緩和医療医、大津秀和医師の本『死ぬときに後悔する25』を読みました。
著者は1000人を超える末期患者の死を見届けてきた緩和医療の専門医。大津医師によると、人は多かれ少なかれ、人生の最期に「こうしておけばよかった・・・」とやり残したことを後悔するそう。
「もうやることはすべてやった」満足してこの世を去る人は少なく、「できなかったこと、したくてもやらなかったこと」を後悔して死んでいく人が多いそう。
では、どんな人が人生に後悔しないで安らかに逝けるのか?
それは、「人生の有限性を知り、限られた時間を精一杯生きようと、一日一日に最善を尽くす、一期一会の人」と大津医師は言います。
内容について
「人生に後悔する」というと、人それぞれ、いろんなことを後悔しているように思えますが、大津医師によると、人が死を前に後悔することはある程度傾向があり、みんな後悔することには共通性があるとのこと。
この本では、後悔しがちな25のリストを、健康・医療、心理、社会・生活、人間、宗教・哲学、最終と、カテゴリに分類、紹介されています。
「死を前に多くの人が後悔する25のことを確認して、生きているうち、元気のあるうちにこれだけはやっておこうね」という使い方をする本です。
後悔することのリストですが、このような感じです。
健康・医療
・健康を大切にしなかった
・たばこを吸った
心理
・自分のしたいことをしなかった
・悪事に手を染めた
社会・生活
・自分の葬儀を考えなかった
・行きたい場所に旅行しなかった
人間
・記憶に残る恋愛をしなかった
・結婚しなかった
宗教・哲学
・自分の生きた証を残さなかった
・無神論で生きた
このような感じで、各章ごと、人が後悔することが紹介されています。
内容はどれも「当たり前」に思えることばかり。したいことをしなくて、我慢ばかりしていれば、「俺の人生は何なのか?」と感じるのは自然でしょうし、健康をないがしろにしていれば、ある日そのツケを払うことになります。
心から打ち解ける人が誰もおらず、打算で結婚したなら、「愛し愛される」という人間だけの豊かな体験を知らぬまま、寂しい思いであの世へ行くことになるでしょう。
結局、人が後悔することは、特別なことではなくて、日常で体験するささやかなことなのかもしれません。
感想など
よく、西洋の成功哲学では、「人は意思の力で何でもできる。物事は考え方。自分次第!」というような、「天は自ら助くる者を助く」的なことを主張していますが、実際、人の一生は儚いものです。
人は生まれると同時に老いていき、30代から「できること」よりも「できなくなること」が増えていくことを認めざるをえません(まともな神経で物事を見るなら)。
気力や体力は衰えるし、時間と元気にも限りある。そのなかで、野心を持ち、行動することはできます。
しかし、栄枯盛衰、兵どもが夢の跡。どんなに事業に成功して金持ちになっても、お金はあの世にもっていけませんし、会社で出世して成功したとしても、その成功はやがて人々から忘れられてしまいます。
成功に価値があるのは事実ですが、死ぬときは、結局一人であの世行きです。どんなに成功しても、どんなにお金持ちになっても、最期に辿り着く場所は同じです。
だからこそ、その最期を迎えるまえに大切なのが、「生きている間」を生き抜くこと。したいことをできるかぎりしておき、後悔しないよう、やってみる。『死ぬときに後悔する25』を読むと、そんな「当たり前」のことを考えさせられます。
私達が日々何気に過ごしている時間。会う人、一緒にいる人。もしかしたら、明日はいなくなるかもしれない。人生の黄昏を予想し、有限性を意識し、今日を生きる。
後悔のない人生を送らないため、読んで満足の一冊でした。