「こんな生き方が幸せ」というモデルなき時代に幸福を見つける方法。
藤原和博著『35歳の幸福論 成熟社会を生きる12の戦術』(幻冬舎)の読書感想です。
この本について
東京の民間人校長として活躍した藤原和博さんの本。
確固たる生き方のモデルなき今の時代、何を大切にしてどう生きていけばいいか、自分の生き方を見出すためのヒントが満載の内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
今の時代は生きにくい(P4)
かつて、こうすれば幸せになれるという生き方のモデルがあった時代があった。
みんな一緒に昨日よりは今日、明日豊かになっていく。それが幸せだった時代があった。その時代、人は今よりはるかに生きやすかった。
しかし今は時代が変わり、みんな一緒の時代は終わった。「これが幸せ」という一般解がなくなり、私たち一人一人が、自分の道を歩まなければならなくなった。
私たち一人一人が自分の幸福論を見出さなければいけない時代、それが現代。
正解主義ではなく修正主義で行く(P35)
正解なき現代では、「この道が正しい」という正解主義ではなく、試行錯誤をしつつ、必要に応じて修正、経験を積んでいくことが大切。
いろいろな経験を積んでいくことで、世の中、物事の多様性に気がつく。それが人生を豊かにしていく。
投資で失敗しないための5つのポイント(P56)
投資は物事の引き際を学ぶ練習。次の5点に注意し、投資に参加する。
1・「この銘柄が儲かる!」などの儲け話に乗らない。素人に美味しい話がやってくるときは、それが潮時になった証拠。
2・証券会社が勧める銘柄は買わない。
3・損切りのタイミング、儲かっていたとしても、「ここまで」という引き際を意識する。
引き際を意識することはとても大切。ダメなものはさっさと見切って可能性があるものに賭ける。投資だけでなく、人間関係でも仕事でも、引き際は意識しておく。
4・縁のある株を買う。
5・「損してもいいか」と思える株を買う。
子育てについて(P90)
子育てで大切なのは、子育てに「この育て方が正しい、こういう子に育つのが正しい」という、正解主義を持ち込まないこと。
子育てに正解はない。育児書を読んでも、そこに自分の子どもにとっての正しい正解はないし、子育ての「正解例」を真似ても、それが我が子にとっての最善解になるとは限らない。
子どもを育てる場所も、子どもの個性も、状況も様々。
子育てをする上で親として大切なのは、親としての役割を果たすこと。子どもの壁となり、ダメなことはダメと教え、公共心を育てさせ、過剰に甘やかさせない。必要なときには叱る。
子どもの個性を尊重させすぎず、やるべきことをやらせる、そんな当たり前のことをすることが大切。
高校までは受験は不要?(P100)
お受験は「世代を超えた母親の人生のリベンジ」。周りの子どもがお受験をするからといって、安易にその競争に参加してはいけない。
小中学校から子どもを私立に入れた方が子どもが幸せになれるという考え方があるが、実際私立神話には根拠がない。
今のご時世、子どもがいい学校に入っても、名門大学を卒業しても、幸せになれる保証なんて何もない。教育方針は周囲の風潮に迎合せず、何が我が子にとって良いことなのか、親自身がしっかり考える。
子どもにはいろんな環境を経験させる(P102)
現代は答え無き時代。多様で複雑、変化の激しい時代。
こんな時代を生き抜くためには、子どもに快適な環境を与えて育てるのではなく、快不快、様々な体験をさせ、人や環境に揉まれる経験をさせることが必要。
黙っていれば周りが何でもしてくれる、自分と同じような人間ばかりが集まる環境でぬくぬく育つことは、子どもが大人になったときにそのツケが回ってくる。
子どもを安全安心に育てたいのは親心だが、親が子どもに何でも先回りしてやってあげることは、子どもをダメにしてしまう可能性がある。
子どもにはイヤなこと、大変なこと、我慢すること、様々な体験を積ませることが大切。
結婚できない人が増えている理由(P121)
独身者が増えている理由。
1・情報があり過ぎて決断できない。
2・結婚に「正解主義」を持ち込んでいる。
3・結婚したい男性不足。
結局、結婚はタイミング。結婚したいと思ったとき、そこに相手がいれば、清水の舞台から飛び降りる気持ちで決断すればいい。
結婚の意味(P125)
男女が恋愛するだけであるなら、わざわざ結婚する必要はない。
なぜ結婚するのか、それは、結婚という契約によってあえて互いを縛り、それによってクリエイティブな経験をするため。
結婚すると男はお金が不自由になる。家族に対しての義務が発生する。独身時代のように好き勝手できない。その制限された状態のなか、何かを工夫していくことで、かえって人生が面白くなる。
また、結婚して子どもができれば、「俺はこう思う」が通じなくなってくる。
パートナーの態度も変わるし、その都度その都度、状況に応じて自分が変化しなければいけない。修正主義的、柔軟性を学ばなければ、結婚生活を続けられない。
しかし、それによって、人間として一皮向けることができる。新しい発想も生まれる。
同士と結婚せよ(P128)
結婚相手は共通点を持つ人、同士とする。
結婚は同士でなければ続かない。結婚とは男女が戸籍を同じにして、家系を形成すること。家族を演じるためには、何か対象が必要。
子どもでも考え方、趣味でも、夫婦がともに共有する何かを持つ同士であることが、結婚を続けていく上で大切になってくる。
こんな話はNG(P141)
話をしていて人から嫌がられる典型的な3つのNGパターン。
1・「誰々がこういった」とやたら人の話を引用する。
2・TVのコメンテーターのようなどこかで聞いたことがあることしか話さない。
3・「べき論」「理想論」などの評論家的な話。
仲良くなりたい人と合ったら(P161)
「この人と関係を深めたい!」という人と出会ったら、その日のうちに次に会う約束を決める。
「また機会があれば」「そのうち」など社交辞令を言っていると、大切な出会いの機会を失ってしまう。本当に会いたい人、関係を深めたい人とは、会っているときに次回のアポイントを決める。
30代後半から意識したいこと(P163)
会社(仕事)だけの生き方、人間関係は虚しい。
30代後半になったら、退職後のことも見据え、会社や仕事以外、肩書なしで付き合う人間関係を作っていく。遊びでも趣味でも何でもいいので、人間関係の幅を広げていく。
感想など
読み終えるとラインや付箋だらけになった本。
タイトルには「35歳」の「幸福論」とありますが、内容は人生全般、自分なりに幸せな生き方を考える内容になっていて、幸せはいろんなものが、多重に重なってできているものなんだなぁと考えさせられます。
生きるということを考えると、そこにはお金、仕事、人間関係、いろんな要素があって、「これだけ良ければ幸せ」という単純なものではありません。
特に、今のような現代社会、先はどうなるか分からなくて、「こうすれば人生上手くいく、こうすれば幸せに暮らせるんだ」という模範的な答えは既に失われてしまっています。
だからこそ、自分で「こうあるべき」という幸せ、生き方を求める必要があるのですが、それゆえに、生きづらさを感じてしまうのだと思います。
答えなき時代だからこそ、自分で答えを見つけ、作っていく。自分なりの幸福論を見つけていく。本書はきっと、その手助けになることでしょう。