濱口裕介、横島公司著『シリーズ藩物語 松前藩』(現代書館)の読書感想です。
この本について
江戸時代、日本最北かつ蝦夷地唯一の藩、松前藩の歴史について詳しく解説している本。
そもそも松前藩の藩祖はどのような人だったのか。そして、どのような経緯で蝦夷地に根付き、そして、松前藩が誕生したのか。
それから、江戸300年をどのように生き抜いていったのか。
大まかな流れを押さえた上で、藩主や家臣、政治改革。松前藩が廃藩置県を迎えるまでどのような歴史をたどったか、詳しく理解することができる内容になっています。
感想など
松前城に観光に行ったのをきっかけに、もっと深く松前藩について知ってみたいと読んでみた本。
正直なところ、松前藩については、
1・蝦夷地の大名
2・アイヌを抑圧して何度も反乱を起こされた大名
というようなイメージしかなく、一体どういう経緯で松前藩が誕生したのか。そして、実際どのような歴史をたどってきたのか。
全く知識がありませんでした。
本書では、松前家の始祖である武田信広の歴史から始まり、やがて松前藩を創設する慶広の下剋上、そして藩ができたあとの実際の藩政。アイヌとの交易。
一通り、知りたいことが分かって、とても勉強になりました。
個人的に印象に残ったのは、松前藩が江戸時代に、何度か転封になっていること。
それは国防の関係で、松前藩では外国の蝦夷進出に対処ができないという幕府の判断で、東北伊達家の地に転封になったことがあるとは、全く知りませんでした。
そして、特に松前藩の人物として印象に残ったのが幕末期の改革藩主、松前崇広。
部屋住みという、恵まれない立場として冷や飯を食うも藩主の座が転がり込んできて、そして徳川江戸幕府において老中に抜擢。
外様大名としては例外的に出世、佐幕派大名として大いに活躍するものの、兵庫港開港における一件で失脚。
その後病死してしまう悲劇の人ですが、崇広の死後、箱館戦争で松前藩がたどる歴史を知ると、より一層、時代の激しさをうかがい知ることができます。
ということで、日本最北。そして唯一の蝦夷地における武家だった松前家がどのような歴史をたどったのか。その独自性はどのようなものだったのか。
個人的な関心を満たすことができた一冊でした。