クレームは突然やってくる。『学校崩壊と理不尽クレーム』を読む

学校崩壊と理不尽クレーム (集英社新書 455E)

学校現場が崩壊して公教育の質が低下した原因はこの問題にある?嶋崎政男著『学校崩壊と理不尽クレーム』(集英社新書)の読書感想です。

内容について

「モンスタペアレント」という理不尽な要求を主張する保護者の登場によって公教育が崩壊している現状と、学校に理不尽なクレームが寄せられる背景や問題点を分析した本。

この本では、主にモンペクレーマーを中心に扱い、クレーマーのタイプ、対応策などが細かくまとめられています。

この本を読むことで、非常識で自己中心的、理不尽なクレームを寄せる人々はどんな人達なのかを知ることができます。

以下、本書に気になった内容の要約です。

クレームの背景にある問題を探る(P14)

クレームはきちんと対応すべきだが、不当で悪質なクレームに対しては、毅然と対応するのが原則。

悪質クレーマーの三種の神器(P32)

悪質クレーマーは、こちらを「悪い者」扱いするため、周りを操作しようとするのが特徴。そのために、議員・人権関係・マスコミ、この三種の神器を活用してくる。

「人権」や「差別」を大声で主張してくるクレーマーはいろいろ対応が難しいは、業界問わず有名です。)

クレーマーが増えている背景(P57)

クレームの増加は1990年代中頃から。教師の権威の失墜、保護者のモラルの低下、ストレス社会、消費者心理の変化、原因はいろいろあるが、問題は、クレームを発生させる抑止力がなくなってしまったこと。

「これを言ってはまずいな」という抑止力がなくなってしまったため、「やったもん勝ち」に気付いたクレーマーが目立ち始めた。

なぜクレーマーが「やったもん勝ち」な行動を取るかというと、クレーマー自身がそのような価値観と特徴を持っているから。

特徴は次の2点。

1・クレーマーの多くが1980年代の校内暴力世代で、教師の無力さを目にしてきて、学校に対して権威を感じていない。

2・いわゆる新人類で、主張することは得意だが人からの批判は苦手で逆ギレする。「何をしても許される」という幼児的万能的が強い。

現代クレームの特徴(P83)

悪質クレームの特徴は、相手が反撃しない状況でクレームをつけてくるところ。そんな状況では「やったもん勝ち」がまかり通るため、ますますクレーマーが増長する。

「お客様は神さま」的な勘違いしているのがクレーマー。

保護者の養育態度とクレームの関係性(P128)

保護者が子どもをどのように育てるか、その養育的価値観によって、どんなクレームを言ってくるのかを調査したところ、親の養育態度とクレームに関係性があることが判明。

・溺愛型

子どもを溺愛するタイプの保護者のクレームは、「先日の運動会で我が子が2位だったが、1位にしてくれ」というような、非常識だが無害なクレームが特徴。

・ほったらかし

子どもをほったらかしにする保護者のクレームは、子どもが問題を起こしたときに、普段子どもをほったらかしにしている罪悪感から、子どもの悪行をやたらと弁護するクレーマーになる。

・過干渉&支配型

子どもを自分の思い通りに動かしたいがため、あれこれ子どもに干渉するタイプの保護者は、子どもが「良い子」であり、学校で保護者が思うような評価を受けている間のみ、教師から見ると「良い保護者」。

しかし、問題が起こったときは、態度がガラリと変わり、「良い我が子」が変わった原因探しを他に求め、対処がきついクレーマーに変化する。教師が仕事を辞める原因の多くが実はこのタイプの保護者とのトラブル。

クレーマーの10タイプ(P144)

1・問題を指摘するクレーマー

ありがたい人。こちらが気づかない問題点を指摘してくれる人。意見を大切にし、問題点を解決する。

2・子どもベッタリクレーマー

我が子可愛さのために、客観的な問題に気付かない困った人。「自分の子どもさえよければいい」という人。

3・人と関係を持ちたい寂しい系クレーマー

周囲から孤立or嫌われているため、誰かと関係を持ちたい人。奇抜の行動をして人の目を引きたい人や、あれこれ指摘してこちらと関係を持とうとする人がこのタイプ。

4・「俺はスゴイんだぞ」系のクレーマー

地域で力のある人や、会社の重役など、社会的地位が高かった人。「(俺は偉い人なのだから)きちんと俺の意見を取り入れろ」と密かに思って、あれこれ主張してくるタイプ。

5・神経過敏系クレーマー

温度や音、あらゆることに「過敏」なタイプ。

6・欲求不満系クレーマー

自分に不満やストレスがあって、それを学校側にぶつけてくるタイプ。仕事やお金のストレスを自分で解決できないため、代理行為として学校にクレームしてくる。

7・誰かを攻撃したいだけのクレーマー(悪質度の高いクレーマー)

愉快犯で悪質なタイプ。通り魔的なクレーマーで、クレームに理由も根拠もない。「誰かを攻撃できればそれでいい」というタイプ。

8・操作系クレーマー

クレーマー自身が精神的問題があり、周りを操作して、自分の意見を通そうとするやっかいなタイプ。弁護士や市議会議員、マスコミなど第三者を利用して、周囲の人間をコントロールしようとする。

管理人注

本書ではハッキリ書かれていませんが、自己愛性人格障害系のタイプのクレーマーのことかと思われます。

9・たかり系クレーマー

インネンをつけて金品を要求する恐喝犯罪系のクレーマー。きちんと言質を記録、問題が解決しない場合、恐喝罪の疑いがあるので、警察と連携する。

10・言いたいことがあるが、クレームを言えないタイプ(サイレントクレーマー)

最も多い常識的な人たち。問題を感じてはいるが、自分がクレーマー扱いされるかもしれないので言わない。もしくは学校側がクレームを言わせない雰囲気があるので黙っているタイプ。

クレーム問題は、一部のクレーマーの悪印象や問題度が高すぎて、「クレームを言う=クレーマー」というような悪い印象がある。しかし、問題はどこかにあり、クレームを言う人がすべて悪いわけではない

悪質なクレーマーと、常識的なクレーマー、その違いを理解しつつ、常識的なクレーマーの声にはきちんと耳をかたむけることが必要。

感想など

荒廃した公教育の現実問題が切実な本。

親族に教育関係者がいること&私自身も教職経験があるため、日常的に学校で起こる常識的に理解できない問題は耳に入ってきます。

この本に書かれているような、自己愛性人格障害を疑う人からの粘着行為やストーカー行為、クレーム行為は実際に目&耳にしているので、この本に書かれている事例は間違いなく事実なのだと思います。

学校へいちゃもんをつけて、校長への土下座要求や教員への金品のゆすりたかりをする「一線を越えた」人々を相手にするのは、並大抵なことではありません。

しかし、残念なことに、理不尽クレームに対する防衛手段も、現状では限界があります。学校のクレーマー対策も、結局は後手の戦法で、根本的な解決法ではありません。

ただ、現実的にそのような人たちを相手にしなければいけない現状、対処療法として、クレーマーの行動に対する対策を知ると知らないとでは大違い。

対策を知らないと、一方的にやられてしまい、問題解決が難しくなってしまいますので、「誠意や常識が通じない人がいる」ことを前提に、問題を大きくしないよう、適切な対策法は知っておきたいものです。

しかし、このような本を読むと、今の世の中、本当に難しいものだと思います。

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