短い言葉に人間世界の真実を凝縮。『魂の錬金術』を読む

魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集

労働者として世界を見、自己教育によって真実を知る。エリック・ホッファー著『魂の錬金術』(作品社)の読書感想です。

内容について

沖仲仕(おきなかせ=湾岸労働者のこと)の哲学者として知られるエリック・ホッファーの箴言集がこちら。

この本はアフォリズムと呼ばれる短文形式の哲学書。哲学書というと難しく意味不明な言葉が多い印象がありますが、この本は、難しくチンプンカンプンな表現はあまりなくて、とても読みやすいです。

アフォリズムとは

文学や哲学における形式の一つ。人間に対する観察や思想を、短い言葉で、的確、皮肉に表現しているのが特徴。

なぜこんなにも分かりやすい文章なのに深みがあるのか、その理由はエリック・ホッファーの経歴を知り納得。

エリック・ホッファーは、世紀の学校教育を受けず、労働者として働きつつ、労働の合間の図書館通いによって、独自の哲学を生み出した哲学者。

労働者として働く傍ら、自ら学び、自ら疑問を追求していった哲学者で、大学などの機関で哲学を勉強した人ではありません。

労働者として現実世界を知っているため、言葉には哲学があると同時に、リアリズムを感じさせます。まるで、マキャベリを読んでいるような、現実世界の不都合な真実が、短い文章に凝縮されています。

このような具合です。

「身を焦がす不平不満というものは、その原因が何であれ、結局、自分自身に対する不満である。」(P8)

「自尊心に支えられているときだけ、個人は精神の均衡を保ちうる。自尊心の保持は、個人のあらゆる力と内面の資源を必要とする不断の作業である。われわれは、日々新たに自らの価値を証明し、自己の存在を理由づけねばならない。」(P21)

「プライドを与えてやれ。そうすれば、人びとはパンと水だけで生き、自分たちの搾取者をたたえ、彼らのために死をも厭わないだろう。自己放棄とは、一種の物々交換である。われわれは、人間の尊厳の感覚、判断力、道徳的・審美的感覚を、プライドと引き換えに放棄する。」(P25)

パッとページを開いただけでも、どんどん名言が飛び出てきます。

感想など

正直、この本を読んだときは衝撃を覚えました。

短い言葉のなかに、世の中の事実、あまり表では書かれない&語られない人間の本質的な姿や社会の姿が、ストレートかつ誠実に書かれています。

しかも、言葉が表現している内容のエグさが、エグさと感じないような知性的な表現で書かれているので、読む方も反発を感じず、冷静に読むことができます。

読み方によっては「イヤな人」のように思えるかもしれませんが、個人的にはエリック・ホッファーの少し覚めたような、社会や人に対する距離を置いた考え方は共感できます。

暑すぎる生き方、夢や理想にヒャッハーする考え方が苦手な方は、エリック・ホッファーの考え方に共感できると思います。

ともかく、個人的にはダイレクトに心に響いた本でした。

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