『信長の野望』はある意味、生まれるべくして生まれた。
『シブサワ・コウ 0から1を創造する力』(PHP研究所)の読書感想です。
この本について
コーエーの創業者であり、現コーエーテクモホールディングス社長のシブサワコウさんの半自伝的なビジネス書。
『信長の野望』が生まれたきっかけや、コーエーのゲーム製作の考え方など、コーエーファンには興味深い話が満載の一冊となっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P6)
何かを為さんとするならば、空よりも高い、壮大な野望を持つこと。野望を持つからこそ、人はそこを目指すことができるし、成長できる。
「イフ」を体験する(P17)
歴史シミュレーションゲームがヒットした理由は「イフ」を体験できるから。
戦国武将は日本で人気が高いが、彼らの人生になりきり、「自分だったらこうする」を体験できる。
また、両国を経営しマネジメントする楽しみもある。これらが『信長の野望』の人気の秘密であり、ユーザーに支持されている理由。
人生が変わるきっかけ(P43)
人生は縁。一つの縁が人生をガラリと変わってしまう。
『信長の野望』が生まれたきっかけはそもそもシブサワコウさんの妻がパソコンをプレゼントしてくれたことから始まった。
パソコンで仕事のためのプログラムを作る傍ら、趣味でゲームを作り始めた。
その趣味から歴史シュミレーションゲームの先駆けとなる『川中島の合戦』が生まれ、やがては『信長の野望』が生まれていく。
これらのきっかけは全て妻との出会いであり、妻との出会いによって、コーエーが生まれ、現在の成功がある。
機会があれば結婚はしとけ(P52)
結婚するかしないかは人の自由だが、もし結婚できるチャンスがあれば、絶対にしたほうがいい。
結婚することで、一人で生きるのとは違う喜びや感動、苦楽を味わうことができる。結婚するかしないかで、人生は別物になる。
苦手なことから逃げてはいけない(P59)
仕事では様々な問題があり、なかには自分が苦手なことにも取り組まなければいけなくなるときがある。
そういうとき、苦手なことから逃げずにきちんと向き合い、正面からぶつかってこそ、人は大きく成長できるし、やりがいを得ることができる。
仕事は「好き」で選ぶ(P76)
どうせ頑張るなら、好きなことで頑張ったほうがいい。
好きなことなら、何があっても頑張ることができるし、好きだからますますのめり込むことができる。のめり込めばいい仕事ができるし、成功できる。
手形商売はしない(P88)
シブサワコウさんの父親の会社が倒産した原因は手形商売にあった。
だから光栄では絶対に手形商売はしないと決めた。当初は波乱があったが、志を貫いたことで、経営が上手くいった。
革新には反対がつきまとう。しかし、自分が「これだ!」と決めた道は、どんなに反対があろうと、志を持って突き進めばいい。
伸びる社員と伸びない社員(P172)
好きで興味があることに没頭できる人はどんどん仕事で成長できる。逆に興味なく仕事に取り組んでいる人は、仕事にのめり込めないので成長もできない。
つまり伸びる社員と伸びない社員の決定的な差は意欲の差。
人の指示がないと動けない人とか、自分から主体的に動けない人は、どこで働こうが成長することができない。
会社を成長させるために(P194)
会社を成長させていくためには、常に新しい顧客を「創造」していくことが必要。
お客がいてからこそ会社は存在できる。新しいお客を「創造」するために、常に新しい商品や価値を生み出して、お客に貢献していくこと。
それができない会社は成長できずに、衰退の一途を辿っていく。
感想など
東京出張中の御茶ノ水三省堂で見つけた本。
個人的にはコーエーの『信長の野望』は「覇王伝」以来のファンで、最新作の「創造」や「戦国立志伝」、新規IPでは『仁王』とか、アホみたいにハマってきました。
(でも『信長の野望』や『三国志』はPKからしか買わない派です、すいませんw)
それで、
「実際コーエーとはどんな成り立ちでできた会社なんだろうか?」
「シブサワコウさんとはどんな経営者なんだろうか?」
と不思議に思って、この本を読んでみました。
すると、若いときは結構な苦労をされて会社を成長させているんですね。
親の会社(繊維産業)の整理して20代で光栄設立→事業が上手くいかず30歳入院、そんなときに出会ったのがパソコン。
奥さんが欲しかったパソコンをプレゼントしてくれて、そこから趣味でゲーム『川中島の合戦』を作成。それがヒットして、光栄はゲームメーカーに転身。
要約するとこういう感じで、もともとはゲームとは全然別の会社だったことに驚きました。それでゲーム業界に転身するきっかけが奥さんからプレゼントされたパソコンだったという。
「奥さんとは慶応の学生時代に出会っていて、早稲田も受けたけど早稲田に落ちて慶応に合格して、もし早稲田に受かっていたら奥さんとの出会いもなかった。そうなると『信長の野望』も生まれなかった。人の縁は不思議だ」
という話がありましたが、確かに人の縁は、運命的なものがあるのかもしれません。だから結婚しろというのは、説得力があります。
あと『仁王』製作までの話(P163~)も面白かったですね。
企画が立ち上がってから実際に発売されるまでかなりの時間を要していますが、その間どんなことがあって、どんな考えでゲームを作っていたのか、いろいろ書かれています。
コーエーのゲームはなんというか、中毒性があって、一度夢中になると時間を忘れてハマってしまうような魅力があります。
私のように『信長の野望』をきっかけに日本史(特に戦国時代)に興味を持った人も多いはず。それくらい、影響力の大きい会社だと思います。
2017年末には『信長の野望』最新作が出るという話も。
ぜひ、歴史シミュレーションゲームの先駆会社として、これからも面白いゲームをお願いしたいと思います。