近未来社会の格差闘争を描くハリウッド映画『エリジウム』を観る

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もし、地球環境が荒れて、一部の金持ちだけが理想郷を作って暮らす世界が誕生したら?

マット・デイモン&ジョディ・フォスター主演の近未来映画『エリジウム』(2013年)の感想です。

あらすじ

時は今から40年後の2050年代。地球は環境が荒れ果てていた。

地球の一部の富裕層は、宇宙にエリジウムと呼ばれる理想郷コロニーを建設。環境、医療、ともに最先端の世界を作り出し、不老不死、人類の夢を実現していた。

一方、地上に残された多くの人たちは、ロクな医療も受けることができず、荒れた地球環境で、地を這うような暮らしをしていた。

彼らの中にはエリジウムに行くことを夢見、密入国を企むものもいた。エリジウムを守る人々は、法律を作り、密入国者を排除していた。

そんななか、LAで暮らす工場労働者のマックス(マット・デイモン)は、労働中、大怪我を負い、余命5日を宣告されてしまう。マックスは、運命を受け入れず、エリジウムを目指す・・・。

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感想など

マット・デイモン、ジョディ・フォスターなど知性派ハリウッドスター主演の近未来映画。

この映画の製作費に莫大なお金がかかっているそうですが、街やエリジウムのCGは圧巻。今の世界も、あと数十年したら、街の様子がガラリと変わっていくのかもしれません。

ところで、この映画のテーマはおそらく「持つもの」と「持たざるもの」、それらの格差を近未来社会という舞台設定で描いた映画のように思います。

主人公のマックスは地球の工場で働く労働者であり、彼は仕事中、事故に逢います。事故にあったときも、工場の管理者(スーツを着た小奇麗な男)から、「汚い、どけろ」というような、ゴミに近い扱いを受けています。

つまり、地球の労働者は、エリジウムを管理しているような「持つもの」にとって、ゴミのような存在として扱われています。

大怪我をしたマックスも、本来なら、エリジウムの医療によって命が助かるのですが、地球は持たざるものが暮らすところ。まともな医療も受けることができません。地球にいては、マックスは生きることができません。

そこで彼は、エリジウムに密入国を企てることになりますが、この構図は、今世界で起きている状況を模したものに他なりません。

アメリカの密入国労働者の問題(この映画でもメキシコ系が労働者としてたくさん登場します)、1%の持つものと99%の持たざるもの、見方によっては、非常に現実的な内容になっています。

もちろん、これは映画の話なので、「持つもの=悪い」「持たないもの=良い」というように単純化されがちなところはお約束

密入国者は安い賃金で労働することで、そこで暮らす人々の仕事を奪う側面もあり、実際の世界では、白黒や善悪をつけがたい、難しい問題です。

日本も、移民問題が議論されていますが、みんながみんな満足するのはなかなか難しい問題なのかもしれません。