これから資本主義はどこへ向かうのか。『資本主義の終焉と歴史の危機』の読書感想

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

1人の勝者と99人の敗者を作るグローバル資本主義の行く末とは。

水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)の読書感想です。

この本について

行き詰まりを見せている資本主義を考察する本。

資本主義の特性、現在進行中のグローバル経済がもたらす様々な悪影響を明らかにしつつ、「脱経済成長」という考え方を提示、新しい未来の在り方を考えていく内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

「経済は成長し続けていく」という幻想(P12)

政界、ビジネス界、ともに資本主義は永続し、経済は成長し続けていくと信じて、利潤を追求している。しかし、利潤の追求には限界があり、利潤が出る空間はどんどん減少していく。

成長が鈍化し、利潤が減っていくなか、無理やり利潤と経済成長を求めれば求めるほど、貧困や格差が生まれ、不幸になる人の数が増えていく。不幸な人が増えれば、結果的に、国家の基盤を危うくしてしまう。

現代では、圧倒的多数の中間層が弱者になっており、立場の弱い者が強欲な人間の利潤追求のしわ寄せを受けている。

資本主義の延命策(P38)

現代の資本主義の王者であるアメリカは、1970年代、地理的物理的空間における利潤の低下に直面し、その後、グローバル化を推し進め、電子・金融空間という新しい黄金の地を生み出した。

資本主義は、既存の利潤が減少するとき、新しい空間を創造して利益を生み出していく

電子・金融空間の創造とその犠牲者たち(P40)

物理的、地理的な利潤追求が限界に達したアメリカの投資家たちは、あらたな儲けを求め、電子・金融という新しい儲けの空間を生み出した。結果生まれたのが、金融商品に代表されるようなマネーゲーム。

実質的には何も生み出さない金融投機が盛んになり、それで富を得た人間がいる一方、彼らの強欲の犠牲になったのは、一般労働者。

電子・金融空間の利潤追求によってグローバリゼーションが拡大、資本家と労働者が切り離されるようになった。結果的に、利益は経営層など一部の人間に集中し、多くの中間層労働者は没落の一途をたどった。

結果的に、21世紀のグローバリゼーションは、中間層を犠牲にした、一部の強欲な人間の経済成長戦略となった。

覇権国家が没落するとき(P97)

経済大国の利子率の歴史は、世界経済の覇権国の変化を示す。経済の覇権国家となった国が健全な投資先を失い利益率が下がると、金融拡大の局面に入っていく。

世界経済の覇権を握った国は、やがて実物経済が上手くいかなくなり、金融に走る。その段階に入ると、その国の覇権が終了する。

資本主義の最終局面で起こること(P115)

資本主義の最終局面では、経済成長と賃金の分離が起こる。経済は成長しているが、労働者の賃金は増えない。

グローバル資本主義を推し進めても、雇用なき経済成長が続くだけで、多くの労働者の生活は苦しくなるだけ。

国家とシステム(P126)

没落していく国家は、既存のシステムがダメになっているにも関わらず、そのシステムを維持・強化させてがために没落していく。

国家を存続させるために必要なのは、既存のシステムの保持ではなく、上手くいかなくなったシステムを抜本的に変えること

資本主義は限界を迎えている(P131)

現状、資本主義は限界に達している。

グローバリゼーションによって、国家が、実物経済に行き詰まり、金融空間に利益を求め始めると、国民経済は崩壊して、一部の人間だけが富を独占する、超絶格差社会になる。

行き着く先は、特権階級だけが幸せになり、国民のほとんどが不幸になる不平等社会。

資本主義の本質(P164)

資本主義=周辺からモノを集めてくること。中心(持つもの)/周辺(持たざるもの)と区分を分け、周辺からモノを集め、中心に集中させる。

資本主義と結びついたグローバリズムは、必ず周辺を生み出す。国家の均質性を消失させ、国家の内側に中心(富を集める特権階級)と周辺(搾取されるもの)を創りだす。

努力を口に出す自己啓発書が信用できない理由(P176)

「報われないのは努力が足りないから」などの言葉は、既得権益層が自らの身を守るためのポジショントーク。

持つものにとって、持たざるものが人生が上手くいかない原因は、自分の努力不足と考えてもらった方が都合がいい。

備考

そういえば、アメリカのサブプライムローンなどの金融危機が起こったとき、やたら自助努力の大切さを主張する自己啓発書や、引き寄せ系の「自分で人生は思い通りになる」系の本が出版されましたね。

どの本も「人生がうまくいくかいかないかは自分次第」的な内容ですが、自分の努力だけで何でも実現できるほど、人生は簡単ではないと思うこの頃です。

低金利=成長の限界(P198)

日本の低金利について。

日本の低利子率は、世界で最も低い。しかも長く低金利が続いている。

これは、日本経済の成長が限界を迎え、資本が過剰すぎて、もはやどこに投資をしても、利益が出ない状態になっているということ。ある意味、日本は成熟しきった資本主義を体現している国家。

感想など

資本主義はなぜ限界を迎えているのか、経済が苦手な私でも資本主義の特性が分かりやすく理解できた本。

「残された空間(利益を出す対象)のパイがどんどん減少すると、投資は実物ではなく金融に向かう。すると労働者は貧乏になり、投資家や経営層、一部の人だけがお金持ちになる。」

という本書の考え方は分かりやすく、現実社会を見ていると、本当なんだぁと実感します。

自由競争社会といっても、現実的に平等公平な勝負はなく、勝つのは巨大企業の資本家が有利。勝負する段階で有利不利は明らかにあります。

今、日本はアメリカのように1人だけが勝ち、99人が負ける社会に近づいていますが、この状況が続くことに違和感を覚える人も多いのではないかと思います。

とはいえ、資本主義が変わっていくのはまだまだ先のことだと思います。大変な時代は、まだまだ続くのかもしれません。

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