仕事を選ぶのは生き方を選ぶこと。
大塚明夫著『声優魂』(星海社新書)の読書感想です。
この本について
『マスク・オブ・ゾロ』などハリウッド映画の吹き替えや人気ゲーム『ファイナルファンタジーXII』などで有名な声優、大塚明夫さんの本。
仕事の心構えや取り組み方など、声優志望者のための本として読むこともできますが、一芸を極めたプロから、仕事に対する取り組み方、意識の持ち方を学べる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
夢を追う世界はハイリスクローリターン(P10)
役者業、声優業など、夢を追う仕事は、ハイリスクローリターン。
「能力を磨いて努力すれば、誰でも成功できる」なんて話はなくて、頑張っても報われず、上手くいかない人が多い世界。
普通の仕事で生きられるなら、わざわざ選ぶ必要はない世界。
声優は受け身の仕事(P21)
声優は自分の力量を高める努力をし、ひたすら仕事が来るのを待たなければいけない。
誰からから仕事を依頼されないと、活躍の場すらない。
人気だけではダメ(P26)
幸運によってスポットライトを浴び、一躍時の人、仕事がたくさん来る時期がある。
しかし、きちんと実力を磨くことを怠っている人は、そこで化けの皮が剥がれ、結局ダメになってしまう。
「人気がある」だけではダメで、「人気があって技術もある人」が長く生き残る。
声優は生き方の選択(P42)
声優のように、夢を職業にする場合、それは職業の選択ではなくて、生き方の選択だと考える。
仕事はハイリスクローリターン。頑張っても上手くいかないかもしれない、幸せになれないかもしれない。
では、なぜその仕事を選ぶのか。その理由、覚悟を持たないと、いつか後悔する。
人気声優の山寺宏一さんについて(P68)
一流の声優として活躍している山寺宏一さん。
山寺さんは最初から何もかも上手くいっていた天才肌ではなく、地道な努力を積み重ねてきた忍耐強い人。
現場スタッフ、会社の関係、スポンサーの関係の人の顔と名前を覚え、いつどこで誰と会ったかなど、努力を重ねて、成功してきた人。
結局、人生は努力だけではどうしようもない(P88)
人生は努力ダメではダメ。
上手くいくかいかないか、そこには、自分の意志以外、運のようなものがある。いろんな人の支え、運があって、初めて成功できる。
ただし、運だけでも成功はできない。運をつかむまで、地道に努力、自己鍛錬を怠らないこと。
見ている人は、努力を見てくれる。幸運を期待するだけでなく、いつでもチャンスをつかめるよう、普段から準備しておくこと。
いろんな感情を経験することが深みを作る(P119)
普段から、仕事付き合い、旅行、読書、芸術鑑賞など、いろんな体験を積む。それが、表現に生きてくる。
ステレオタイプの生き方について(P143)
「こっちに行けば安心だろう」というステレオタイプの生き方は、誰もが選ぶ安全パイの道。
その道を歩んでいれば、人と違うこともないので、安心はできる。しかし、それで上手くいくかどうかは話は別。
誰もが行く道は、安心はできるかもしれないが、その道を行くことで、得られるものは少ないかもしれない。
不遇の時期はどうするか(P162)
人生、誰にも、物事が上手くいかず、「つんだ」と感じる時期がある。
そういうときは、いろんなことを考え、どうすればいいか、何をすべきか自分なりに熟考、覚悟を決め、やれることをやっていく。
上手くいかない理由を他の人や環境のせいにせず原因を考え抜く。そして、変えていくことを、変えていく。その姿勢が大切。
感想など
本屋さんで「声優だけはやめておけ」という帯に興味を惹かれ購入。
アニメ、洋画の吹き替えのギャラはいくらとか、結構現実的な話が多くて、人気商売の裏側は結構大変なんだなと思って読了。
夢を追うこと、人生の可能性を追求することは若さの特権かもしれませんが、その一方、なぜそれを選ぶのか、将来はどうするのか、現実的で冷静な視点も大切なのかも。
ハイリスクローリターンな生き方、ではなぜそれをあえて選ぶ必要があるのか?その答えを明確に答えられるなら、夢に、人生を託す価値があるのかもしれません。