感な経営者こそ、会社の価値を高めていくことができる。
センスをどうやって身につければいいか(P75)
センスは端的に言って知識の集積。たくさん知識を知っていれば、その知識を組み合わせて、新しい何かを創ることができる。
どの業界でも、知識が豊富な人はセンスがあり、仕事も素晴らしい。この意味で、センスを磨くなら、まずたくさん知識を身につけることが大切。
効率的に知識を身につける方法(P102)
センスは知識を増やすことで伸びる。知識を効果的に身につけていくのは、次の3つの方法が効率的。
1・王道から始める
洋楽ならビートルズ、ジーンズならリーバイスといったように、その業界の定番をまず最初に紐解いていく。
定番とはその後のフォロワーたちに多大な影響を与えた王道であり、王道は王道であるがゆえ、学ぶべきことも多い。
すでに最適化されたものなので、良し悪しを判断するための基準を知ることができる。
2・今流行しているものを知る
王道を押さえたら次は流行。
流行は一過性のものであるが、王道を押さえて定番を理解し、流行を知れば、一気に知識の幅を広げることができる。
3・共通項やルールを探る
知識を効果的に身につけるために大切なのは考え方。
自分の頭で考え、分析するクセをつけること。そのための方法として、物事の共通項や一定のルールを探るのはとても効果的。
例えば、今の服の流行は他の業界と何らかの共通項はないか。今流れに乗っている人たちには何か一定のルールはないか。
このような視点の持ちどころが、知識を広げ、センスを高めてくれる。
おすすめは書店通い(P164)
本屋は知識の倉庫。センスの根本は知識であり、本屋通いをすることは、それ自体がセンス力アップのトレーニングになる。
定期的に本屋へ通い、気になる本を手にとってみる。いろんな棚をめぐって、新しい世界を探ってみる。
このような地道な習慣が、実はとても大切なこと。
感想など
本屋巡り中にプラプラしているときに発見した本。
「センス」というタイトルに惹かれて読んでみましたが、確かにセンス、大切だなぁ、と。
今の時代、あまりにもたくさんのものが溢れている今の時代、技術とか品質も大事かもしれませんが、それ以上に大切なのが、感覚的なものだったりします。
なんとなく面白い。ワクワクする。そう、それはまさに「数値化でない」ものであって、まさにセンス。
例えばゲーム業界。
致命的なバグがなく、一応はきちんと動く。しかしそこに全く開発者のセンスが感じられず、それだけならまだしも熱意もやる気も感じられない。
志のないクリエイターが作っているゲームは腐敗臭が漂い、それをユーザーは敏感に感じとっています。
そういう商品はAmazonとかで発売一ヶ月を待たずに半額になって、「ク○ゲー」の烙印を押されて叩かれています。
このような傾向はどんどん強まっており、つまるところ、これが今の時代の流れではないか、という気がしています。
逆にゲームとして欠点があっても、デザインやシステムなど、開発者のセンスが感じられるゲームは熱狂的な支持を集めている。
具体的にはフロム・ソフトウェアの『ダークソウル』シリーズがそうですが、あれは本当に開発者の方々のセンスがあらゆるところで感じられて、本当にワクワクします。
そう、それは「デザイン○○点!」など、決して点数をつけられるものではありません。しかしそのセンスのスゴさは確かにそこにある。
だからこそ、本書が主張しているとおり、これからはセンスの時代。
物事の良し悪しを判断し、センスの良い仕事をする。そういったアナログ的な感覚が求められているのかもしれません。
ということで、とても分かりやすく、かつためになった話が満載の本でした。
「センスが大事なのは同意。ではどうやってセンスを伸ばせばいいの?」
そう思ったら本書の出番。一読をおすすめします。