地方創生は補助金に頼らず儲かる仕組みを作ること。
木下斉著『稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則』(NHK出版)の読書感想です。
『稼ぐまちが地方を変える』について
高校生時代から地域活性化事業に携わってきたという著者によるまちづくり論。
「地方創生」が叫ばれるなか、一体どうすれば地方は活性化するのか、どうやって利益を出し住民を豊かにしていくことができるのかなど、町おこしのヒントが満載です。
以下、本書の読書メモです。
補助金について(P28)
補助金は麻薬。そこに依存してしまえば、自分たち自ら考え、稼ぐ気概を失ってしまう。
結局、お金による支援は結局人をダメにする。地域を良くするどころか、災いの元になる。
自分>みんな(P34)
みんなに意見を聞いてもいい。しかしそれよりもっと大切なのは、自分の頭で考えて答えを出すこと。
自分で決めるからこそ、行動に責任が持てる。上手くいかないときも、途中で軌道修正ができる。
みんなが言うこと、納得していることを優先していると、どうしても自分で決めることができなくなる。それに、「誰かが何とかしてくれる」と無責任になってしまう。
結局、自分で考え行動し、責任を持つ。それが一番大事。
信用されるために(P56)
ビジネス相手を信用してもらうためには、言葉で理想やキレイゴトを語ってはダメ。
事業を作り、自分より先に相手に利益があることを実感してもらうことが大切。「こいつの仕事をすれば俺も儲かる」と納得してもらうことが大事。
そうすれば、まともな相手なら「俺だけ儲かっても申し訳ないから、あなたも利益を受けてくれ」と信頼関係ができ、Win-Winの関係が築ける。長く一緒にやっていける。
地方創生事業の鉄則10(P90)
地方を活性化させる事業を展開していく際の10の鉄則。
1・小さく始める
始めるなら少人数のグループで。最初から大勢を巻き込む必要はない。
2・補助金を当てにしない
補助金は麻薬。補助金が「自分たちでお金を稼ごう」という意欲をそぐ。
3・一蓮托生のパートナーを見つける
大切なのは心から共闘できるパートナーを持つこと。少人数でもいい、信用できて裏切らない、志を共にできる人と仕事をする。
4・全員の賛同を得ようとしない
大きなプロジェクトに取り組むときは、どうしても反対意見が出てくる。
全員の参加を得ることは現実的に難しいので、自分たちがやるべきことを自分たちで考え、責任を持って決断する。
5・先回り営業で利益を回収する
事業は営業優先。先にテナント営業をし、事業形態や払える家賃の予想を立ててから、改装予算を割り出す。
6・利益率にこだわる
儲けなくして事業の継続なし。経費削減して利益を伸ばす。
7・稼ぎを流失させない
地方創生で重要なのはいかに店の儲けが地域内で循環できるか。大手全国チェーンのお店を呼び込んで利益を出すのではなく、地域の人たちにお金が回るお店を作る。
8・最初から撤退ラインを決めておく
大切なのは引き際。「これだけやってダメなら撤退する」という引き際を、最初から決めておく。
ダメなときは、「いつか状況が良くなる」と甘い夢を見ず、改善方法を考えるか、それか潔く撤退する。
9・最初から専従者を雇わない
事業立ち上げ当初は従業員意識を持つ人を雇う必要はない。事業が安定し、仕組みが周り出した段階で雇えばいい。
10・お金のルールを厳格化する
事業にお金が必要。出資者全員が明確に理解できるルールを作り、不平等感を出さないこと。
感想など
どうすれば地方は活性していくのか。地方が町おこしで縮小社会をどう生き残っていくのか、これからの日本を生きるヒントが学べる本。
一番印象的だったのは補助金の話(補助金=麻薬=人をダメにする)。
もともと事業は自分たちがお金を出して始めるもの。自分で出すお金だから、使い方も慎重になります。
失敗したら全て自己責任で、お金もパァになってしまいます。だから必死にアイディアを出します。儲けを出すために真剣にならざるをえません。
でも、補助金の場合、自分の懐が痛むことはありません。
失敗しても痛みがない。そうなると、やっぱり自分でお金を出してビジネスをする人とは、意識が全然変わってくるんじゃないでしょうか。
それに、補助金と言ってももとは税金。
補助金が有効活用されて、上手く結果になっていればいいですが、それがバラマキで使われたり、一部の人たちだけが美味しい思いをするように使われるのはどうなのか。
そうなると、地方創生のカギは、上から税金をばらまいて地方振興を促すことではないと思ってしまいます。
地方創生で大切なのは行政主体ではなく、市民自らが稼ぐ力を持つこと。結局大切なのは、他力本願ではない、自助独立の気概なのかもしれませんね。