歴史は常に「更新」される。『逆転した日本史』の読書感想

逆転した日本史~聖徳太子、坂本竜馬、鎖国が教科書から消える~ (扶桑社新書)

歴史の教科書から竜馬が消える!?

河合敦著『逆転した日本史 聖徳太子、坂本竜馬、鎖国が教科書から消える』(扶桑社新書)の読書感想です。

この本について

変わりゆく歴史の教科書の変化について仰天しつつ理解できる本。

毎年毎年歴史の教科書は更新。その結果、歴史の教科書から邪馬台国の場所の記述法が変わったり、武田信玄や上杉謙信の名前が消え、「鎖国」という表現もなくなる。

そんな、歴史教科書の変遷に驚く一冊です。

以下、本書の読書メモです。

大化の改新(P21)

645年といえば大化の改新。

「中大兄皇子と中臣鎌足が天皇をないがしろにし横暴の限りを尽くしていた蘇我蝦夷と入鹿親子を倒した事件」

と教えられてきたが、現在の歴史教科書では「大化の改新」という言葉は使われておらず「乙巳の変」という言葉が使われている。

ちなみに最新の研究によると、「乙巳の変」は中大兄皇子ではなく、軽皇子(後の孝徳天皇)によって計画された説が主流となっている。

士農工商のウソ(P46)

江戸時代といえば「士農工商の身分制」と教えられてきたが、研究により、そのような厳格な身分制度は存在していなかったことが明らかになっている。

実際は武士が農民になったり、商人が武士になったり、身分間の移動が可能であった。

つまり、私たちが教えられてきた江戸時代=厳格な身分制度社会という考え方は、完全に間違い。

坂本龍馬人気の理由(P57)

歴史に登場する人物の評価は常に変わる。とくに、有名な人物ほど、実際の歴史的な業績というよりも、その時代のイメージによって評価は変遷する。

例えば坂本龍馬。

竜馬が人気である一番の理由はやはり司馬遼太郎(司馬史観)。小説のイメージによって実際の龍馬とは違う竜馬象がひとり歩きし、竜馬人気が作られた。

それと日本人として覚えておきたいのが乃木希典将軍。

乃木将軍は日露戦争時の旅順攻略でたくさんの死傷者を出した無能な将軍というイメージが司馬遼太郎によって作られているが、実際の事実とは違う。

これは、児玉源太郎の活躍を見せるために、意図的に乃木将軍を無能扱いしており、アンフェアな話になっている。

実際の乃木将軍は高潔な人格であり、旅順の攻撃のリスクを承知していたが、様々な事情によって、たくさんの兵士を犠牲にせざるを得なかった。

そして公平を期すために、息子の勝典も最前線で闘わせており、勝典は戦死した。

極めて人格的に優れた将軍にも関わらず、間違ったイメージによって無能の烙印を押されていた乃木将軍だが、近年は正しい評価がされつつある。

綱吉=暗愚説(P80)

江戸徳川といえば5大将軍綱吉。綱吉といえば生類憐れみの令のアホ将軍のイメージ。

しかし綱吉アホ説は完全に間違いで、綱吉は徳川歴代将軍のなかでも重要な役割を果たした名君。

生類憐れみの令はイメージが付与されて間違った印象が広がっているが、これはずばり、武断の世から文治の世に変わるための政策であった。

世の中が洗練され、平和に変わるための政策であり、綱吉によって江戸時代は新しい時代を迎えることになった。

鎖国はない(P145)

江戸時代といえば「他国との国交を閉じた鎖国時代」と教えられてきたが、これは現在の歴史教科書では「鎖国」という言葉は登場しない。

なぜなら、最新の研究によって鎖国などなかったことが分かっているから。

実際江戸幕府は国を閉じているのではなく、付き合う相手を厳選していただけ。海外との交流はあり、鎖国によって進歩から取り残されたというのは完全にウソ。

江戸は農民にとって暗黒時代だったのか(P150)

江戸時代=年貢の負担=悪い代官による厳しい取り立て=暗黒時代

的なイメージが植え付けられているが、概ね江戸時代は農民にとっては決して暗黒時代ではなかった。

年貢の負担は五公五民が原則だが、江戸時代の後期になると農業技術の発展によって収穫量アップ。実際の負担率は10数%程度と、かなり負担は少なかった。

それに、藩による理不尽な取り立てに対しては農民は平気で立ち上がり、一揆を起こした。

つまり農民は一方的に搾取されるような弱い存在ではなく、お上に文句があれば積極的に行動を起こした。

戊辰戦争と庄内藩(P154)

新政府と東北諸藩が戦った戊辰戦争。

東北諸藩がボロ負けのイメージがあるが、そのなかで唯一、最強を誇った東北の藩があった。それが、徳川四天王の酒井忠次を藩祖とする庄内藩の酒井家だった。

大商人の本間家のサポートのもと、庄内藩は善政を敷き、武士と領民は協力し合って一致団結。

戊辰戦争が起こると佐幕派として奥羽越列藩同盟に参加。新政府と戦い勝利。決して領内に敵を入れることはなかった。

しかし、会津藩の降伏によって戊辰戦争は終結。庄内藩は無敗のまま、新政府に降伏した。

西郷隆盛の人物像(P163)

明治維新の立役者である西郷隆盛。

度量が大きい人物というのがそのイメージだが、実際の西郷は情に流されやすい優柔不断なイメージを持っていた。

そのため、彼の感情的な弱さによって引き出された結論から、様々な犠牲が生まれた。

例)

・江戸城無血開城後の江戸の治安悪化。榎本武揚ら主戦派も逃し、戦争の火種を残した。

・西南戦争。本人は蜂起に反対だったが担がれてしまった。

など

反面、西郷の友である大久保利通は正反対。感情を抜きに、自分の信念のためにするべきことを徹底した。

感想など

「今の歴史教科書はこんなに変わったのですか!」

と驚愕してしまう本。

大化の改新とか江戸の三大改革とか、学生の頃聞いた話が教科書から消えてしまうのを知ると、寂しい気がする反面、新しい歴史の教科書に興味がわいてきます。

でもこうして歴史教科書の変化をみると、自分のときの教科書は、江戸時代=悪い時代であったような、印象操作的な歴史を教えられてきた印象が強いなー。

近年は江戸時代再評価の本も出ていますが、歴史は常に更新されていく。もしかしたら、見る人によっても評価する人にもよっても歴史は変わる。

つまり、今まで教えられてきたことも、それが必ずしも正しくはないということ。そういうものなのかもしれませんね。

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