子供の名付けから読み解く世の中の空気。『子供の名前が危ない』の読書感想

命名研究家が読み解く珍奇な子供の名前が増えている理由と社会の関係性。

牧野恭仁雄著『子供の名前が危ない』(KKベストセラーズ)の読書感想です。

この本について

子供の名付け現象について考察した本。

なぜ、子供にDQNネームと呼ばれる、非常識、珍妙な名付けをする親が増えたのか、子供の名付けと社会的な背景を考察、「そうなのか!」と驚く内容が満載の本です。

以下、本書の読書メモです。

名付けの法則(P14)

子供の名付けには2つの法則がある。

1つは、名前自体で子供の人生が決まるわけではないが、名前以上に重要なものがある。それが、子供に名付けをするときの親の無意識。

名前より、親の中に無意識にある感覚が、子供の運命、生き方に影響を与える

もう1つは、名前は社会の世相を表す鏡。珍奇な名前が増えている背景には、世の中の世相、空気が反映されている。

DQNネームとは(P20)

一般的な常識とはかけ離れた、奇抜で人に不快感を与えるような名前をDQNネームと呼ぶ。

DQNネームに不快感を感じるのは、「子供にこんな変な名前をつけて何考えてんだ!」など、名前を付けることへの軽視、非常識な感覚に怒りを感じるから。

珍奇な子供の名付けの特徴(P27)

珍奇な名前の名付けに関する17の傾向。

1・間違った読み方の名前

→族(やから)、星(あかり)など

2・読み方は間違っていないが珍妙な名前

→歩世(あゆよ)、会子(えこ)など

3・外国の言葉を無理に漢字にした名前

→甲都(かんと)、新千恵(にーちぇ)など

4・意味と読みを混同、間違った読み方にした名前

→王(きんぐ)、聖母(まりあ)など

5・あだ名のように思われる名前

→桃太郎(ももたろう)、卑弥呼(ひみこ)など

6・おかしな連想につながったり、あだ名と間違われやすい名前

→類人(るいと)、七日(なのか)など

7・いかにも古風な響きの名前

→源八(げんぱち)、八重子(やえこ)など

8・おかしな意味になる名前

→倭(やまと、「チビの野蛮人」という意味がある)、未咲(みさき、「未だに花開いていない」という意味)など

9・熟語のためのおかしく感じる名前

→大夢(ひろむ)、真珠(真珠)など

10・呼び方に男女の判断がつかない名前

→アオイ、カツミなど

11・読み方が男女に分かれ、男女両方につけられる名前

→悠(ゆう)、幹(みき)など

12・文字が女性で響きが男性の名前

→真琴(まこと)、花月(かづき)など

13・漢字は普通、読み方を変えて珍奇になった名前

→英寿(えいず)、杏子(あんこ)など

14・難しくて説明が難しい名前

→亭(とおる)、繭(まゆ)など

15・古語で特別な言葉に聞こえる名前

→鳥屋(とや)、湯女(ゆな)など

16・古来、別の使われ方をした名前

→あぐり(女の子の留め名)、かさね(怪談で出てくる名前)など

17・外国語でおかしな連想をする名前

→花子(中国語で乞食の意味)、しおり(フランス語で寝小便の意味)など

名前で困るのは子供(P51)

珍奇ネームで名前をいじられ子供がいじめの被害に。

それだけでなく、珍奇ネームは入学、就職、珍奇ネームが子供の足を引っ張る楔に(珍奇ネームは就職に不利)。

変な名前をつけられた子供にどんな影響があるか、考えた上で名前をつける。

流行する名前を見ると分かること(P66)

名前は足りないもの、飢えているものの象徴。

その時代に流行した名前を見ると、その時代に人々が飢えているものが分かる

・大正時代の医者不足の時代

→「久子」や「千代」など、長く生きることを願った名前が流行

・昭和時代前半の貧しい時代

→「実」、「茂」、「豊」など豊かさを表す名前が流行

・平成の自然が減っている時代

→陸や海、陽、菜、果など、自然や植物を表す漢字の入った名前が流行

子供の人格形成で大切なもの(P91)

子供の人格形成で大切なのは、名前そのものではなく、子供を名付けたときの親の気持ち。

親が持っている無意識の感覚が名付けに影響し、その感覚が子供の無意識に入り込んでいく。親の無意識の感覚が子供に伝播、子供は親の業を引き継いでいく。

良い意味の漢字は要注意?(P101)

犯罪者の名前を見ると、案外良い意味となる漢字が多い。

良い名前をもらった人間が犯罪を起こすのは、親が無意識のうち、自身に欠乏したものを名付けに使いたがるから。

良い意味の名前を名付ける親は自分に道徳心や公共心が欠けていることをどこかで自覚している。その無意識が子供に伝播、犯罪を起こすようになる。

この本には具体的な名前、漢字が書かれていますが、ここでは割愛します。

珍奇な名前を子供につける親の無意識にあるもの(P110)

子供の名付けは自分に欠けたものを代償しようとする行為。珍奇な名前を子供につける親は、「さえない生き方をしている」という意識を持っている。

親自身が「こうありたい自分でいられない」という状態のため、子供には変わった、「目立つ」名前をつけることで、自身の冴えない現実を、子供の名付けで代償しようとしている。

珍奇な名前の子供が増える背景には、

「自分の人生は上手くいかない・・・」

「私はこれができない・・・」

「私の人生はこれが足りない・・・」

など、マイナスの自己評価、欠乏感、無気力感を抱えた親が増えている現実がある。

感想など

「子供の名付けは親の無意識の欠乏感」という指摘が新鮮な本。

親が自分の足りないもの、人生で叶わなかったことを子供に求めるのはよくある話。その心理を想像すると、

「自分に足りないものを子供の名前につけるからで、子供に奇抜目立つ名前をつける親が増えている理由は、彼らが個性がなく、彼ら自身が自己存在感の欠乏を感じているから」

という本書の主張は、非常に納得できるものがあります。

子供の名前を付けるにしろ、習い事をさせるなど、根っこの部分は同じもの。子供を通じて人生にリベンジしようとする、無意識の試みなのかもしれません。

人間心理の難しさを感じた本でした。

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