『「成功」と「失敗」の法則』の読書感想 – 人生における真の成功を問う

活学新書 「成功」と「失敗」の法則 (活学新書 1)

素晴らしい人生を送るための原理原則。

稲盛和夫著『「成功」と「失敗」の法則』(致知出版社)の読書感想です。

この本について

KDDIやJAL復興でお馴染みの稲盛和夫会長が生き方や仕事について、自らの人生哲学について語っている本。

生きる目的とは何なのか、自らを律して精進する意味はどこにあるのか、背筋が伸びる話が満載です。

以下、本書の読書メモです。

はじめに(P8)

人生=自分の人格を高めるための試練。

人生の成功とは、成功したり巨富を得たりすることではなく、自らの人格を高めることそのものにある。

苦難にあっても心折れずに最善を尽くすことができるか、成功しても奢らずに謙虚に努力し続けることができるか。

生きることそのものが人間にとっては大切な試練であり、自らを成長させる機会となる。

価値判断の基準(P25)

人生で必要なのは哲学。

自分の行いが正しいか間違っているか、それを決める哲学が必要。それは人として正しいかどうかが全て。人として正しい行いをしていれば、判断で迷うことはない。

なぜ苦労が必要なのか(P33)

人生における苦労=己の人間性を鍛える機会。苦労があるから人格が磨かれ、人として一皮むけることができる。

幸せについて(P60)

幸せになれるかどうか、それは心の持ちようで決まる。

「自分だけ良ければいい」という利己的な欲望を持っていれば何を手に入れても幸せになることはできない。

しかし利己心を抑え、他の人の幸せを願う利他の心を持てば、幸せになることができる。

成功が続かない理由(P72)

事業で成功しても、その後成功が続かない人が多いのは、成功して傲慢になってしまうから。成功したことで驕りや過信が生まれ、謙虚さを失ってしまう。

真の成功を得るためには、そのような心を克服し、謙虚になり、さらに精進する必要がある。

仕事について(P102)

今与えられた仕事=天職。仕事を通じて人は成長することができる。今目の前の仕事を必死になって頑張ること。それによって道は拓けていく。

感想など

読んでいて背筋がピンとするというか、心に響く話がたくさんあった本。

生きることは成長の物語であり、「人格を磨くことこそが人生の目的である」という主張は理屈抜きに心に響いてくる何かがあります。

いくら成功しても、他人に害を及ぼすような人間的クズだったら、成功する意味がないというのも本当にそうだな、と。

この意味で、本書は、自分を律し、一度切りの人生を真摯に生きるための格好の指南書になります。

ただ、正直読んでいて気になった点もあります。

例えば仕事の話。「仕事は人格を磨く手段であり、今与えられた仕事を一生懸命に取り組め」的なことが述べられていますが、これは「誰が」言うかによって受け取る意味が変わってきます。

働いている人が自ら意志を持って、この言葉を励ましとして一生懸命仕事を頑張るのは素晴らしいことですが、例えばブラック企業の経営者が従業員を叱咤激励するために「仕事の意味」を語るとき、意味は全く別のものになります。

例えば、私のようなフリーの人間(独立独歩で生きている人間)が、自らを律する意味で自分に言い聞かせるのはアリだと思います。仕事を全力で頑張る。それ自体は素晴らしいことです。仕事を頑張ることで人として一皮むけるのも確かです。

しかし、社員を安い賃金でこきつかい、利益のために法律を平気で無視するような悪徳経営者がこの言葉を語れば、それは自らの欲のために人を犠牲にする悪魔の言葉(人を安くこき使う方便)になります。

つまるところ、この考え方は「悪用」される可能性もあって、読み手の立場によっては素直に飲み込めない(というか鵜呑みにしてはいけない)話があるのも確かです。

実際問題、世の中には素晴らしいことを言っているのに、やっていることは人として下の下的な人がいるという現実があります。

そんな世の中だからこそ、いかに生きていくべきか、何が人として正しい生き方なのか、最終的に決めるのは自分自身。

自分を律し成長させるためには本書の話は勉強になる話が満載。ただし、その考え方を人から強制されたり、押し付けられたりした場合は、本書の話が「悪用」される危険性も伴います。

この意味で本書はとても危険な本かもしれません。まぁ世の中、いろいろ難しいですね。

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