国と文明を考える名著。福沢諭吉著、斉藤孝訳『文明論之概略』を読む

「1万円」で有名な福沢諭吉の名著に挑戦。

文明の本質と時代とは何か、国とは何かを考察する本ですが、原著は難しすぎて理解できず。

そこで、明治大学教授斉藤孝先生の現代語訳の方に挑戦することに。

文明論之概略の内容とは

明治維新から間もない頃、福沢諭吉が書いた書。人類が目指す文明、そして日本が国家として独立することの重要性が書かれています。

以下、本書の気になった内容と考察です。

引用は私の要約なのであしからず。

はじめに文明論とは何か?

人間の精神の発達についての議論。

論議の基準

議論の基準について。便利さは将来の不便に。だからこそ利害損得を論じるなら、「何にとって」なのかを決める。

(P22)

世の中を進歩させるもの

どの国にも超がつくほどのバカと、超がつくほどの天才は少ない。

かわりに、賢くもなく愚かでもない人が大半をしめる。これらの人が世論を作る。そして、その人らが時代を映す。

彼らの思考は平坦なので、異説や非常識を嫌う。

しかし、世の中を動かし、変えていくのは異説や妄説だ。そして、異説や妄説が新しい常識になる。

志あるものは、思うところを堂々と主張せよ。

(P30〜33)

文明の進化について

文明には次の三つの段階がある。

第一段階:衣食住が不安定。人に知恵なく、意思もない。「野蛮」の状態。

第二段階:農業によって食料が確保され、衣食はある。しかし、知や文化が不十分。人と人が猜疑しあっている。社会のルールも不十分で、旧来の慣習によって支配されている「半開」状態。

第三段階:自然界の掟を熟知し、人間自らが積極的に、自らの意思によって世界を広げていく自助独立の人の世界。

(P36〜38)

精神性をいかに高めていくか

物事の外見を取り入れるのは容易。しかしその精神性を取り入れるのは難しい。

日本でも、西洋の建物や法律の形を借りることは簡単だが、その神髄、本来の理念を理解するのは難しい。

それは国民も同じで、国民の気風を変えるには、国民の知恵を発達させて高い境地へ導くこと。

(P45〜46)

旧来の悪習を取り除く

「習慣」は取り除いてもよい。かりに廃止しなくてはいけない実用的な何かがあれば、それだけ残せばよい。

(P68)

人間について

人は生まれつき、志の高いものもいれば、低いものもいる。高いものは高い方へ、低いものは低いほうへ。そういう傾向がもともとある。

(P108)

物事の原因について

物事の原因には近いものと遠いものがある。まずは手近な原因を調べていくことで、分かりにくい遠くの原因が理解できる。

(P114)

正しい政治をするために

支配者が正しい政治を行うためには、まずは衆論を正すことが最優先。

(P132)

国・文明の成熟度を判断する基準

国民の知恵やモラルを調べれば、その国がどれほど成熟しているか、野蛮か文明国かが分かる。

(P136)

人間の知恵について

人の知恵は右肩に伸びていくもの。

そもそも、人は生まれつきバカであるから、学ばないといけない。だからこそ教育が必要であり、学ぶものは進歩していく。

(P190)

善悪を気にしすぎない

善人が善を成すとは限らない。

愚かな善人が、とんでもない大災害をもたらすこともある。悪人と呼ばれるものが、結果的に善を成すこともある。

安土桃山時代、徳川家康が豊臣秀吉を裏切り、天下を取った行為は悪である。しかし、その悪によって、天下太平の江戸時代が生まれた。

善悪など、1つの物差しで人を判断するのはナンセンスだ。

(P214〜215)

人をコントロールする手段

目の前に災厄と幸福を示し、方向性を管理していく。恐怖と幸せを提示し、人を動かす。これに成功したものが、権力を得ていく。

(P226)

権力はその人の本性を明らかにする

役人が偉そうなわけではない。政治家が傲慢でイヤな奴というわけではない。

その地位についたものが、もとからそういう人間だった、という話。政府や権力機構には、権力を持ちたい人間が集まる場所。

(P280〜281)

物事は先を見て

事を成すには、第一歩を踏み出すと同時に、先の第二歩を考えなくてはならない。第二の安楽のため、第一の苦痛も覚悟せよ。

(P321)

経済の二大原則

第一:財を蓄え消費する。

第二:財を蓄え消費するには、それ相応の知識や能力がいる。

(P327〜328)

感想など

この本が書かれたのは明治維新の激動の時代。日本という「国家」が形成されていくときです。

この本を読んでいて思ったのは、全く古さを感じないということでした。昔出版された本なのに、今読んでも納得してしまう。不思議です。

それはもしかしたら、今の日本が、明治維新当時の状況と似ている状態にあるからかもしれませんね。

固くて長くて読むのが大変な本でしたが、勉強になった一冊でした。

本の購入はこちら

コメント