おもてなしの心が原因?『ブラック企業VSモンスター消費者』を読む

(021)ブラック企業VSモンスター消費者 (ポプラ新書)

世の中が便利になっていく裏には誰かの犠牲が?

今野晴貴&坂倉昇平著『ブラック企業VSモンスター消費者』(ポプラ社)の読書感想です。

内容について

今話題のブラック企業が生まれる社会的な背景を分析した本。

この本を読むことで、日本独特の労働観や労働環境がサービス過剰の社会を作り、結果的に、世の中は便利になりつつも、その犠牲となる人が増えている現状が分かります。

以下、本書の気になった内容の要約です。

ブラック企業の本当の問題点は若者の労働問題(P34)

一般的に、ブラック企業のイメージは、賃金が安い、非正規社員をこき使うなどの労働環境が問題にされるが、ブラック企業の本質的な問題点は、若者の就業問題。

就職氷河期で、厳しい就職競争にさらされている若者は、一度でも就職に失敗すると、非正規雇用という不利な立場に置かれてしまう

そこで、「何がなんでも正社員に!」という願望が強くなった結果、ブラック企業に利用されてしまう。

ブラック企業が跋扈する背景には、正社員絶対主義の日本の労働環境があり、正社員と非正規の、絶対的な待遇の差などの問題がある。

ブラック企業の問題は日本社会全体にある労働についてのあいまいな考え方が原因(P63)

一般的に、欧米では、仕事の職務内容が明確であり、どこからどこまでが責任範囲となるのか、働く側にとって明確。しかし、日本企業においては、どこからどこまでが労働なのか、職務内容があいまいであることが特徴。

雇用契約を結んでも、職務内容が具体的に明確に示されることがないため、公私を混同したような長時間労働が当たり前になったり、仕事の内容が変わったり増えたりしても、労働者は反対することができない。

日曜日、お店が閉まっている国も(P104)

日本のように、24時間365日、絶え間ない労働をしなくても、経済的に上手くいっている国はある。

ヨーロッパの大国ドイツでは、お店は日曜日に閉まり、働く人がきちんと休める環境がある。しかし、日本の場合、サービス過剰が当たり前で、便利さを求める消費者の声によって、労働者が不利益を被る仕組みになっている。

「おもてなし」の対価は払われているのか(P135)

与えられた仕事をきちんとこなし、お客さんにしっかりとしたサービスを提供するのは日本人労働者の美徳。お金をもらう以上はしっかり働くべき。

しかし、この考え方が悪用されると、安い賃金で働くにも関わらず、「もっと」を際限りなく要求されてしまうような状態になってしまう。

良いサービスを求めるなら、良いサービスを提供する側に、適切な賃金を払うべき。適正価格適性サービスの原則

モンスター消費者にならないために(P179)

サービスを受けたお店に対してクレームを入れたくなったとき、モンスター消費者にならないために思い返したいこと。

1・クレーム内容は、商品者サービスに含まれているか?

2・クレームを入れるほどの金額の商品だったのか?(安かろう悪かろうに文句を入れるのはナンセンス)

3・クレームの原因に、自分の非はないか?

4・クレームの原因に、働く側の環境は影響していないか?

5・クレームの原因は不可避のものではないか?

6・クレームを言う相手は、問題解決の責任能力があるか?(権限のない相手に文句を言っていないか)

7・クレームはただの八つ当たりではないか?

感想など

北海道旅行最終日、函館空港の売店で購入して飛行機待ちのときに読みました。

「世の中のサービスが便利になっていくにつれ、常識の範疇をこえたモンスター消費者が登場。彼らがブラック企業を生み、その代償として労働者が便利さのツケを払うことになる」という本書の指摘はまさにその通りだと思いました。

・便利なサービスができて世の中が便利になる=消費者が便利にサービスを利用できる=お店や経営者が儲かる

というのが、商業活動本来のカタチだと思いますが、今は、そのバランスがおかしい時代のように思います。

・経営者(特に大企業)が利益至上主義になる→サービス過剰になりお客が自分は神様、一番偉いと勘違いする→経営者は儲かるが働く人が不利益を被る

という具合に、働く人が便利さの代償を払う状況になっているように思います。

私の住んでいる地域では、やたらとコンビニやスーパーが多く、激しい競争を繰り広げていますが、これはどの地域も同じような状況。

このような状況では、消費者として自分が店を選ぶ立場になるので、心のどこかで、「買ってやってんだぞ!」というような、傲慢な心理が芽生えてくるのかもしれません。

「こっちが売ってやってんだぞ!」というような態度の悪いお店もイヤですが、私も、モンスター消費者にならないよう、自制したいものです。

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