人は進化論から離れられない?『不愉快なことには理由がある』を読んで

不愉快なことには理由がある

人間の感情(幸せや憎しみ、喜びなど)は科学的に説明がつく!?政治や経済、戦争などすら、理由がある?それを考察するのが本書。進化論をベースとした刺激的な本です。

以下、本書の内容と考察です。

プロローグ

・リチャード・ドーキンス『進化する遺伝子』から(P19〜21)

人は遺伝子を運ぶ乗り物に過ぎない。環境に適応し、変化を生き残った優れたものだけが、次世代に遺伝子を運ぶことができるから。

人の行動も、遺伝子を運ぶプログラムによって、動かされている。人は、遺伝子をより多く、効率的に残そうと行動する。

例)母親の兄弟姉妹の養育。新しい兄弟が生まれれば、すでにいるこどもの扱いは邪見になる。弱い乳幼児を保護し、遺伝子を絶やさないため。

・生き残るヒントは知能(P23)

生き残る生物は、行動をするときに「〜したらどうなるか?」というシュミレーションを行う。これにより、配偶者獲得や、敵から身を守ることができる。シュミレーション行動は、知能の働きによる。

・お金は権力とつながる(P25)

お金=貸し、信頼の証。だからこそ、お金をたくさん持つものは、自然と権力を得ていく。そして、子孫を残せる確率も高くなる。それは富と権力を持つ支配者のハーレム制度(たくさんの女性を持つ=たくさんの子孫を残せる)を見れば明白。

・人の可能性は限られている?(P40)

遺伝の影響を強く受けるのは能力。音程や音楽、執筆、数学、スポーツなどの能力の遺伝の影響はなんと80%におよぶ。音楽家になれるか、小説家になれるか、スポーツ選手になれるかは、結局親次第に?

パート1 政治

・政治家の本性

権力者になり、頂点に立てるのは1人。当然、権力争いが起こる。これは人もチンパンジーも同じ。だからこそ、政治家はライバルに嫉妬し、徹底的におとしめ、排除しようとする。『君主論』で知られるマキャベリの「ライバルを強化する要因を作るものは滅びる」という主張は正しい。

・市民が真実を知るためには独裁者も必要(P79〜80)

福沢諭吉が『文明論之概略』で述べたようように、必ずしも善人が善をなすわけではなく、悪人が善をなすために必要なこともある。

阿久根市長は「独裁者」として糾弾されたが、彼の行動によって、地方公務員や地方議員の非合理な給与体系が市民に分かりやすく伝わった。それまでは、首長と地元議会がズブズブの関係だったので、「不都合な話」は表に出なかった。

パート2 経済

・すべての国が関税を撤廃すべき?(P128〜129)

自由貿易の問題は「なわばり」の問題。利益云々の話ではなく、結局は自分の領域に他者が入ってくるのを恐れている。TPPの問題は江戸末期の「開国か鎖国か?」の議論と同じ。人の本質は変わらない。

パート3 社会

・日本人は大家族社会に戻る?(P159〜161)

若者の低賃金化、地位の低下が進む→収入が不安定になるので、一人で暮らせなくなるし、社会保障も老人世代に比べて悪い→親と同居などの「パラサイト化」(合理的な選択で自然)が進む→同じような集団がくっつき、大家族化していく。

核家族はお金がかかる。今の若者の実情には合っていない家族形態。)

・なぜいじめが公立校で起こるのか。私立は?(P176)

公立も私立も、生徒や教師の質は同じ。問題なのは、公立と私立は仕組みが違うこと。

公立校は仕組み的に秩序を害するものを処罰的ない。結果的に悪い奴が好き勝手するようになり、環境がますます悪くなってしまう(生徒の悪い行動を実質的に教師が止められない)。

私立は、私企業と同じ。評判を守るため、適切な対応ができる。悪いことをする生徒を排除できるので、学校の秩序が守られ、公立校で起こる「最悪の事態」まで発展しにくい仕組みがある。

いじめをなくすには?

目には目を、悪い行動をする生徒は問答無用で退学にすればOK。教育には限界があり、仕組みを作らないとダメ。ゼロトレランス。

私も公立校で教師経験があるので、この意見には100%賛成です。中学生にもなって、九九ができない、漢字が書けない、読めないで授業放棄してほかの生徒の邪魔やいじめ行為をする生徒は、別の教育機関で学ばせるのが一番だと思います。)

Part4 生活

・男と女は分かり合えない?(P189)

男と女はそもそも違う。生殖活動も違う。男は自らの遺伝子をばらまき、女は1つの遺伝子を大切に受け入れる仕組みになっている。当然、そのための行動が違うので、男女は対立する。純愛やロマンチックラブは女性の思想。

・なぜAKBは48なのか?57ではダメなの?(P200〜201)

人には心地よく感じる人数がある。それは、人類が昔から集団として生きてきたものによる。アイドルの基本形である5人は兄弟姉妹の単位。50は家族を含む親族のまとまった単位。

縄文時代から人はグループを作り、生存のための活動をしてきた。50という数字は、そのときの人数。5、50という数字は、家族や親族といった、人類が生き延びるために適応してきた人間集団の数。

・人の意思には限りがある?(P213〜214)

ダイエットに成功するとほかのことがダメになる。これは人の意思がどこか強くなると、どこか緩むから。

感想など

人は遺伝子で行動が決まっている、そもそも、人間という動物的なものによって、行動を受けている。そんなことが分かる本です。

人には知能があり、勉強し、進歩することができる一方、変えられないサガと呼べるものも。例えば、私は男なので、女性のようにはなれません。

男性女性、考え方の違いは生物としての生まれつきのもの。女性は男のようにマッチョにはなれません。男性は女性のようにはなれません。

このように、ある程度決まっているものがあります。それは、人という集団の行為である政治や経済にも影響しています。

基本的に、この本は文化人類学や進化論をもとに書かれていて、「人間」を科学的に、客観的に理解しようとするものです。そのため、読むと不快になるような「不愉快」な話も確かにあります。

しかし、世の中は魑魅魍魎が渦巻く世界。その世界を生き抜くために、「不都合な真実」を知ることは、有益な体験になるかもしれませんよ。

「進化の産物である私たちは、進化によって与えられた制約の外側に理想社会を築くことはできません。だとすれば、現代の進化論の不愉快な知見をすべて受け入れたうえで、人生を設計し、社会をつくっていくしかないのです。」(P235)

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