歴史の敗者から学ぶ人生訓。『「戦国大名」失敗の研究』の読書感想

「戦国大名」失敗の研究 (PHP文庫)

学ぶべきは勝者より敗者。

瀧澤中著『「戦国大名」失敗の研究』(PHP文庫)の読書感想です。

この本について

武田勝頼豊臣秀頼、戦国時代の歴史の敗者に失敗に焦点を当て、なぜ彼らが戦いに敗れたのかを分析する失敗学の本。

歴史の勝者に焦点を当てた本は数多くあるものの、歴史の敗者に焦点を当て、敗れた人間がどのような失敗をして敗北したのかを考察する本は少ないもの。

この本は「失敗」を焦点に当てた数少ない本の1つで、戦国時代に滅亡した大名を例に、失敗する原因は何なのかを、様々な視点から分析、教訓を勉強する内容になっています。

この本を読むことで、勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、負けるときには負けるだけの理由があることが分かります。

以下、本書の読書メモです。

勝者と敗者を分けるもの(P5)

戦国大名の成功と失敗を分けたのは政治力の差。

政治力とは周囲を巻き込む力であり、大名自身の能力だけでなく、補佐する人間のサポートや家臣団など、総合的な力。

周囲の人間を巻き込んで影響力を発揮できるか。この力があるかないかが、大名の運命を決めた。

武田勝頼の敗因(P28)

武田信玄の後、武田家を継いだ勝頼。

勝頼が天目山で悲劇的な最期を迎えた理由は、運のなさと権力掌握の失敗にある。

勝頼自身は無能ではなく、むしろ有能な人間であったが、武田家を継いだ状況が悪かった。

勝頼は信玄の遺言で引き継ぎ的に当主になったため、重臣からは認められず、そのために、周囲への権力行使が思うようにいかなかった。

【武田勝頼が武田家を継いだときのイメージ】

1・一代目のカリスマ社長が興した会社を社長の死により二代目社長が継ぐ。一代目の下で働いてきた重役たちは二代目社長をナメている。

2・二代目社長はあせって自分の力や実績をPRするために行動するも、重役たちに批判されて、八方ふさがりになってしまう

武田家当主としての影響力を発揮するため、戦いに勝ち、自らの力を常にPRする必要があったが、それが長篠の戦いの敗北につながっていく。

他国との同盟の失敗は国の滅亡へつながる(P44)

同盟の基本は、利益と軍事的な安定。

自国を守り、主張するためには、経済だけでなく国防力があることが前提。同盟は、自国の足りないところを補うものであり、安全を保持するためのもの。

軍事的に役に立たない同盟は意味をなさない。

徳川家康の同盟術(P50)

徳川家康と織田信長の同盟は日米同盟のようなもの。

小勢力だった徳川家が独立を維持するため、織田家と同盟。様々な犠牲を払いながらも、利用できるところは利用し、独立を維持。

織田信長を同盟相手として選んだ理由は、自国の地政学的な意味や弱点を補うため。織田家との同盟を基軸として、家康は徳川家を存続させるため、ありとあらゆる手を打った。

身内の裏切りが致命傷に(P60)

歴史上、武田勝頼は武田家を滅ぼした凡将扱いされるが、史実とは違う。

信玄以来の重臣たちからは嫌われていたが、最期を迎えるまで、国内で領民に謀反や反乱を起こされることもなかった。

統治者としては有能な人間であり、決して無能な人間ではない。

最終的には勝頼は滅ぶことになるが、武田家が滅んだのは、勝頼だけの責任ではなく、一門衆の裏切り(木曽義昌・穴山信君)が大きい。

一門衆の木曽義昌の裏切りが発端に信長が侵攻、穴山梅雪に至って計画的に裏切っていた。一門衆だからといって、裏切らないことはない。

「脳筋」柴田勝家のイメージはウソ?(P112)

一般的に柴田勝家というと武力が高く知力が低い「脳筋」武将のイメージがあるが、実際の勝家は、文武両道、戦だけでなく政治もできる名将だった。

新田開発や検地を行い両国経営に力を注ぎ、善政をしいた。領民にも慕われていたという。

政治力とは(P152)

政治力=自分の考えを実現する力

政治力は人の力を結集させて一つに向かわせる力であり、政治力が大きい人は、人々が何を望んでいるのか、敏感に反応する。

自分の欲求を満たしてくれるリーダーを、人々は指示する。

情報はまず疑う(P239)

ウソ情報を流し敵対勢力を混乱させるのは基本。

世の中に広がっている情報はまずウソだと思うこと。情報は多方面から、かつ疑って判断すること。

ナンバー2は注意しないとすぐに潰される(P261)

トップが恐れるのは2番目の人間。

トップにとって、2番目の人間は、自分の権力を脅かす勢力になり得る人間。だから敵になる可能性があれば徹底的に潰す。

2番目の人間が生き残るためには、「トップに対して絶対に逆らいません」という態度を示し、トップに叛意を疑われないことが絶対必要。

生き残るために、トップの勢いが衰え時が来るまでは、ひたすら恭順の姿勢を示し、トップがいなくなったら(もしくは衰えて勝機が見えたら)、自分がトップになる。

敵を戦わずして追い詰める段階政策(P268)

影響力の大きい政策は人々の反発を買うが、小さな政策を徐々に実施、追い詰めていく段階政策は、徐々に敵を追い詰めていく方法として効果的。

1つ1つ、反発が少ない政策を実行し、敵に気がつかれないよう、がんじがらめにできる。

実戦経験がない人間を上層部にするな(P277)

大阪冬の陣で、戦の経験がある真田幸村や後藤又兵衛の意見は軽んじられ、戦の経験のない淀君や大野治長らの意見が採用されたが、結果は歴史が示す通り。

現場経験のない人間が上に立つと、いくら周りが良いアドバイスをしようと、適切な戦略を選択することができない。

組織の上層部には実務・現場経験を持つ人間を選ぶ。

感想など

戦国大名の失敗学として非常に面白かった一冊。

武田勝頼、豊臣秀頼と有名大名を例に、どこで失敗したのか、失敗する原因は何なのか、理論的に分かりやすく理解することができました。

この本の面白いところは、織田信長や徳川家康のような勝者視点ではなくて、歴史で破れ滅んでいった敗者視点であるところです。

勝者=成功例と考えると分かりやすいかもしれませんが、成功例は本人の能力やカリスマなど、例を学んでもそのノウハウを普遍化して利用できないものが多いですが、失敗例は違います。

「これをすれば失敗する。」

「こんなときに負ける。」

このような失敗例は、ノウハウとして普遍化できます。

成功から学べることは少ないが失敗から学べることは多い。これが失敗学を学ぶ1番のメリットだと思います。

「天国へ行く最も有効な方法は、地獄への道を熟知することである」というマキャベリの言葉通り、他人の失敗から学ぶことで、その教訓を人生に生かすことができます。

「○○してはいけない」を知ることは、「○○しなさい」を勉強するより、有益で実用的。そんな一冊でした。

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