考えること。だから人は人になれる。
池田晶子著『人間自身―考えることに終わりなく』(新潮社)の読書感想です。
この本について
女性哲学者、池田晶子さんの哲学エッセイ。
男女平等などの身近なテーマから天才とプロ、テレビや政治など、幅広いテーマで独自視点のエッセイを楽しめる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
奇跡とは(P28)
生きることは死ぬこと。死ぬことは生きること。それはどちらも奇跡であり、生きることの尊さを説くだけでなく、死ぬことの尊さも大切に説くべき。
天才について(P71)
天才とは当たり前のことを発見する能力を持った人のこと。他の人が何とも思わない、気づかないこと。そこに価値を見つけることができる人を天才と言う。
覚悟を持つこと(P77)
プロフェッショナルとは、俺はこの仕事で食っている、その覚悟がある人のこと。しかし実際には食うことと覚悟を持つことは関係ない。
食えるか食えないか、そんなことはどうでもいい。自分はどうしてもこれがしたい、これしかできない、だからそれをする。この心構えが本当の覚悟。
オジサンとオバサン(P106)
男も女も年を取ると、オジサンオバサンになる。
男の場合、年を取ってオジサンになるが、女性ほどインパクトは弱い。女性は年を取るとオバサンという第三の性に生まれ変わる。そこに恥や弱さはない。
オバサンは強い。それは恥も弱さも何もかもかなぐり捨てた新しい性。怖いものしらずの根性が、オバサンの強さの秘訣。
ネットと自己顕示(P116)
ネットで人々はハンドルネーム、つまり匿名で何かを書き込む。
そこには一種の自己顕示があるが、本名を名乗らずハンドルネームで自己顕示しようとする、そこに匿名の複雑さがある。
感想など
ジュンク堂で池田晶子フェアが開催されていたので読んでみた本。エッセイのテーマは幅広いですが、時々すごい響いてくる言葉がたくさん見つかります。
こういうエッセイを読んでいると、考えることとはなんだろう、こんな考え方はどうだろう、と物事の視点が変わっていくというか広がっていくのが分かります。
そんな具合、パラパラページをめくって文字を追っていく読み方はもったいない本。
自分なりに考えてみていろんな視点で物事を見る。そうしていると、本当に読書は楽しいですね。