人生挫折や失敗、どんなことがあったとしても、それらはなんとか解決できる。
ヘルマン・ヘッセ著『地獄は克服できる』(草思社)の読書感想です。
この本について
苦しみやストレス、悩みをテーマにした、ヘッセのエッセイ集。
人生で何度も挫折を繰り返したヘッセが、どのように苦しみを乗り越えて克服してきたのかが、体験的に語られています。
「小さな愉しみを大切にせよ」(P10)
「逆境のときこそ、人の本性が現れる」(P41)
「健康な人ほどささいな原因で体を壊す。普段から苦しんでいる人は、強い。苦労が人を強くして、鍛えるのだから」(P50)
「幸せなんて追うものじゃない、幸せを追っているうちは、それが手に入っても決してそれが分からない」(P77)
「地獄にあえて向かえ。そうすれば地獄は克服できる」(P119)
など、何度も読み直したくなる文章が満載。
挫折や苦しみを乗り越えるにはどうすればいいのか、この本から悩みを和らげるヒントが見つかるかも。
感想など
こういうヘッセの本は本当にいいな、と思う本。
失敗続き、挫折続きの人生を送ってきたヘッセだからこそ、その言葉には深い重みがあって、1ページ1ページ、ゆっくりじっくり楽しめます。
個人的に好きなのは「幸福」(P77)という詩。
おまえが幸福を追いかけているかぎり
たとえ最も好ましいものを手に入れても
おまえは幸福になれる段階に来ていない
おまえが失ったものを嘆き
いろいろな目標をもち あくせくしているかぎり
おまえは平和の何たるかを知らないのだ
おまえがすべての望みをあきらめて
もはや目標も欲求も忘れ
幸福という題目を唱えなくなったときはじめて
あふれるほどの出来事ももうおまえの心に届かず
おまえの魂は安らぐのだ
ヘッセ自身、仕事の挫折やうつ病、不眠、悩み多き人生を送った孤高の作家(というイメージ)ですが、ヘッセの文章はどこか優しくて、大らかです。
人生ときに、いろいろ昔のことを考えたり、これからのこと、今の悩みを考えて頭から離れないときがあったりしますが、それでもそれはそれでよくて、悩むことに意味がある。
人生に打ちのめされてもいい、打ちのめされる覚悟を持ってこそ、自分の人生に意味がある。ポジティブ思考とは違うけれど、読んでいて心に響く言葉がたくさん見つかります。
文体が固く、気楽に読める本ではないですが、ヘッセの文章って、ふと何度も読み返したくなる何かがあります。
こういう本と出会えると、本当に読書っていいですね。