『21世紀の子育て』の読書感想 – こんな時代、子どもをどう育てればいいか。

21世紀の子育て―日本の親たちへのメッセージ

こんな時代だから、子どもには幸せになってほしい。

松居和著『21世紀の子育て―日本の親たちへのメッセージ』(エイデル研究所)の読書感想です。

この本について

伝統音楽家として知られる松居和さんの教育論。

この本では、主に日本の子育てや、アメリカ社会式な考え方への批判、家族の重要性が内容の中心になっています。

多少激辛な内容・表現があるものの、感性と家族を重視した教育論は、胸に響くものがあります。

以下、本書の読書メモです。

子育てと父親の役割(P17)

家庭における父親の役割は、母親の精神的安定を保つことと、毎月お金を稼いでくること。父親の働きと存在が、子どもの健全な成長をもたらす。

子育てに100%正しい正解はない(P24)

どんな教育法を実践しようと、子どもは親の思った通りには育たない。

子育ては「思い通りにならないこと」の典型で、子どもを思い通りに育つと勘違いしてはいけない。夫婦で相談しつつ、子どもの発達段階に応じ、最善を尽くせばよい。

他人に迷惑をかける子どもに育ててはいけない(P27)

親が子どもに望むことは、子どもが幸せになること。他人に迷惑をかける子どもは不幸になる可能性が高いので、子どもが人に迷惑をかけるような行為をしたら、きちんと叱る。

受験戦争は親子の絆を深める(P48)

お受験や中学受験など、早期の受験競争はネガティブなイメージがあるが、実際は良いもの。受験は親子が協力して苦労するものであって、それが親子の絆を深めていく。

子どもを人格が歪むほど苦しめるのはダメだが、良い親子関係を築くために、ある程度の苦労は必要。苦労が親子の絆を強めてくれる。

父親の存在感が家族を作る(P69)

子どもが「家族」の存在を感じるためには、子どもに誰かが家族のために苦労しているという自覚を持たせることが重要。そのため、父親が働いている姿を子どもに見せることは教育上必要。

父親の存在感がない家庭の子どもは、家族が崩壊している。父親の存在が、家族のつながりを作っている。

アメリカ社会は理想のモデルか(P83)

アメリカのような競争社会は、上位1割に入れる人にとっては最高の社会。しかし、競争に負けたものにとっては、生き地獄に等しい、厳しい社会。

絶えず競争が繰り広げられる社会のため、性格が良い人、おっとりした人、平和主義の人には住みづらい社会であり、「いい人」が被害者になりやすい社会

アメリカは、犯罪に遭うこと、人種差別されること、町で強盗に遭遇すること、理不尽に悔しい思いをする危険な環境が多く、誰もが安心して暮らせる国ではない。

大人であれば、危険な環境を避けることができるが、子どもは学校に行かなければいけないため、学校選びは特に注意する必要がある。

子どもと環境(P86)

子どもがグレると、親の躾や教育に原因があるように言われるが、実際は子どもが過ごす環境の方が重要。

子どもの周りに悪い人間がたくさんいれば、「朱に交われば赤くなる」の諺の通り、子どもも悪に染まる。子どもを真っ当に育てたいと思うのであれば、子どもにとって良い環境を選ぶことが大切。

備考

この理屈は、公立学校の現状を見ているとその通りだと思います。

小学校まで真面目でいい子だった子どもが、中学に上がると、小学校では関わらなかった犯罪者予備軍のグループと接することで、道を踏み外してしまう例がたくさんあります。

人は周りの人間によって影響され、子どもも例外ではありません。できる限り、悪い影響は避けたいものです。

個性を尊重した生き方をしても、人生の幸不幸は運で決まる(P94)

個性を考える上で大切なのが、「運」という要素を考えておくこと。

個性が生きたり死んだりするのは運であって、人生の吉凶は運で決まる。人生が上手くいっている人は、ほんの小さな幸運の積み重ねで、個性云々は関係がない。

子どもを自由にのびのびさせる代償(P101)

我慢を教えられていないのびのびと育てられた子どもは、耐久力が育たず、人生の様々な問題に、上手く対処できなくなってしまう。

子どもがのびのびと育つほど、我慢できる人が少なくなり、離婚は増え、幼児虐待が増えていく。

家族は不自由の象徴(P102)

個性豊かに、自由に生きたいというのが現代人の理想だが、現実問題、人間は不自由な存在。

人間は仕事に縛られ、家族に縛られて生きている。しかし、不自由さがあるからこそ、人は拠り所を持つことができ、一人ではないと実感できる。不自由さのなかに幸福を見つけることができる

親になる訓練(P140)

公園デビューについて。

公園では、自分勝手でわがままな相手がいて、子どもを公園で遊ばせようと思っても、大人同士、面倒な問題が起こる。

しかし、そこを子どものために我慢して、とどまること、我慢することが、親になるための訓練になる。相手を選べない、イヤなことが起こる場所で頑張ることは、親業の1つ。

子どもは理不尽な存在だ(P142)

子どもは本来、非論理的で、理不尽なもの。理屈でなんとかしようにも、上手くいかなくて当然。自分のなかの正義感や理論で、子どもと相対しないこと。

悩んだらセラピストよりも仲の良い友人に相談(P144)

子育てに取り組む上で大切なのは、親自身が精神的な健康を保つこと。

子どもは親の思うとおりに育たず、どんなに最善を尽くしても、子どもが問題行動を起こすこともある。

子どもが問題を起こして苦しいとき、学問を背景にしたセラピストやカウンセラーは問題解決に役立たない。大切なのは、親が気軽に相談できる仲間を持ち、精神的な健康を保つこと。

子育ては理不尽で不確かなもの。自然に問題が解決することもあるので、辛いときは、周りに相談して、悩みを抱えないことが大切。

弁護士とカウンセラーが普及することの意味(P150)

弁護士やカウンセラーが増えるにつれ、人と人との関わりが難しくなり、社会から秩序とモラルが消えていく。

弁護士やカウンセラーが増えることは、人間社会の進歩ではなく、より生きづらい社会になっている証拠。

知識で子育てしようとすること(P156)

子どもを心理学などの知識をもとに分析しようとする姿勢、学問で人間関係を理解しようとする姿勢は危険。

子どもは非論理的で、理解しようにもできない存在。それを学問の知識に当てはめて、無理やり理解しようとするから問題が起こる。

問題児を隔離するアメリカの学校(P173)

アメリカ、ボルチモア市の教育について。

ボルチモア市では、民間団体と協力し、問題行動を起こす生徒を一般の生徒から隔離して、ケニアの全寮制学校に送る。

そこで厳しく教育された子どもたちの9割は、アメリカに帰国後、大学に進学している。

日本では、公教育の現実を知らない似非人権教育者が「子どもの人権」云々と叫んでいるが、実際問題、そのような甘い姿勢が、公教育を悪化させる原因になっている。

日本でも、将来的に問題行動を起こす子どもを隔離する時代が来る。

備考

2014年6月、大阪の橋本市長が問題行動を起こす子どもを隔離教育する方針を発表しましたが、公立学校のひどい現状を考えると、個人的には賛成です。

公立校では「子どもがすること」の範囲を超えた、犯罪行為が蔓延している現実があります。

加害者の人権だけが尊重され、被害者の人権が軽視される現状、そろそろ日本でも、ゼロトレランスの導入を期待したいところ。

公立が落ち着いて安心して子どもを通わせる学校にできれば子どもを私立に通わせる必要もなくなるので、多くの人にとってメリットがある制度だと思います。

夢破れても帰る場所があればいい(P195)

人生は理不尽、努力は実らず、思い通りにいかないことがあるもの。夢を持ち行動を起こしても、夢が実現しないこともある。

大切なのは、夢破れたときに帰ることができる場所。そこから、競争社会の争いから一歩外に出た、新しい生き方を見つけることができる。

アメリカンドリームの本質(P199)

アメリカンドリームはパワーゲームでありマネーゲーム。

意欲や努力は「自分だけ」勝つためのものであって、勝利を得るために、他の人を押しのけて、なぎ倒していかなければつかめないもの。

現実問題、アメリカの競争は、勝者の家庭に生まれたものが有利なゲームであって、誰もが夢や可能性に満ちている公平なゲームではない。

アメリカの成功者(P205)

アメリカの成功者の多くは既得権益層で、自分が勝つためなら、どんなことをしても平気な自己中心的な人間が多い。

彼らがグループを作る団体は、彼らが競争を有利に進めるためのものであることが多く、ボランティア精神というより、自己保身が目的。強者になったがゆえ、敗北を恐れ、幸せから遠い場所にいる。

日本人は日本人の道を(P218)

我々日本人は、価値観や考え方だけでなく、遺伝子レベルから西洋人とは違う。

だからこそ、欧米を無意味に真似ることはやめて、欧米とは違う選択、違う考え方、違う価値観を育てていくことが大切。

日本は、今、グローバル化の波に飲み込まれているが、このグローバル化は、所詮強欲な欧米人によるパワーゲーム。日本がこのゲームに参加しても、日本人は幸せになれない。

なぜ家族が必要なのか(P239)

女性の社会進出が進んだアメリカでは、実際、女性は幸福にならず、家族は孤立化。今は振り子が逆に揺れている。

そもそも、人間は不自由で自立できない存在で、家族を作り生きていく存在。孤立することに不幸を感じる存在。社会進出や自由、独立、美しい言葉を言う人がいれば、まずはその言葉の意味を自分で考える。

幸福について(P241)

幸福=ものさしの持ち方。どういうものさしを持つかは、自分で決めることができる。

日本は世界一幸せな国である(P252)

日本は社会が安定し、犯罪は比較的少なく、親が子育てに関心を持つ幸せな国。自分の国の良さを気付くことが大切。

学校は苦労する場所(P255)

子どもに自主性や自由は不要。学校に通わせ、そこで苦労させ、様々なルール、秩序を勉強させる。それが子どもの成長につながる。

感想など

270ページほど、分厚く濃い内容の本でした。読み切るのに時間がかかりましたが、本がメモだらけになり、熱中して読むことができました。

内容ですが、「子どもの問題解決にカウンセラーは役立たない」など、一部過激な表現がありますが、著者が言わんとしている内容は、至極真っ当かなという実感。

考え方も現実的で、「子どもは叱らない、伸び伸び育てよう!」などの偽善・空想論的な内容がないところがこの本の素晴らしいところ。

家族とは何なのか、子どもはどう育てるか、日本人としてどう教育を考えるか、興味がある方におすすめです。

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