『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』の読書感想 – 日本人が勤勉なのは本当?

イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」 (講談社+α新書)

日本を読み解くキーワードは「面倒くさい」?

デービッド・アトキンソン著『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』(講談社)の読書感想です。

この本について

元ゴールドマン・サックスで日本の文化財を保存修理する小西美術工藝社の社長、デービッド・アトキンソンさんによる日本論。

本書は元アナリストという視点から、数字など客観的なデータで日本を分析していく日本論で、「日本はこういうところがあるのかぁ」と目からうろこが落ちる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

日本の会社の問題は経営者の問題?(P68)

日本は一人当たりのGDPが低く、労働効率、仕事の進め方が良い社会とは言えない。

その原因は、日本人労働者ではなく、経営者の問題。

日本人は、一般労働者は勤勉でしっかり働くが、一般労働者が真面目に働く分、経営者が鍛えられず、しかるべきリーダーシップを発揮できていない。

アメリカは日本とは逆で、一般労働者が勤勉でなく、経営者が優秀。アメリカは一般労働者がきちんと働かないので、その分、経営者が鍛えられ、優秀になる。

数字の必要性(P79)

日本社会は、問題をはっきりさせず、あいまいにさせておきたいところがある。

問題をはっきりさせると、それに縛られてしまうため、数値目標など、明確かつ具体的なものは、避けられる傾向にある。

しかし、国や会社など、組織を運営していくためには、客観的で具体的なものを指標に運営していく必要がある。そのために、数字はとても大切。

数字は尺度で明確なもの。何を基準とするのか、尺度とするのか。数字はそれを明確に示してくれる。

日本を読み解くキーワード(P89)

日本では、ムダな作業をダラダラして、非効率的に物事が進んでいく傾向があるが、その原因は経営層の問題であり、「効率の良くない方法」を選んでいるから。

なぜ経営層が「効率の良くない方法」を選んでいるのか、その理由を読み解くカギは「面倒くさい」という言葉。

仕事は面倒を解決することだが、日本人は問題を明確化させ、細々としたことをはっきり解決することが嫌う。

問題を明確化させること、細々としたことをはっきり解決していくことは「面倒くさい」。だから問題をそのままに、あいまいにしておく。

終身雇用の根本にあるもの(P103)

日本の高度経済成長とともにあった終身雇用というシステムについて。

日本が順調に成長していた高度経済成長期、日本の経営者は、社員を正社員として雇用し、家族のように扱うことで、社員を団結させ、経済活動を進めていった。

終身雇用というシステムが生まれた理由について、「社員を家族のように扱う」という一部の経営者の哲学がある一方、本質的な部分では、日本人の面倒くさいことを避ける習性もある

働く労働者の側として、いちいち自分の実力や魅力を会社にPRするのは面倒くさい。一度入社した会社にずっと勤めれば、転職の面倒を避けれる。

会社側としても、労働者がコロコロ変わってはその都度採用の手間が生まれるので面倒くさい。それなら、社員をずっと雇うほうが面倒くさくない。

終身雇用は「日本人の勤勉さや真面目さの礎」という理由付けがされるが、実際は違う。会社側も社員側も、終身雇用は面倒を避けるという利害が一致したシステムだった。

「面倒くさい」を避ける理由(P114)

日本人が面倒くさいことを避ける理由は、余計な衝突を避け、皆が円滑に過ごすためだった。

終身雇用という制度のなか、人々は一致団結し、コツコツ働き成長していく。このなか、組織のあり方や経営者の質を正す「面倒くさい」ことは避けられたが、硬度成長期には問題にならなかった。

ところが、バブルの崩壊により環境が変化。「面倒くさい」を避ける戦略が上手くいかなくなった。

日本の足し算文化(P156)

日本は足し算文化。古きものの上に新しいものを足していく文化。結果、古いものと新しいものが共存、独特の文化が生まれている。

古いものはきちんと残り、新しいものがどんどん追加されていく、ここに日本の良さがある。「古いものが残っている」ということは、世界的に見て、大きな強みになる。

日本人は個人主義(P179)

海外では、日本人は単一民族で協調性のある民族だと思われていてるが、日本人は個人主義が強い民族

「自分の庭はキレイにするが他人の庭には無頓着」な傾向があり、街並み、マナー、様々なところに日本人の個人主義的なところが出ている。

感想など

日本についての客観的な見方が新鮮に感じる本。

昔、大学で日本文化とアメリカ文化を比較する講義があったのですが、その講義を担当していたアメリカ人(だったはず)の先生が、「日本人は集団主義のように思われているが、個人主義が強い民族だ」という話をしていました。

一般的に、日本人は周囲の和を乱すことを嫌うグループ主義者のように思われていますが、実際は我が強くて、個性に関しては強いこだわりを持っている個人主義的な民族。

一方、アメリカ人は自己主張が強い個人主義のように思われるものの、実は周囲と一体化することを望んでいるグループ主義者で、周囲の空気に流されやすい国民。そんな話でした。

『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』でも同じようなことが書かれていて、個人的にも、「やっぱり日本人は個人主義が強いのでは?」と感じていたので、頷きながらこの本を読んでしまいました。

少しクールで辛口なところもあるかもしれませんが、日本について、「こんなところがあるかも!」と勉強になると思います。

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