この本を読めば、世の中で勝つ人が、勝つべくして勝つことが分かる。
鈴木博毅著『戦略は歴史から学べ 3000年が教える勝者の絶対ルール』(ダイヤモンド社)の読書感想です。
この本について
古代ギリシャから現代の湾岸戦争まで、歴史を通じて現在を生きるための戦略思考を身につけていく本。
この本を読めば、歴史を学ぶことが人としての教養となるだけでなく、世の中を生き抜いていくための実践的な知識であることが分かります。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P7)
歴史=先人たちが生死をかけて編み上げてきた勝利の法則集。
歴史は勝者によって語られ、そして作られる。この意味で、歴史を学ぶことは勝者から勝つための法則を学ぶことと同じ。
だからこそ、賢者は歴史から学ぼうとする。
敗北する定石(P29)
世の中では、こうすれば敗北するという、お約束のパターンがある。それこそが、自分の強みを全く活かせない状況で戦いを挑むこと。
大切なのは、自分にどんな強みがあるのかを知ること。そして、その強みがどんな場面で最も発揮できるかを熟知すること。
同時に、どんな場面で自分の強みが活かされないのか。それを知ることによって、敗北を避けることができる。
デカくなる人の特徴(P58)
人でも組織でも、弱者から強者へ大きく成長していくにはパターンがある。
その定番のパターンとは、自分より弱いやつを一つ一つ潰していき吸収して、大きくなっていくこと。
そのさいは、周囲の敵を団結させずに、各個撃破できる状況を作ることが重要。
数の暴力という言葉があるように、小さい存在でもそれが団結すれば脅威となるが、分散していれば恐る恐るに足らず。
自分が大きくなるために大切なのは周囲の弱小勢力を一つ一つ吸収し、大きくなっていく。その繰り返しで、誰よりもどデカくなれる。
弱者が生き残る法(P65)
自分には才能もない。能力もない。資金もない。そんな状況でも、生き残ることはできる。成功することができる。
そのために参考にしたいのが、漢の高祖、劉邦。
世の中に出たときは40をこえたおっさん。格別な才能はなく、ライバルの項羽との戦いには負け続け何度も死ぬ危険があった。
しかし、最後には逆転勝利し、漢王朝を作った。
なぜ劉邦が勝者となったのか。それを学ぶことこそがまさに、弱者が逆転生き残りをする上で、大きな気づきを与えてくれる。
具体的に参考にすべきなのは、
1・自分より賢い人の話を素直に聞くこと。能力がある人を積極的に活用すること。
2・「勝てない」と分かっている強敵とは戦わず、逃げ続けたこと(雑魚専の徹底)。
3・手柄を立てた部下への報酬を惜しまなかったこと。
4・限界まで戦わず、逃げる必要があるときはまっさきに逃げ出したこと。
この4つのポイント。
そしてここに、弱者が生き残り、逆転するための秘訣が隠されている。
なぜ日本軍は負けたのか(P248)
第二次大戦における日本軍とアメリカ軍との決定な違いから、勝者と敗者の分かれ道が見える。
戦いに勝つべくして勝つためには、合理性を徹底する必要がある。
そこに、人の恣意性や派閥などの精神的要素が入り込むと、合理的な判断ができず、さらにあやまちを繰り返す。
それをしたのが旧日本軍であり、合理性を徹底したのがアメリカ軍だった。
国力等の違いはあるにしても、戦争における根本的な体制、システムの違いこそがある意味、勝者と敗者を分かつ一番大きな違いであった。
歴史が教える勝者の条件(P297)
結局、勝つべく人は勝ち、負けるべき人は負ける。これが歴史の教訓。
具体的に勝つべく人の特徴を分析すると、次の4つがその特徴となる。
1・局所的な有利を生かすことができる。
2・自分の強みの運用法(活かし方)を知っている。
3・現在の問題を発見し、その本質を理解できる。
4・新しい情報や知識を積極的に取り入れることができる。
感想など
読後はまさに、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉が浮かぶ本。
読書をして、古今東西の様々な本を読むと思うのですが、改めて、時代は変われど、結局人という存在、その本質的な部分については、おそらく昔と何一つ、変わっていないのではないか。
そんなことを感じています。
例えばブッダの『ブッダの真理のことば・感興のことば』を読み、愛欲の悩みが語られているのを発見したとき。
ルソーの『告白』を読み、駄目になってしまった恋の話を見つけたとき。そして、倉田百三の『愛と認識との出発』を女性を知ったときの魂の告白を読んだとき。
いつの時代も人は人。その本質的な部分は変わらず、だからこそ、いつの時代も人が悩み苦しむことは、同じであることが分かります。
この意味で、歴史を学ぶことはまさに人間について知ること。
歴史は強者によって作られた記録であり、この意味で歴史を学ぶことは勝者の作法を学ぶこと。だからこそ、「賢者は歴史に学ぶ」のです。
本書では、それぞれ歴史的に有名な出来事をもとに教訓を引き出す内容になっており、本書を一通りなぞって読んでいくだけでも、十分な学びを得ることができます。
歴史を教養としてではなく、実用的な知識として学びたい方は、本書がその導入に最適。
歴史とは何なのか。そこから何を学ぶのか。興味がわいた方は、ぜひ本書をそのきっかけにしてみてください。