転職を考えるなら遅くとも35歳まで。
黒田真行著『40歳からの「転職格差」 まだ間に合う人、もう手遅れな人』(PHPビジネス新書)の読書感想です。
この本について
40歳以降の転職を現実的な視点で考える本。
転職で成功する人はどんな人なのか。逆に、転職で失敗してしまう人はどんな人なのか。
具体的な事例をもとに、転職して後悔しないためのポイントを理解することができます。
以下、本書の読書感想です。
はじめに(P10)
現実的に、日本の社会は自由自在に転職ができる社会ではない。
年齢的な制限が大きく、特に実質、35歳を超えてからの転職には大きな壁が存在する。36歳になったとたん、選択できる求人は激減する。
もし、35歳を超えて転職を考えるなら、待遇が下がることは想定しておく。少なくとも、今よりも高待遇を求めての転職をしてはいけない。
生き残る人材になる(P31)
現代の日本は労働人口不足であり、今後この傾向は続いていく。
しかし、人手不足=仕事を選べるという話ではない。企業はAIの導入や業態の変化など、時代に合わせて生き残りをかけていく。
そのため、不要な人材はどんどん減らしていく。
この状況のなかで生き残っていくために大切なのはコア人材になること。つまり、労働市場において価値を持つ人間になることが大切。
それができないなら、賃金が安くいつでもクビになる可能性がある非正規労働に甘んじるほかない。
仕事は探せば見つかる(P35)
現実的には、仕事は「エリア格差」「業種格差」「職種格差」の3つがある。
つまり、場所や業種、職種を選びさえしなければ、いつでも仕事を見つけることができる。
どうしても転職して仕事を見つけなければいけない場合、今までのキャリアや希望条件等は置いておいて、柔軟に仕事を探す。
場合によっては、新天地で新しい仕事を始めるくらいの気持ちを持つ。
転職回数について(P67)
世の中では、転職回数が多い=すぐ辞める可能性がある地雷求人者とみなす傾向が強い。
このため、転職回数が増えれば増えるほど、良い仕事を手に入れられるチャンスが減っていく。
この意味で、転職回数は少ないにこしたことはない。
転職を考えたとき(P78)
「もう、こんな会社は辞めてやる!」と思ったときにまずすべきなのは、今の会社を辞める前に、新しい転職先をきちんと見つけておくこと。
会社を辞めてから転職するのと、すでに転職先を見つけてから会社を辞めるのとは、全然心の余裕が違うから。
転職のチャンスは5歳ごとに減っていく(P84)
転職を考えるなら若いほうが有利。
日本の転職市場では、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳というように、5歳区切りで求人数が半減していく。
今の仕事を続ける気がないならば、年齢の区切りとなる前に、早めに心を決めて、転職活動をすることが大切。
企業の視点から(P85)
新しい人材を探している企業的に気になっていることは、「この人を雇ったら、うちの会社で何をしてくれるのか、何ができる人なのか」ということ。
つまり、採用面接にあたっては、自分のアピールをするだけでなく、「自分を雇ってくれたら御社にこんな貢献をします」という態度を示すこと。
雇って損しない人材であることを主張することが大切。ただ、自分の実績を云々するだけでは、印象がよろしくない。
「年収○○○○万円」を要求するにしても、それは同じ。
「私は御社に採用されたらこんな実績を出します(ギブ)、だからこれだけの年収をお願いします(テイク)」と結果を出すことを約束すること。
Uターン転職の罠(P109)
Uターン転職の難しさは、仕事を変えるだけでなく、環境そのものが変わること。
たとえば、都心と地方では、会社の文化、地域の文化、人間関係の事情が違う。
そのため、同業種に転職したとしても、地方独特の人間関係が上手くいかなくて、Uターン転職を後悔する人も多い。
とくに、その地域とのつながりが強い仕事(○○組合系の仕事)は、その傾向が顕著。
地域のコミュニティとガチガチにつながるので、そういう人間関係が苦手な人は、やめておいた方がいい。
これからのキャリアの築き方(P205)
一昔前は、生涯一つの仕事に従事して、それだけを極めていけばよかった。
しかし、今時代の変化は激しすぎる。そのため、一つの仕事だけで生きていくのは難しい時代になった。
だからこそ大切なのがキャリアの多毛作化。二毛作、三毛作で、複数のキャリアを作っていく。
つまり、「このキャリアがダメになってもこのキャリアがある」という状態を作っておくことが大切。
感想など
ミドル世代の転職について、現実的な視点で選択を検討できる本。
具体的に40歳以降の転職で成功するためにはどうすればいいのか。逆に失敗する人はどんなパターンで失敗しているのか。
転職について、現実的かつ実用的な話が満載です。
ところで、本書ではUターン転職の話が出てくるのですが、個人的には特に印象に残っています。
というのは、実際身近で、そのような話を聞いているからです。
「転職を考えるなら職種とかそういうことだけでなく、地域のコミュニティの存在は無視できない」という話(P109~)がありますが、これは本当に納得。
今、都会暮らしが嫌になってUターンで地元に戻ったものの、結局都会に戻ってくる人が多いという話ですが、親が田舎出身の自分としては強く納得。
やはり地方で暮らしていく上では、コミュニティの存在が無視できません。
田舎では人間関係がかなり重要で、常に濃いコミュニティのなか、生きていかなければいけません。
その分、コネとか、旧態依然な仕組みが21世紀の現在も幅をきかせていることは否定できな事実です。
例えば、地方の役人。
なんだかんだ言って、田舎の役所とか教員とかは縁故採用や学閥優先的な傾向があって、つながりがモノを言います。
しかし、それで公務員になったところで、ずっとその地域の濃い人間関係のなかで生きていかなければいけません。
普段の冠婚葬祭や地元の消防団とか、そういう濃い関係が受けいられる人ならともかく、そうでない限りはハッキリ言って苦痛。
この意味で仕事は条件的に損とか得とかではなく、コミュニティという視点を忘れてはいけないものだと思います。
やっぱり、土地柄というのはあります。どうしても向いてない場所はあります。この意味で、Uターン転職の話は非常に納得できます。
ということで、都会から地方へのUターン転職をお考えの方はぜひ、土地柄やコミュニティという視点を忘れずに、転職を検討することをおすすめします。