会社人間として頑張ってきた。しかし、その忠誠は報われず、様々なものを失った。
エリートサラリーマンが失職を機会に自分の人生を見つめ直すヒューマン・ドラマ、『カンパニー・メン』(2010年)の感想です。
あらすじ
GTX社で働くセールスマネージャーのボビー(ベン・アフレック)は典型的な会社人間。仕事一筋、12年もの歳月を会社のためにささげてきた。
しかし、GTX社は不況によって株価が低下。他社による企業買収を防ぐため、大規模なリストラを実施。会社に忠誠を尽くしてきたボビーも、リストラされてしまう。
それまで家族に裕福な生活をさせてきたボビーだが、リストラされた現実を受け入れることができず、贅沢な生活を辞めることができない。
義兄の助けも断り、家族にも八つ当たり。人生に悩むボビーだが、やがて大切なことに気がつくようになる・・・。
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感想など
リストラされた男が人生を取り戻していく様を描いた感動のヒューマン・ドラマ。
ベン・アフレックやクリス・クーパー、ケビン・コスナー、そしてトミー・リー・ジョーンズ。ハリウッドの名だたる俳優が出演しており、その名演が光ります。
キャストの豪華さに目が行きますが、2010年代のハリウッドのヒューマンドラマの中でも、この映画の物語はかなり良いです。
「人生のピンチ、いかに自分の考え方や価値観を変えていくのか?」というところをテーマにして、我々日本人にも、生き方や人生観を考える上で、とても良いきっかけになると思います。
この映画は、主に二人の人物がメインです。一人はベン・アフレック演じるセールスマンのボビー。もう一人はトミー・リー・ジョーンズ演じる会社役員のジーン。
ベン・アフレック演じるボビーは、いわゆる勝ち組的な暮らし(世帯収入で言えば年収1,000万以上)をしていて、良い家に良い車、おしゃれな服と、物質主義的な傾向が強い人物。MBAも持つ、高学歴高収入の男です。
ところが、リストラで収入0円になっても、生活水準を下げることができず、今までの自分の価値観を変えることができずにいます。無職で看護師の妻のヒモになったという現実を、受け入れることができません。
「成功しているイメージが大切なんだ」とばかり、見栄を貼るのは相変わらず。しかし、本人も職を失って苦しい。だからこそ、家族に対しても辛くあたってしまう。なかなか複雑です。
一方、トミー・リー・ジョーンズ演じるジーン。
ジーンはGTX社の大物で、「リストラを会社のためにならない!」とリストラに反対して立ち上がり、会社の立て直しに奮闘。
しかし、真実は残酷で、実はジーンもリストラ対象に。結局リストラされて、「自分の会社への思いは何だったのか」と唖然としてしまいます。
ボビーとジーン、「オレは今まで信じていたのに、こんな結果になってしまった。これからどうすればいいのだろう?」という男達が、それまでの自分の価値観を見つめ直し、そこから立ち上がっていくのがこの映画の見どころです。
全体的に淡々と物語が進んでいく静かな映画ですが、映画の最後、ボビーが新しい生き方に出会う場面は、何とも言えない、ジワっとした感動があります。
多分、何年も生きていると、自分の人生観、価値観が疑わしくなるときがくるものかもしれません。映画の世界だけでなく、現実問題、失業や病気など、人生のピンチはいつやってくるか分かりません。
ただ、考えようによっては、人生のピンチというのは今までの自分の考え方を変える知らせであって、それまでの自分の価値観を変えていくことで、新しい道が拓けるものなのかもしれません。