人生を自分で選択するためのアドラー心理学の教え。
岸見一郎、古賀史健著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の読書感想です。
この本について
アドラー心理学を哲人と青年の会話形式でその主要要素を分かりやすく読者に伝える本。
「人から嫌われることこそ究極の自由である」
この言葉にピンと来たら、熟読する価値がある内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P5)
人はみな、同じ世界に住んでいるのではなく、自分が「世界とはこのようなものである」という意味付けをした主観的な世界に住んでいる。
つまり、人それぞれ世界の見え方は違う。誰もが皆、同じ世界観を共有しているわけではない。
過去は現在を規定しない(P26)
「過去にこんなことがあったから、今の自分はこうなっている」
これがいわゆるトラウマ理論だが、実際のところ、過去は現在を規定しない。
もし、本当に過去の因果が現在に色濃く影響を落とすなら、同じ経験をした人すべてが同じようにならなければおかしい。
何にせよ、過去の原因ばかりに目を向けている限り、決して現状は良くならない。過去がどうだからといって、そこにとらわれないこと。
自分の不幸は自分の責任(P45)
人は自らの目的に応じて理由や原因を生み出す。
今不幸にとらわれている人は、不幸な星の下に生まれたから不幸なのではない。何らかの理由があって、不幸を生み出している。
自分を更新していけば、不幸を選ぶことはやめることができる。
悩みを消し去る方法(P69)
人が生きていく上で味わう悩みのほとんどは人間関係をもとにしている。もし悩みをほんとうに消し去りたいのであれば、人がいない世界へ行くしかない。
この意味で、人から嫌われないこと、人から傷つけられないことを目的にしている限り、生きることはとてつもなくハードルが高い。
劣等感とは(P82)
劣等感=自分を変えないための言い訳。
・イケメンor美人でないから、結婚できない
・学歴がないから、成功できない
このように、劣等感を理由に今の自分を否定することによって、自分が変わることを拒否している。
これが劣等感の有害なところ。
人と敵対できる簡単な方法(P107)
何にたいしても、「自分は絶対正しい」と考えていれば簡単に周りの人と悪い関係を築くことができる。
つまり、孤立したり、ギスギスした人間関係を築きたいのであれば、自分はいつも正しくて、間違いなど犯さないと考えていれば良い。
愛を実感するとき(P116)
「私はこの人と一緒にいるとき、とても自由に振る舞うことができる」
この感覚こそが愛。
かっこつけたり必要以上に気を遣ったり、そういう面倒なことがなく、自然でのびのび振る舞える人と時間を過ごすことができる。
これこそが本当の愛。
人間関係の絶対原則(P135)
私たちは誰かに認められたり、誰かを喜ばすためにこの世に存在しているわけではない。だから誰かの期待を満たす必要などない。
誰かのことを気にする人生は自分の人生ではない。
誰かの承認を必要とし、その評価を絶対とするならば、結局は自分ではなく、他人の人生を生きることになる。
最終的な自由とは(P162)
自由=他人に嫌われること。人の目から自由になり、他者評価という楔から自分を解き放つ。これこそが究極の自由。
他人に貢献すること(P238)
誰かの役に立つことをする。それによって一番の利益享受者は自分でなければいけない。
誰かを喜ばして人からの評価を気にするとか、そういうことではない。自分を捨てて誰かの役に立つことでなく、人の役に立った結果、自分の価値を実感できる。
それこそが他者貢献の本質。
感想など
ベストセラーとしてブームになっていたことは知っていたものの、長らく読む気にならなかった本。
「ふと読んでみたい」と思って読んでみたところ、アドラー心理学がなぜブームになっているのか、その理由が分かった気がしました。
正直なところ、劣等コンプレックスの話とか、それはそうだよなと思うところがあった反面、目的論や権力云々の話など、一度読んだだけでは理解できない話が多数。
ただ、本書が伝えんとする自分の人生を生きるための姿勢については、感覚的に納得。
人の目を気にする人生は自分の人生ではない。人からどう思われようと、自分が生きたい道を生きる。それによって嫌われても仕方ない。なぜならそれが本当の自由だから。
まぁ現実問題、完全に「自由」に生きることは難しいかもしれませんが、しがらみから自分を解き放って、思うように生きられる。
それにはきっと代償もあるかもしれませんが、「コレが自分の人生なんだ!」という満足感、納得感は実感できるはず。
「嫌われても構わない」という態度は、選択肢の一つとしてとても重要なのかもしれません。
ということで、自分の人生を生きるということはどういうことなのか。
それを考えたくなったときは、この本の出番。
「自分の人生」という言葉に「ピン!」と来たら、一読をおすすめしたいと思います。