『「居場所」のない男、「時間」がない女』の読書感想 – 「普通の幸せ」が手に入りにくい本当の理由

「居場所」のない男、「時間」がない女

今や、「普通」の幸せのハードルは、こんなにも高い!?

水無田気流著『「居場所」のない男、「時間」がない女』(日本経済新聞出版社)の読書感想です。

この本について

現代に生きる男性女性の生きづらさと日本社会の問題について考察する本。

「日本の場合、男性は仕事以外の人生の選択肢に乏しく孤独で、女性は結婚によって時間の余裕を失っている」というのが本書の主な内容。

なぜ男は孤独で女は時間に追われるのか、生きていくためにはどうすればいいのか、考えるきっかけになる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

日本の夫婦の問題点(P1)

日本社会には大きな歪みがある。

働く夫と妻は「生涯」を共にはするが「生活」は共にしていない。この原因は、日本の性別分業システムにある。

仕事中心の男と家事中心の女、夫婦が生活を共にせず、夫婦でありながらバラバラなのは、そういうシステムの中で生きているから。

都市部と郊外(P4)

郊外の住宅地はファミリー仕様の住宅地であり、「規格外」の人間を排除する。「家庭を守る」主婦とその子どもが暮らす場所であり、それ以外の人間(例えば独身者など)は居心地が悪い。

一方、都市部は「働く被雇用者」のための場所。バリバリ働くサラリーマンのための仕様になっており、それ以外の人にとっては、いろいろ不便がある。

家庭を守る妻は郊外で、働く夫は都市部で。夫婦は生活空間を共有することなく、男女は全く違う生活観の中で生きている

男が見ようとしない女の姿(P45)

男は女の本音に鈍感。

「早く○ねよ」と思いながらも、それを一切表に出さずに世話を焼けるのが女。

本音を隠し、表面的な可愛らしい演技に騙されるのが男のサガだが、それが自分の運命に致命的な脆弱さをもたらす危険があることを認識しておく。

男が求める女の癒やし(P50)

現代社会、男は弱音を吐けず、社会で延々と続く競争レースに参加させられている。

感情も出せず本音も言えない、そんな男たちが必要とするのが愛情ビジネス。「料理上手」に「聞き上手」、「家庭的」、そういうものを持っていそうな女に男は弱く、その表面的な部分に騙されてしまう。

日本社会のは働き方の選択肢が少ない(P55)

これまでの日本企業は、男中心の均質性の高い組織を作り、そこに適合する働き方を男たちに求めてきた。

そのため、男たちは会社中心の生活を求められ、それに適合しない男(家族の介護などの事情で仕事中心の生活が送れない男)は、会社から居場所を失くしてしまう。

ある程度年齢がいってしまえば、進路変更が難しくなってしまうため、男の働き方は思った以上に選択肢が少ないのが現実

男が女よりも自殺しやすい理由(P92)

男は案外脆い。女性よりも衝動的になりやすく、メンタル面で女よりも弱い。

問題を抱えたときも、人に相談できず、自分で抱え込みやすい。だから悩んだとき、自分だけで何とかしようとして、行き詰まってしまう。

おまけに、日本の男は「家計」という責任を背負っていることが多いため、その重責の重さが、「何とかしなければ」という男の重荷になっている。

妻のキャリア追求はリスクヘッジ(P99)

アメリカでは、夫は妻のキャリアアップに好意的。

男が働き女が主婦をするという、一方の性に家計責任を押し付けるモデルはすでに破綻している

夫と妻、どちらも働いていれば、どちらかが倒れても、家族は生き残ることができる。夫と妻、それぞれに収入があれば、どちらかがリストラされても、家族は再起できる。

不安定な世の中だからこそ、「二馬力」は強い。

日本の男は孤独(P114)

日本の男は、労働時間が長く、家族や地域社会との関わりが薄いため、仕事を辞めたとたん、孤立化を招きやすい。

日本の男が抱えているこの問題を関係貧困と言う。

日本の男が関係貧困を抱える原因は、選択肢の少なさ。日本の男は、実質的に「仕事をしない」という選択肢がない。

主夫になる=罵倒や軽蔑の対象になることであり、働くにしても、派遣などの非正規は、組織のメンバーとしては受け入れられにくく、「よそ者」的なポジションで働かざるをえない。

男がメンバーとして認められるためには、正規のポジション以外選択がなく、家族を支えるために主夫になることも難しい。

選択肢が少ないため、男の生き方は、自由でありそうでだが、全く不自由なものとなっている。

男は仕事を失うと全てを失う(P134)

男の関係性は仕事。仕事を失うこと=収入、人間関係、全てを失うこと

日本の男は仕事依存、脆弱な関係性の中におり、仕事を失うこと=すべてを失うことにならないため、自分の関係性について、考えた方がいい。

「病気になったとき、人生で辛いとき、弱みを見せられる相手はいるか?」

「退職後はどうするか?妻に害虫扱いされないか?」

「図書館で一日過ごす以外やることがない状態にならないか?」

など、仕事以外のことを、真剣に考えておくことが大切。

今までのモデルはもう通じない(P214)

男は外で働き、女は家庭を守る。

今まで上手くいってきたモデルは、当時の社会の、安定と成長を基板とした時代に通じたモデルだった。

しかし、今、そのモデルは通用しない時代になった。当たり前であったことが、当たり前でなくなってきた。

もう昔のモデルは通用しないことを前提に考えないと、実現不可能なモデルを追い求めることで現実に対処できなくなってしまう

感想など

ぼんやりと感じている違和感が明確に分かる本。

勉強を頑張りいい大学へ、そこからどこかの会社に勤めて、そこで頑張る。ある程度の年齢になったら、家庭を持ち、家を買う。

私の世代はそんなことを言われてきたギリギリの世代(1980年代生まれ)だと思いますが、昔から、その考え方に違和感を感じてきました。

朝から晩まで仕事、会社中心の毎日。

夜遅くまで働き、したいことをする時間がない。毎日やることは仕事だけ。多分、そんな生活でも、上手くいっていた時代があったのかもしれません。

しかし、これからは、そんな生活をしていても、上手くいく保証はどこにもありません。安定は失われ、頑張っても結果が全て、自己責任となる時代です。

だからこそ、自分が暮らしている時代、環境の現状を見極め、自分が生きやすい生き方を模索していくことが大事ではないかと感じています。

何かを始めるにも、まずは足元を見てから。

どう生きるかを考える前に知っておきたいのが、日本社会はどんな理屈で動いているのか。それを知ることで、そこから抜け出すことができます。

大切なのは、「今までどうだった」のではなく「これから何が有効なのか」を考え、モデルを選択すること。

「男は働き女は家庭。そんな生き方、もう無理じゃない?」と疑問を感じている方は、一読をオススメします。

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