『運命の足音』の読書感想 – もし、人生が「与えられたもの」であるなら

運命の足音 (幻冬舎文庫)

人生に自由意志はどこまで通じるのか?

五木寛之著『運命の足音』(幻冬舎文庫)の読書感想です。

この本について

『大河の一滴』『他力』などで知られる作家の五木寛之さんの本。

運命をテーマにした本で、様々な視点から人の運命を考察。運命とは何なのか、生きることとは何なのか、深く考えさせられる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

直感について(P73)

人が決断で失敗するときは、自分の内側から湧き上がってくる声、直感を無視して、外部の情報に惑わされて決断するとき。

直感はアテになる。「何となく」嫌だと思うこと、「何となく」したくないこと、その感覚は案外正しい。

天寿について(P85)

人にはそれぞれ与えられた時間がある

どんなに健康に気を使おうとも、時が来ればそれまで。だからこそ、その与えられたときをムダにしない。

幸運と不運について(P97)

生きるか死ぬか、天国か地獄か、その分かれ道は紙一重。

人の幸運不運は数珠つなぎで、良いことは続けて起こるし、悪いことも続けて起こる。不運に確率論は通用せず、人生が辛いときは、大体ツイてないことが続いて起こる。

不運は起こるべくして起こるのか(P105)

不運が起こるとき、そこには仕組まれた複雑な要素が共同して作動している。不幸の原因は1つだけではなく、様々な要素が絡み合っている。

人間の性質について(P143)

人には「もっと、常に」と加速していこうとする性質がある。

だからお金をどれだけ儲けても、「もっと」欲しくなり、傲慢になり、場合によっては暴力的にもなる。

人にはそのような性質がもとからあるので、それに歯止めをかけるものが必要。

日本人の感覚を活かす(P178)

日本人は様々な文化を融通無碍、柔軟に取り入れてきた民族。

柔軟で様々な文化を取り入れることができる感性は、21世紀の今だからこそ意味がある。これからは日本人の感性が生きていくる時代になる。

努力には限界がある(P227)

人の努力には限界がある。

努力して何とかなること、どうにもならないことがある。「自分の努力で何もかも変えられる」という考え方には、やっぱり無理がある。

人は生まれながらにして様々な条件を付与されている

親、育つ環境、外見、そして潜在能力。これらの先天的な条件を無視して、何もかも自分の思う通りに変えることはできない。

特に、親との関係、影響力は一生続き、それが人の人生観に影響を与えていく。

自分が望んでも望まなくても、人は自分の好みとは違うものを背負って生きていく。そして、そこには運命がある。

運命について(P246)

人にはいろんな運命がある。

どんな両親のもとで生まれ育つのか、どんな兄弟を持つのか、これらは自分の意志では選べない、逆らえないもの。

また、どんな体型、外見を持つか、どんな思考、性格、能力を引き継ぐかも自分では選べない。無条件に人は祖父母、両親の影響を受けることになる。

生まれた時点のスタートライン、人には自分の意志とは無関係な生きていくための前提条件を与えられている。

これが運命があり、それは避けられない。

人は自分の意志に関わらずこの世の中に生まれ、先天的な条件を与えられて生まれてくる。このことを無視して運命を切り開いていこうとしても、そこには無理が生じてくる。

ある程度自分で変えていけるものもあるが、本質的なもの、変えられないものは、それ自体が運命であって、受け入れるほかない。

感想など

文章自体は読みやすいのですが、「重い」感情というか、そういうものが伝わってくる本でした。

本の冒頭から、母親をソ連兵に殺された経験や、引き上げ体験など、生きることに続いて考えさせられる話が続き、引き込まれるように本の中へ。

読後には、「生きることは何なんだろうか、人の人生は何なんだろうか」と自問自答。特に、本書の運命についての考え方は、腑に落ちるというか、自然と納得できた気がします。

人は生まれながらにして自由な存在ではなくて、生まれた時点で、ある程度、できること、できないことが決っているのかもしれない。

進む方向も、就く仕事も、関わる人も、もしかしたらある程度決っているのかもしれない。

努力で変えられることもあるけど、本質的な方向性は決まっていて、その意味で、人は与えられた運命からは逃れることはできないかもしれない。

そんなことを考えると、逆に、与えられた条件や境遇に何か意味があるように思えてきます

人生は「こう進むべき」道があって、もしかしたら、その道がどんな道であれ、その道を歩むことに意味があるのかもしれません。

「自分の人生がある程度決っている」なんて、嫌な感じがしないこともないですが、自分の与えられた条件、環境を見つめなおしてみると、もしかしたら、意味が見つかるのかもしれません。

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