その人生、37年の足跡をたどる。『ゴッホのあしあと』を読む

ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯 (幻冬舎新書)

不世出の天才画家の生涯を読み解く。

原田マハ著『ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯』(幻冬舎新書)の読書感想です。

この本について

生涯で1枚しか絵が売れず、悲劇的な最期を遂げたゴッホの生涯を、作家である著者がたどる本。

ゴッホの歩んだ道が分かるだけでなく、ゴッホが伝えようとしたこと、大切にしてきたこと、まさにその人生そのものをたどる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

ゴッホは狂気の画家なのか(P15)

日本では、ゴッホ=自分の耳を切り落とした狂気の作家という、イメージで語られることが多い。

ところが、実際後のゴッホの人生やその作品を見ると、情熱的なだけでなく誠実で繊細な人柄が見えてくる。

この意味で、短絡的にゴッホを「狂気」という言葉で理解しようとすることは、適切とは言えない。

ゴッホと日本(P19)

ゴッホが日本好きになったのは当時の浮世絵などの日本美術。

当時ジャポニズムで日本の文化が西洋に流行。その結果、ゴッホをはじめ、セザンヌなどの画家に、日本美術のDNAが伝播した。

ゴッホとパリ(P36)

画家としてのゴッホの才能を引き出す環境となったのが当時のパリ。

ゴッホが画家として成功するために誠実の努力を続け、才能を開花させるための土壌を作る。その環境となったのがパリ。そして日本美術だった。

この2つの影響によってゴッホは、1886年以降、様々な作品を生み出す。

テオの苦悩(P66)

ゴッホを語る上で絶対に欠けてはいけないのが弟のテオ。

テオは画商として、当時どういう絵が売れるのかが分かっていた。そして、ゴッホの絵が売れないことが分かっていた。

しかし、ゴッホからは自分の絵を売って欲しいと頼まれ、葛藤していた。

「こういう絵を書けば売れる」ということをゴッホに言うこともできたが、それを言ってしまえば、ゴッホの画家として表現したいものを奪ってしまう。

テオにはそのことが分かっていた。

本当のゴッホ像(P127)

ゴッホ=狂人のイメージが強く、その真の人物像は世間の評価とはかけ離れている。

絵を見ると、実際のゴッホは繊細であり理知的であり、そして努力家である。実際、絵でなく、ラテン語など、語学の能力に秀でていた。

感想など

ゴッホの手紙』を読んで、あらためてゴッホの人生を知りたいと思い読んだ本。

多くの人がイメージとして持っているゴッホ=狂人像とはかけ離れた、まっすぐで繊細な一人の男。淡々と絵の道を求道する殉教者のような男。

本書を読めば、そんなゴッホのイメージが浮かび上がります。

それにしても、画家として10年。売れた絵は1枚のみ。そして悲劇的な最期を迎え、その後世界ではゴッホの絵が高く評価されている。

この意味でゴッホは現世の幸福を捨てて永遠の芸術家になったわけですが、だからこそ改めて、凡人の自分としてはどうしても考えてしまいます。

芸術家の人生は何なのか。本人は幸せだったのか、と。

だからゴッホの絵を見るときは、絵の美しさやそういうことではなくて、その背景にある独特のやるせなさ、「重さ」を感じてしまうのかもしれません。

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