藤山邦子著『ビジネスで大切なことはすべて小学校までに学んでいます – 仕事と人生の原理原則』(ワニ・プラス)の読書感想です。
この本について
「ビジネスに必要なのは人としての礼節である」という新時代の道徳論が語られている本。
今、世の中が競争社会だからこそ。先が見えない不安定な時代だからこそ。人として大切なものを失わず、礼節こそ拠り所にすべしというのが本書の主張。
この本を読めば、かつての日本人が当たり前のように大切にしていた価値観の素晴らしさ、そして必要性が実感できる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P2)
いつの時代も変化に耐え抜き延々と生き抜いていく老舗企業。その根本にあるのは不易流行。
その企業にとって大切な本質は維持しつつも、時代の変化にあわせて変えるべきところを変えていく。そんな姿勢を持っている。
だからどんな時代でも持続可能な成長を続け、生き残っていくことができる。
仕事人として(P17)
ビジネスパーソンである前に、まず礼儀を知っている人として在ること。
困った人に親切にする。人が嫌がることをしない。きちんとお礼を言える。そんな人として当たり前のことができること。これが前提。
キーワードは相互繁栄(P24)
「自分さえ良ければいい」という利己心では、真に繁栄することはできない。
大切なのは三方よし。関わる人それぞれが皆、共栄共存できること。それこそが真のビジネスの在り方。
失敗について(P30)
失敗=同じ間違いを繰り返さないための学びと気づきを得るチャンス。失敗を無視していればやがて、取り返しのつかない失敗をしてしまう可能性がある。
本当に成長できるとき(P54)
人は弱い。困難がやって来れば、そこから逃げ出したくなってしまう。しかしそんな困難こそ実は、人が最も成長できるとき。
困難を味わい、それを乗り越える。これによってキャパシティがアップ。一皮むけて成長することができる。
この意味で、困難は辛いけれど、立ち向かって乗り越えていくべきもの。そこに成長のチャンスがあるのだから。
クレームから学ぶ(P112)
ほめられることよりもむしろ、クレームをつけられたときにサービス改善のチャンスがある。
クレームとはいわば、お客の期待の現れ。期待していたのに思ったものではなかった。だからクレームを言う。
そこから真摯に学べば、今よりもっと、よくなるためのヒントが得られる。
クレーム対応の原則(P118)
お客のクレームを聞くときは必ず、お客の気が済むまで言葉を吐き出させること。お客の言い分を最後まで聞く。そのあとに、こちらが話す。
その際は、「不愉快な思いをさせてすいませんでした」など、お詫びの言葉を言うことを忘れないこと。
感想など
「道徳って、実はとても大切なことなんじゃないだろうか?」
という気持ちになる本。
そう、私たちたちは自分のことだけを考えて、何もかも自分優先で生きていくことはできます。しかし本当にそれでいいのか。
自分のことさえ良ければ、他の人がどうなってもいいのか。むしろ、それでは本当の幸せは得られない。
多分、そのことに、多くの人が気づき始めている時代が今の時代ではないでしょうか。
だからこそ、武士道の価値観だとか、道徳とか、そういったことが近年、再び注目を集めているのだと思います。
この本はまさに小学校の道徳の授業を思いださせてくれるような、ある意味「建前」や「きれいごと」のように思える話がたくさんあります。
でも、人生でとことん自己中心的に生きていれば必ず気づきます。そう、自分のことだけを考えても人は、幸せになることができないんだ、ということが。
この意味で、人を大切にする。みんなのことを考える。礼を大切にする。そういうことは、きれいごとでもなんでもなく、人が生きていく上で本質的なものだと思います。
それを知れば、昔の価値観。道徳は決してただの建前論。綺麗事などではない。そのことが実感できます。