『ちょっと今から仕事やめてくる 』の読書感想 – 仕事は辛い、だけどもっと辛いのは

ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)

全力で逃げる、人生をムダにしないために。

北川恵海著『ちょっと今から仕事やめてくる 』(メディアワークス文庫)の読書感想です。

この本について

ブラック企業に勤める若者の人生再生を描く物語。

主人公の隆はそこそこの大学を卒業、中堅の印刷会社に就職。入社当時はやる気と希望があったものの、ブラック企業に勤務、毎日仕事漬けの日々。

入社半年を過ぎたものの、

「人は何のために働くのかー入社して三ヶ月ほどは、そればかり考えていた。けれどもう、考える気すら起こらなくなった。辞めれられないなら働くしかない。余計なことは関係ない。ただひたすらに、一週間が過ぎるのを待つだけ」(P10)

と、サラリーマン生活の現実に絶望しています。

そんなある日、隆は疲れて心身衰弱。駅のプラットフォームで無意識的に自殺しようとしたところ、ヤマモトという、小学校時代の友人に助けられます。

ヤマモトはニートのような暮らしをしているものの、やけに楽しげで、人生を楽しんでいるかのよう。そんなヤマモトに影響を受け、隆は少しづつ変化していきますが・・・。

以下ネタバレがあります

ヤマモトという男を不思議に感じた隆はネットで名前を調べると、なんと数年前にブラック企業勤めで苦しみ自殺した青年。

「ヤマモトは幽霊なのか?」と気にしつつ、会社では仕事をミス(実は隆のミスではなく、隆の手柄を嫉妬した先輩に意図的にハメられてしまった)、進退窮まっていきます。

ヤマモトのことを調べるなか、隆はヤマモトの母親と接触、「無理なこと、どうしようもなければ逃げていいんだよ」ということを教わり、隆を助けてくれていたのは、自殺した青年の弟であることが判明。

ヤマモトの母と弟に励まされた隆の気持ちは固まり、隆は退職を決意。会社でさんざん隆を罵倒した部長に言うべきことを言い、隆は人生をやり直すため、会社を後にします。

感想など

「仕事は辛い、だけど辛いだけの仕事はおかしい」

その当たり前のことを思い出せる話。

小説はいわゆるブラック企業勤めの若者の苦しみと再生を描いた話で、多分、隆のような経験をしている若者は、たくさんいるのではないでしょうか。

会社に就職した。でも会社の人間関係は終わっていて、毎日罵倒されたり、仕事の手柄を横取りされたり、社内政治でハメられたり、日々が辛い。

学校を出て就職する。働くのはこんなに大変なのかと悩みつつ、今の暮らしがおかしいと感じてしまう。こんな日々がずっと続くのかと思うと、憂鬱になってしまう。

多分、初めての就職で難しいのは、今上手くいっていないのは、周囲から罵倒されるのは、自分の努力がダメなのか、それとも、環境自体がおかしいのか、その見極めが難しいことだと思います。

社会経験を積んでいろんな職場を見ていれば、「ココはどうもおかしいぞ」ということがすぐに分かりますが、新社会人になったばかりの状態のときは、ダメな環境を見抜くのは難しいかも。

そこで、「上司から怒られるのは自分がダメなせいだ」とか、真面目な人ほど悩んでしまうのですが、ダメな職場というのは、働く人がダメになってしまう、構造的な問題があるように思います。

なので、個人が頑張る頑張らない以上、誰かの犠牲上等で、組織が回っているような環境は、努力云々、根性論ではどうにもなりません。

人生、踏ん張るとき、頑張るとき、我慢が必要なときがあるのはもちろんですが、やっぱり限度があります。

ブラック企業の問題があるように、そこに関わってしまうと人生を台無しにしてしまうダメな環境があります。そういう場所でしなくていい我慢してしまうと、自分の人生が破壊されてしまいます。

もし、運悪く、大学を出て最初にそんな会社に入ってしまったらどうするか?

ここが悩みどころなのかもしれませんが、多分、隆のように、「すぐに辞めたら次が見つからなくなる」と頑張って勤めるものの追いつめられてしまう前に、逃げ出すのが一番かも。

おかしいことはおかしい、その感覚があるうち、心身が元気なうちに、再起を測る。そうすると、人生、思った以上にいろんな生き方があることを知ります。

仕事が辛い、どうしようもない。

そんなときは、この小説を読むと、何か気づくことがあるかも。

本はこちら

ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)