得をするより損したくない、これが人間心理の基本。
和田秀樹著『「損」を恐れるから失敗する』(PHP新書)の読書感想です。
この本について
「損」と「得」に人間はどう反応するのかを研究する行動経済学の本。
仕事や人間関係、経済や税金など、身近な事例をもとに、行動経済学について分かりやすく理解することができます。
以下、本書の読書メモです。
損失回避性とは(P21)
人は得よりも損に強く反応する。これを損失回避性と言う。
「損に強く反応する」という人間心理を知っておけば、仕事や人間関係、様々な場面でその知識を生かすことができる。
印象と記憶(P75)
人の印象は、最初と最後に強く残る。人に良い印象を与えたければ、別れ際など、最後に良い印象を与えられるように工夫する。
コンコルド効果について(P82)
先へ進んでも損が出るのは分かっている、けれどもったいなくてやめられない。そしてどんどん損を重ねてしまう。このような状態をコンコルド効果という。
人は損をすることを嫌い、今までお金をかけて取り組んできたことは、いかにそれが上手くいく見込みがなくても、もったいなくてやめられなくなってしまう。
節税もほどほどにする(P143)
儲かっている会社は、税金を払うのがもったいないがゆえに、経費を増やすために、ついついお金を使う傾向がある。
そうすれば確かに税金も減るが、内部留保が減ってしまう。すると結果的に経営が安定せず、含み資産が減ると債務超過になってしまう。
税金を抑えることも大事だが、税金で損したくないがゆえに経費を増やしすぎるのも損をする。経費はほどほどに、きちんと内部留保を残しておく。
消費税について(P152)
消費税は税金を納めているというより、損している感じが強い税金。
そのため、消費税は上げれば上げるほど、「損するからお金を使いたくない」という気持ちを刺激する。結果、消費も落ち込み、日本の景気も滞る。
この意味で、消費税はあまり良い税金とは言えない。
モテ男がプロの女性を口説く方法(P166)
クラブで女性を口説く場合、一度にお金を与えるのではなく、定期的にお金を与えて、「この人はこれくらいお金をくれる」と女性に依存心を植え付ける。
女性に依存心が芽生えてきたら、今度はお金をケチりだす。それによって女性は「今までもらえていたお金がもらえなくなる」と損を感じるようになるので、口説けるようになる。
ポイントは、「損をしたくない」という人の修正を理解すること。
まず定期的に与え、ある程度与えたら逆に与えないようにして「損をしたくない」という気持ちを刺激するのがコツ。
感想など
損失回避の心理とか、コンコルド効果とか、なるほど、人の心理はそんなふうに反応しているものなのかと分かりやすく読めた本。
専門書にありがちな難しい話ではなく、身近な話題をもとに行動経済学について説明している本なので、専門的な知識がなくても、分かりやすく読むことができました。
個人的に印象的だったのは人は得よりも損に反応するという心理。
それさえ理解できれば、なぜ人はコンコルド効果のように、
・「ムダだと分かっていてもやめられない」ことがあるのか?
・チャンスをフイにしてしまうような行動を取ってしまうのか?
など、人の非合理な行動について理解できます。
合理的に考えているようでも、そこにはいろんな穴がある。人間心理は、いろいろ面白いですね。