「認めたくない自分」を認めることに意味がある!『「影」の心理学』の読書感想

「影」の心理学―なぜ善人が悪事を為すのか

できることなら知りたくない、もう一人の自分の正体を向き合う意味とは。

ジェイムズ・ホリス著、神谷正光、青木聡訳『「影」の心理学―なぜ善人が悪事を為すのか』(コスモスライブラリー)の読書感想です。

この本について

ユング系心理学における「影」について考察する本。

影(シャドウ)とは

ユング心理学の概念。

影は自分が認識していない半身のようなもので、人生で生きてこなかったもうひとつの側面で、自分では認めたくないダークサイドのようなもの。

「これはダメ!」と否定してきたもの、「ありえない!」と受け入れられない現実、そういったものに影は顔を出す。

人が誰しも心のうちに抱える影があり、それを認め、受け入れていくことが人間的な成長につながるそうですが、この本では、自分の影に焦点を当て、影と付き合い、統合していくための考え方が分かりやすく述べられています。

以下、本書の読書メモです。

心について(P10)

人の心は自我が単一でコントロールできるような、単純なものではない。

心には様々な階層があり、それらは一見、自我のもとで正確に組織されているかのように思えるが、ときに自我の意識やコントロールを超えて、勝手に動き出すこともある。

はじめに、影とは(P11)

影とは自分自身を困惑させるもう一人の自分のこと。「こうありたい、こうあるべき」という自分の意識にはそぐわない、抑圧されたもう一人の自分のこと。

影はネガティブな側面がイメージされがちだが、ときに影のなかに、ポジティブな側面が隠れており、影と向き合い、統合することで、人格的成長が促される。

影を見つけたら(P27)

この行動は自分らしくない、こんな自分は自分じゃない。そんなときは影が内面で動き出しているとき。

影はいくら否定しても、表に顔を出す。

むしろ、否定すればしようとするほど、自分の存在を主張しだすので、影を見つけたときは、存在を否定せず、その姿をじっくり見る。

影が顔を出す場所(P30)

ある人のことが無性に気に食わない、どうしてもイライラしてしまうことがある。そんなときは人ではなく自分の意識にきっかけがあるかもしれない。

私たちは、合理化、投影などの心理的防衛機制によって、影の姿を見えにくくし、あえて「見まい」としてしまう。

人格的に成長するためには、影の存在を見落とさず、影を自分の中で引き受けなければいけない。

気に食わないことや不都合なこと、認めたくないことがあっても、それを否認せず、受け入れていく。それこそが、本当の意味で人格的な成長につながっていく

無意識のうちに避けていること(P86)

人生で自分が避けていることがあれば、そこには影がうごめいている。人生には、避けずに向き合うことで出会える一人の自分、新しい人生がある。

避けていることに向き合うことは、痛みや苦しみが伴うかもしれないが、避けているだけでは、決して見つけられない大切なものがある。

自分が避けているもの、不安を感じていることがあれば、それを否定せず、自分は何を避けているか、何に不安を感じているか、しっかり向き合う。

苦悩の先に、本当に大切な何かが見つかるかもしれない。

発達課題について(P162)

人にはそれぞれ、成長のための課題がある。

親には親の発達課題があり、親が自分の問題から逃げていると、親の問題が子供に降りかかってくる。経営者が自分の問題から逃げていると、経営者の問題が従業員に降り掛かってくる。

解決すべき問題があれば、逃げても逃げても追いかけてくる。

不快になるもの(P242)

どうしても嫌い、受け入れられない、拒絶してしまう。その気持ちの裏側には影がいる。嫌いなもの、拒絶するもの、もしかしたら、それらは自分が持っている要素があるのかもしれない。

影を受け入れること(P256)

最終的に、影を受け入れることは人格を統合することであり、自分自身を認め、受け入れること。

自分を受け入れられる人は、他の人を受け入れることができる。自分を受け入れられない人は、他の人を受けれいることができない。

感想など

ユング心理学の考え方は本当に興味深いなと思った本。

「影は自分が望まない姿で形作られているのだから、最も深く、最も手に負えない影は、私が一番避けたい姿、すなわち真の自分自身になることにおいて見つかるだろう」(P304)

という言葉とか、読んでいてビビビと来る何かがあります。

確かに、意識とか人格とか、自分で分かっているようで分からないことがたくさんあります。

普段の暮らしのなか、「え、なんで自分はこんなことをしたんだろう、こんなことを言ったのだろう」というときがあります。

それについて考えていると、「意識では気がつかなかったけど、自分の本心はこうだったんだな」と気がついたりします

私たちは、世の中に適応して生きていくため、いろんな仮面をかぶっていて、それがそのうち、仮面を本当の自分だと思い込んだりします。

でもどこかで、仮面ではない本当の自分がポロッと顔を出したりします。

そいつはもしかしたらものすごいイヤな奴で、自己中でわがままかもしれません。認めたくないような悪い何かを持っているかもしれません。「自分らしくないな」と否定したくなるかもしれません。

でも、そのことに気がつくと、そこから気がつける何かがあるのも確か。自分の生き方を大きく変えてしまう何かが見つかるかもしれません。

自分のなかに影を見つけたら否定するのではなく時間をかけて向き合っていく。多分、心からそれを受け入れられたとき、人として一皮むけることができるのでしょうね。

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