彼こそが明治維新の真のヒーロー。『日本史上最高の英雄 大久保利通』を読む

日本史上最高の英雄 大久保利通

激動の明治維新。日本を変えた3人の男たち。西郷隆盛、木戸孝允、そして大久保利通。

彼らのなかでも権力を集中させた男として印象が良くない大久保利通がいかに日本国家が建設されていく上で重要な役割を果たしたのか。

そして為政者として信念を持って権力を振るったのか。

「冷徹な権力者」大久保利通の印象が驚くほど変わるのが本書。倉山満著『日本史上最高の英雄 大久保利通』(徳間書店)です。

この本について

本書では幕末、大久保利通が歴史の表舞台に登場してから紀尾井坂の変で暗殺されるまでの人生を丹念かつ大胆に検証。

彼がいかに世の中のイメージと異なる政治家であったのかを示している本です。

明示維新の三傑において、西郷隆盛は人から好かれる英雄であったけれど、大久保は権力を独占した男という、あまりポジティブなイメージは持たれていない印象があります。

確かに大久保は権力を握ったものの、それは私腹を肥やすためにあらず。明治の日本国家が一等国として世界に認められるため。

そんな大久保利通の偉大さに感銘を受ける内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

井伊直弼という男(P48)

井伊直弼=安政の大獄の「独裁者」的なイメージが強いが、井伊は時代に翻弄されたというよりは、時代から求められた役割を演じた男。

井伊は本来尊皇派であり、孝明天皇の意思を尊重したかったが、時代がそれを許さなかった。

結果的に井伊が開国し、安静の大獄が起こることによって倒幕。そして維新の道のりが誕生した。

錦の御旗(P161)

明治維新においては、薩長が徳川慶喜を圧倒したイメージがあるが、実際は終始、慶喜が優勢で、大久保らは常に劣勢を強いれられていた。

鳥羽伏見の戦いにおいても有利は圧倒的に徳川方だったが、大久保利通は錦の御旗の力を知っており、それを手に入れることに全力を尽くした。

結果、錦の御旗を入手した薩長側は逆転。歴史が変わることになった。

西郷隆盛について(P175)

西郷は、自分の役割が倒幕を果たしたことで終了したことを知っていた。そして本人は役目を果たし、隠棲の余生を過ごしたいと思っていた。

しかし周囲がそれを許さず、結果的に西南戦争の首領に祭り上げられ、ここでもまた、武士の時代の終焉という、歴史的役割を果たす。

廃藩置県成功の秘訣(P181)

明治新政府が国家として成功するために絶対に必要だったのが廃藩置県。

島津久光などは、自分がトップになるという野心があったが、それでは国家としてダメだった。

そこで大久保らは真に明治政府を国家にするために廃藩置県を絶対に成功させる必要があった。

そのために、藩を廃止する見返りとして藩主らには必要な地位を提供。おまけに借金を帳消しするというメリットを提示。

反乱は起こらず、速やかに廃藩置県を成功させることができた。

長州閥の不正と江藤新平の台頭(P194)

大久保利通ら明治政府首脳が海外見聞へでかけていたとき、日本では新たな権力闘争が始まった。

薩長に遅れをとるまいと、江藤新平などの勢力が権力争いに参加。特に山県有朋や井上馨ら長州閥の不正を追求。

大久保や西郷は山県や井上を守ったが、江藤らの勢いはまし、西郷を取り込もうと画策。これがやがて、大久保と西郷の別れにつながっていく。

これが理由で大久保は江藤新平を「絶対に許さない相手」と認識。佐賀の乱にて復讐を果たす。

大久保の死後(P233)

大久保が紀尾井坂の変で暗殺されたあと、大久保のビジョンを継いだ男が伊藤博文。

それまで、能力的にパッとしない男であったが「地位が人を作る」の言葉どおり、大久保の意思を継ぎ、殖産興業を推進。

明治政府を一等国へと導いた。

感想など

読後は「独裁者」大久保利通の印象が180度変わる本。

日本においては権力が集中している男が悪というか、出る杭は打たれるで、悪いイメージで描かれるのがお約束ですが、大久保利通もまさにそう。

自分も学校の先生から「大久保利通が自分に権力を集中させ独裁した男。親友の西郷も殺した男」と教えられてきました。

そのため正直、この本を読むまでは、冷酷な権力者のイメージがありました。

しかし国が変わるとき。そして強い国に生まれていくとき。そこには強い思いがあって、その思いを実現するためには、大久保利通のような男が必要であること。

自分が憎まれ役になっても、するべきことをしなければいけない。そんな、強い意思が伝わってきます。

そして実際に驚いたのは文字通り、大久保利通が清廉で、自身の損得のために「利害調整」をするような男ではなかったという事実。

大久保の死後、残された財産があまりに少なかったという話には本当に、明治の偉大な政治家の生き様が証明されています。

その点、山県有朋や井上馨は「人間的」ですが、政治家は結果。政治家には政治家の立場があるのだと思います。

いずれにせよ、本書の読後は、「日本史上最高の英雄」という言葉も納得できます。

大久保利通が鉄の意志を持って明治政府を作った。だからこそ近代日本が誕生した。それは紛れもない事実なのですから。

「大久保利通?明治の独裁者でしょ?」

といイメージをお持ちの方は、ぜひ本書の一読をおすすめします。

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