この世に理想郷は存在しない?『田舎暮らしに殺されない法』を読む

田舎暮らしに殺されない法 (朝日文庫)

「空気の汚い、人だらけの都会にはうんざりだ。最後の人生、環境の良い田舎で第二の人生を送りたい。」

「田舎なら自然がキレイで、そこで暮らす人々も良い人が多いに違いない。家も安く買えるし、思い切って田舎暮らしをしよう!」

そう思ったらまず読んでおきたい本がこちら。田舎暮らしの辛い現実を教えてくれる本、丸山健二著『田舎暮らしに殺されない法』(朝日文庫)の読書感想です。

内容について

団塊の世代の退職によって注目されるようになった田舎暮らし。

第二の人生を生きるため、環境の良い田舎で、伸び伸びと余生を送る、田舎暮らしという言葉には、そんな甘美で美しいイメージがありますが、現実はというと、そう甘いものでもないようです。

本書の著者は、田舎暮らし40年暦の田舎暮らし上級者。その著者は田舎暮らしについて「甘い夢を見るな、現実を見よ!」とバッサリ切り捨てます。

・田舎の自然の美しさは何を意味しているのか知っていますか?あなたは老後の老いた体で、厳しい生活環境で生きていけるのですか?下手をしたら、命を失うことになりますよ?大丈夫ですか?

・今、田舎では犯罪が増えていることを知っていますか?田舎暮らしをすれば、強盗も他人の問題でもなくなるのですよ?大丈夫ですか?

・田舎では都会のようにプライバシーは保てなくなりますよ。場所によっては、人間関係でひどく苦労しますよ?大丈夫ですか?

というような具合に、田舎暮らしの不都合な真実を「これでもか」と列挙してくれるのが本書です。

何かを始めるとき、それの良い面と悪い面を比較しておくのが、新しいことを始めるときの鉄則。

ネガティブな情報は、良薬は口に苦しで、どうしても避けてしまいがちなのが人の常。しかし、実際は、都合の悪い情報、耳の痛い情報ほど、しっかり確認しておくのが大切。

始めたあと、引き返すのは、始めるよりもたくさんの労力が必要になります。痛手だけ背負う事態は、何としても避けたいものです。

そこで、本書で田舎暮らしの現実を情報として知りつつ、それでもなお、田舎暮らしを実現したいかどうか、自分の覚悟を確認するのがこの本の有効の使い方。

田舎暮らしをするかどうか、判定するリトマス紙的な役割が、本書の何よりの価値です。

感想など

田舎暮らしというと、理想郷を見つけるような、甘い期待感を抱いてしまうのも自然なのかもしれません。

私も、「田舎暮らしをしたい」というほどではないのですが、個人的には、今住んでいる政令指定都市のような半分都会の街から引っ越して、

・海や山に囲まれた自然の豊かな景観がある。

・しかし車で10分くらいの場所にスーパーや本屋など、便利な商業施設がある。

このような町でのんびり暮らしたいと密かに思っています。

潮騒で目を覚まし、車などの生活音に煩わされず、のどかな場所でマイペースに仕事をする。そんな半隠居的、半隠者的な暮らしをしていきたいと思うこの頃。

そこで、ネットであれこれ、田舎の物件をサーチ(安い物件がたくさん見つかります)して、静かでのんびりした暮らしを夢見ています。

ただ、もしそれを実現するために行動するなら、とても慎重に動くと思います。なぜかというと、この本に書かれている田舎の実情は、私自身が少なからず経験しているからです。

都会と田舎は、ルールが違いますし、生活環境も違います。多分、一番難しいのは人間関係だと思います。

地域によっては、独特の事情のある場所もあって、それを知らず、美しい自然を目当てに引っ越すと、美しい自然とは真逆の、ドロドロとした田舎の実態に面食らうかもしれません。

それに、生活環境も慣れるまでは大変。公共交通機関も不便で、生活に車が必須になります。自分の体が動かなくなったとき、病院に通うのも大変です。

「田舎暮らしは理想の暮らしを実現できる夢の生活」というような幻想は見ず、あくまで現実主義で行くのが安全です。

この本にも書かれている通り、

・自然がキレイな場所→生活環境が厳しい、不便。

・田舎はアットホーム→人間関係が大変でプライバシーの確保が難しい。

というように、都会で暮らしても、田舎で暮らしても、それぞれメリット&デメリットがあります。結局はトレードオフの問題で、あれを優先すればこれがおろそかになってしまうようです。

ということで、生きているうちは、青い鳥を追いかけて理想郷を探すよりも、今の自分が暮らす環境の中、最善を求めて試行錯誤した方が良いのかもしれません。

田舎に理想郷を求め過ぎて、現実感覚がなくなってしまったら、この本でバランスを取るのが有効かもしれません。失敗してからでは遅いですからね。

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