『誰がアパレルを殺すのか』の読書感想 – アパレル業界が消費者に見捨てられた決定的理由

誰がアパレルを殺すのか

アパレル業界が衰退した本当の原因について。

杉原淳一、染原睦美著『誰がアパレルを殺すのか』(日経BP社)の読書感想です。

この本について

が進むアパレル業界について、その原因と将来の見通しを分析している本。

以下、本書の読書メモです。

サプライチェーンについて(P16)

洋服を作り、それが消費者まで届く流れをサプリチェーンと言う。服が店頭に並ぶまでの過程としては、

1・アパレル企業が商社やOEMメーカー経由で工場で服を作るように指示する

2・完成した洋服をアパレル企業が専門店に卸す

3・百貨店や直営店にて消費者に販売する

この3ステップとなる。

中国生産について(P34)

アパレル企業の多くは中国で服を生産しているが、その主なメリットは人件費。

それに加え、中国では糸やボタンなど、洋服作りに不可欠な素材を中国国内で入手することができる。

また、日本とも地理的に近いため、日本の売り場まで時間をかけずに商品を届けることができる。

アパレル企業が中国にて服の生産を行うのは、それなりの理由があるが、近年は中国の人件費が上昇し、生産コストが増加している。

そのためアパレル企業は、中国一極集中の弊害を受け、今後の対応を迫られている。

国内企業の生き残り戦略(P45)

アパレル企業の中国への生産委託によって、国内の服飾メーカーは大きなダメージを被った。

生き残りをかける国内企業は、日本の服飾メーカーにしかできない独自性を追求することによって、日本のアパレル企業から見捨てられたものの、海外の高級ブランドから高い評価を獲得している。

営業>販売(P199)

アパレルの売り場で大切なのは販売店員が「服を買う理由」になること。それができなければ、ネット通販によってリアル店舗は駆逐されてしまう。

そのためには、現在のアパレル企業の悪しき習慣である店員を使い捨てにするような雇用をやめること。

販売政策を自発的に考え、成果に応じた給料を得られる。店員自体がやる気と自主性を持てる仕組みを作ることが、今後のアパレル企業の復活に必要なこと。

自分の良さを相手に伝える(P212)

どんなに素晴らしいものを持っていたとしても、それが人に伝わらなければ意味がない。

日本の企業の中には素晴らしい技術を持っている会社はたくさんあるが、それが世界に伝わっていない。

自らの会社の良さを主張し、それを知ってもらう努力をすること。それがアパレルの新しい市場を作るための力になる。

感想など

なぜアパレル業界が先が見えない不況に陥っているのかを、様々な視点から多角的に解き明かしていく刺激的な本。

個人的にも「最近はなかなか欲しい服がないな」と感じていましたが、なぜそうなのか、この本を読んで納得。

例えば、どこのアパレルメーカーとは言いませんが、ここ10年で露骨に品質が悪くなった某ブランド。

もうそのメーカーは主力ブランドのライセンス打ち切りで経営危機を迎えているみたいですが、2000年台頭は、価格に納得できる品質の服でしたが、年々年々、価格と品質の乖離が進行。

全然買うことはなくなってしまいましたが、先日も百貨店で後継のブランドに足を運んだところ、「この服でこの値段取るの?」という感じ。

羊頭狗肉で、そりゃ店がガラガラなのも自然なことだな、と感じました。

この傾向はどこのアパレルも同じなのかもしれませんが、ここ10年で服の値段は上がっているのに、別に品質的に改善されているわけでもなく、ただ値段だけ上がっている。

ではなぜそんなおかしな状況になっているのか?ということが気になって本書を読んだわけですが、その理由に納得。

消費者がもはやブランドにだまされず、品質を見るようになっている。それなのに、品質と価格に見合わない羊頭狗肉的な商売をしていては売れなくて当然だろうと。

それと、アパレルの店員さんって、とても過酷な条件で働かされていたんですね。まさに使い捨てで、これじゃ業界が発展するのは難しいな、というのも素人目で理解できます。

個人的に服の提案をしてくれる店員さんの存在はとてもありがたい(ストーキングしてきたりウソ八百言ってくる店員さんは勘弁)と感じているので、アパレルの裏側を知ると、なんだか残念な気がします。

そんな感じで、なぜアパレル業界が不況なのか、そして、その裏側はどうなっているか。アパレル業界の未来は今後どうなるのか。

この本を読めばおおよその疑問がスッキリします。服に興味をお持ちの方は、この業界を知る上で、とても参考になると思います。

本はこちら