「北の大地」に幻想持つべからず?
佐藤圭樹著『新・北海道移住!』(北海道新聞社)の読書感想です。
この本について
北海道移住希望者に向けた北海道暮らしの現実と、移住のためのヒントが満載の本。
この本では、実際に移り住んだ人の実例も豊富。北海道への移住することの良い面と悪い面、両方を客観的に知ることができる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
なぜ北海道移住なのか(P15)
北海道移住へ憧れる人の多くが、東京や大阪など、いわゆる大都市圏暮らしの人。
ごみごみした都会暮らしにうんざりして、自然豊か、生活環境、子どもの教育環境を求め、北海道に憧れを持つ。
先が不安、だから諦める?(P18)
北海道移住でどうしても気になるのが移住してからのこと。
今の仕事を辞めて北海道へ移住することで、失うものもたくさんあるし、その先、うまくやっていける保証もない。
でも、人生保証がないのは、どんな生き方をしていても同じ。「安定している」と思われている会社に勤めていても、未来はどうなるか、誰にも分からない。
いくら情報を集め、「これなら大丈夫」と思って決めたことでも、往々にして想定外の出来事によって失敗してしまうこともある。
だから、移住を考えるにしろ大切なのは、先のことは読み切れない前提で決断すること。
いろんな不安があるが、それはそういうもので、全ての不安を解決することはできない。結局は、ある程度情報を集めたら、やってみることが大切。
札幌の魅力(P45)
北海道移住は一般的に田舎暮らしがイメージされるが、現実的に多いのは、札幌へ移住するケース。
旭川や釧路、函館などに移住するのは、その土地に知り合いが地縁がある一部の人だけ。
北海道への移住にあたってまず心配になるのは仕事のことだが、北海道は札幌に一極集中しているので、札幌の場合、道内の中でも比較的仕事探しの選択は広い。
おまけに、札幌からは洞爺湖やニセコなど、有名な自然観光地へのアクセスが容易。環境の良さ、仕事の見つけやすさ等、札幌は北海道移住初心者に魅力的な街。
道外出身者は採用されにくい?(P82)
札幌での仕事探しで知っておきたいのが、「道外出身」のデメリット。
会社のなかには、道外出身者を「どこの馬の骨か分からない人」や「仕事よりライフスタイル重視の人」と考え、採用を見送るケースがある。
北海道で仕事を見つけて頑張るなら、事前に転職サイト等で仕事を見つけておくか、面接の際、「ライフスタイル重視の人」と思われないよう、工夫が必要。
住まいを決めるにあたって(P155)
北海道に引っ越すにあたって必要なのが住むための家。
いきなり家を買うのは少数、大半の人は賃貸暮らしから始まる。移住で大切なのは仕事と家だが、優先順位的には仕事>家。
仕事の場所によって、北海道のどこへ住むかが決まってくるので、移住を考えたら、まずは仕事。それから賃貸を探す。
札幌で賃貸を探す場合注意したいのは家賃相場。札幌は住む場所によって家賃相場が大きく変わってくる。特に、地下鉄路線、駅から近いところは人気が高い。
札幌以外では、賃貸の数が少ないので選択肢が少なくなり、おまけに家賃も割高になってしまう傾向にある。
(※ちなみに北海道の賃貸物件探しでは、大家さんが「道外の人がうちのアパートを借りるなら道内の保証人を立ててくれ」という厳しい注文をつけてくるところもあります。地域によっては物件探しが大変になるかも。)
北海道暮らしの豊かさ(P224)
北海道へ移住すれば本州の都会暮らしに比べて収入は減る。
大企業のサラリーマンの札幌転勤などの例外もあるが、多くの場合は北海道移住で収入が下がることを覚悟しておく。
ただ、収入が下がる一方、自然環境の良さ、生活の快適さなど得られる、「お金では手に入れることができない豊かさ」があるのは確か。
移住にあたっては、「北海道でどんな暮らしがしたいのか?なぜ北海道なのか?」をしっかり考える。
北海道移住の先輩方からのアドバイス(P237)
・「北の大地」に過度な幻想を持たない。
・まず移住。先のことはそれから。
・今の生活がイヤで北海道に「逃げる」という発想では失敗する。
・給料は安いが物価は東京と変わらず。お金の面では大変。
・何かを得れば何かを失う。何も失わず、移住するのは無理。
感想など
北海道移住について、良い面&悪い面が客観的に書かれてとても勉強になった本。
この本は私が札幌へ引っ越した家の近くの本屋で見つけたのですが、札幌に引っ越し、新生活を経験してみて、この本に書かれていること、「そうかもしれないなぁ」と感じています。
ハローワークに取材に行って札幌の求人事情を聞いてきましたが、現実問題、仕事の事情はなかなか厳しい状況です。収入面では、満足できる仕事が見つけにくいかもしれません。
でも、何かを得れば何かを失うのが世の常、収入が下がったとしても、それとは別の何かを得られるものがあるのも確かだと思います。
いずれにせよ、人生は一度きり。北海道移住に興味があれば、この本の内容が参考になると思います。