仕事を辞めた後の現実を考える。『定年後のリアル』を読む

文庫 定年後のリアル (草思社文庫)

働き、そして引退する。しかし、人生はその後も続く。

勢古浩爾著『定年後のリアル』(創始者文庫)の読書感想です。

内容について

引退後はどうやって生きてくか、定年退職した著者が定年後の生き方を考えるエッセイ。

引退後の生活は、「第二の人生で○○を楽しもう!」や「田舎暮らしで幸せ生活」など、マスコミであれこれと言われてるようなことにあらず。

外野の声に惑わされず自分自身で生き方を選択していこう、というのが本書の趣旨で、定年後のリアルを、様々なポイントから、じっくりと考えることができます。

以下、本書の気になった内容です。

引退後の幸せな人生に答えなどない(P6)

世の中、求めさえすれば自分の現実を変える方法や、理想の人生を見つける答えがあると勘違いする人がいるが、そんな魔法はない。

有名人や学者、成功者に答えを求めても、決してあなたが心から納得する答えは教えてくれない。

それは、あなた自身で見つけるほかない。「人に教えてもらおう」という考え方がそもそも間違い

仕事を引退して見失う自分(P24)

会社を辞めて、肩書がなくなったとたん、自分を見失う人が多い。

それまでは、「○○会社の△△さん」というように、所属する場所と肩書があり、周りの人からそのように認識されていたが、定年後は、何の肩書もない一人の引退者になる。

会社にアイディンティティを求めていた人は、大きな喪失感とともに、「自分」を見失い、先が見えなくなってしまう。

仕事を辞めたあなたは、何者でもなく、何の肩書も持たない一人の男になる。まずはその現実を受け入れる必要がある。

自由なんて大したことない(P35)

目標や夢、したいことがあるうちが華。

実現されたときの喜びは一瞬で、やがて、達成したこと、したかったことは大したことでなかったという失望感が待っている。

悲しいかな、喜びや楽しさはすぐに薄れてしまうもの。

思い通りの人生を遅れる人はごく一部だけ(P64)

人生の老後の話に限らず、受験、就職、あらゆる面で、人生は思い通りにいかないことが多い。

希望通りの人生が遅れる人は限られた人だけなのだから、希望通りの人生でなくとも、失望することはない。

むしろ、「思い通りにいかなかった、希望通りにいかなかった人生」があなただけの人生であり、それに価値がある

若さによる美しさは一瞬のもの(P85)

若いことが世の中でもてはやされるが、そんなものは、一瞬で消え去る儚いものに過ぎない。

いくら若く美しい外見を持っていても、行動が醜ければ、外見の美しさなど何の価値もない。若さ、美しさ、そんなものにいつまでもこだわらない。

定年後は人生のレールを自分で敷くとき(P97)

人生の多くは、敷かれたレールに従って歩んできた道。

しかし、定年後は、誰もあなたの道を敷いてはくれない。敷かれていた場所を終点にするか、さらに道を敷くか、自分で決める必要がある。

仕事は人生の暇つぶし(P115)

定年後の時間は長い。何をするにも、時間の長さを実感する。

仕事をしている間は、それで時間を潰せたが、仕事を辞めれば、時間をどう過ごすかが、最大の悩み事になる。

老年の孤独(P143)

退職後は、悩むのが人間関係。

働いていたときのような人間関係はなく、付き合えるのは、本当に大切にしてきた人間関係のみ。

肩書のない、一人の人間として付き合える人がどれくらいいるか。いたとしても、毎日会えるわけではない。

老後は、誰であれ、一人でいること、孤独の時間と向き合う必要がある。

今の世の中、まともな人はうつになる(P163)

教育の崩壊に医療不信、年金不安、労働環境の悪化とお金の不安、頻発する犯罪事件、某隣国の挑発的行動。

今のご時世、まともな神経をしていたら、不安でうつにならないわけがない。今の世の中はうつになるのが自然なほどの狂った世界

世の中はもともと理不尽である(P166)

我々は、この世は美しく、生きるにあたいする素晴らしい場所のように教えられてきた。しかし、世の中の現実は違う。

我々が生きている世界は不運あり理不尽ありの不条理な世界。

その事実を否定せず、世の中にあれこれと期待せず、最低限の視点から生きていくことが大切ではないか。

お金が示すもの(P201)

お金はただモノを交換するだけの道具ではない。

お金は持つ人の人格や品性を表す。汚い人間が汚いお金の稼ぎ方をすれば、使い方も汚くなる。

お金の使い道を見れば、その人がどんな人なのか、どんな品性の持ち主なのかが分かる。

感想など

定年後の生活についてあれこれ云々した本ですが、「定年後のあるべき人生などない、それは自分で見つけるものだ」という本書の冒頭の答えどおり、明確な答えは示されません。

歯に衣着せないストレートな文章が続く辛口な本ですが、答えはもともと自分で見つけるもの。

「定年後のリアルはあなただけの人生の答えしかない、だからあなたが考えて答えを出しなさいよ」という、当たり前のことを当たり前に書いてある、そんな本です。

この本は、会社員などの定年退職者を対象に書かれていた本ですが、現役世代でサラリーマンでない私も、将来はどうするか、あれこれ考えて、楽しく読了できました。

私は30代(2014年現在)。まだまだ引退は程遠く、仕事柄、定年退職を迎えることはないでしょう。

しかし、もとから自分ですべて決めるような暮らしをしているため、老後があったとしても、迷うことはない、それだけが唯一の救いです。

会社やどこかの組織に属し、仕事で忙しい日々を送っていた人にとって、平日の昼間に家にいること、誰からもお声がかからない日々というのは、想像以上に厳しいものがあるかもしれません。

仕事はもう終わり、だったら好きなことをしよう。そう思って「趣味」に励んでも、思った以上に面白くなく、ある種の空虚さを感じることになるでしょう。

いつでも何でもできるということは、自由である反面、物事の面白さを削るところがあって、どんな趣味も、時間という制限があるからこそ、面白くなるところがあります。

今何をしてもいい、何でもできる、というとき、本当に心から満足できること、楽しいと思うことがないと、引退後の長い時間をどう過ごすかは、切実な問題になります。

好きなことをいつまでもできたら、そう思っても、好きなことがつまらなくなってくる。飽きてくる。

これだから人生は難しいのですが、結局、人は生きている限り、どんな道を進むのか、自分で決めていかなければいけないものなのかもしれません。

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