権力者の横顔が見える人間論集『インテリジェンス人間論』の読書感想

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)

橋本龍太郎終章やロシアのプーチン大統領、権力者の横顔をのぞく人間論集『インテリジェンス人間論』(新潮文庫)の読書感想です。

著者は、ロシア外交で活躍し、鈴木宗男事件で失脚した外交官の佐藤優さん。外交の最前線で活躍、権力者や官僚、権力闘争うずまく政治の世界を経験してきた佐藤さんの人間考察が本書の内容。

政治家などの権力者から宗教家、果てはスパイまで、様々な立場にいる人間を考察する刺激的な本です。

著者の深い知性に加え、魑魅魍魎が跋扈する権力の世界を直に見てきた経験から紡ぎだされる言葉に、どんどん引き込まれていきます。

「政治家であれ、官僚であれ、自らが目指す政策を実現するためには権力を必要とする。しかし、権力には魔物が潜んでいる。

潜んでいるというよりも、人間の内部にこの魔物を飼っていかなくてはならないのである。そして、この魔物を飼っている人たちは独自の磁場を作り出す。これは一種の阿修羅道である。

この阿修羅道で生き残るには二つの道しかない。第一の道は、自分自身が阿修羅になり、戦い自体に喜びを感じるようになることだ。〜略〜 第二の道は、ドストエフスキーが『カラマーゾフの兄弟』で描いた大審問官の道である。

〜略〜

私はほんものの政治とは、大審問官の道だと思う。ときには強い力を行使してでも、人類が生き残ることができるようにするために、自らの優しさを殺すことができる人間がほんものの政治家なのである。

愛と平和を実現するために、常に人々を騙し続けるのが政治家の業なのだと思う。」(P33〜37)

「イスラム原理主義、マルクス主義同様、私が信じるキリスト教思想も、基本的には「人殺し」を正当化する論理を含んでいる。だから思想を扱うこと殺人は隣り合わせにある。このことを自覚していない思想家は無責任だと思う。」(P319〜320)

このような具合に、グイグイと心をえぐられていきます。この世界を動かしていくのはどんな人達なのか、実際の姿はどうなのか、読後あれこれ想像をめぐらしてしまいます。

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