自分自身で考えてみる、だから答えが見えてくる。
池田晶子著『人生のほんとう』(トランスビュー)の読書感想です。
この本について
「常識」「社会」「年齢」「宗教」「魂」「在在」、この6つの視点から人生とはなんぞやを考察する本。
「こうすればこうなる」的な人生論とはひと味違う、本を読みながら考えさられてしまう、読み手の主体性が要求される濃厚な一冊になっています。
以下、本書の読書メモです。
人生とは(P14)
人生とは何か=自分の存在とは何か。
人生は人が生きること。生きることを考えることは、生存について考えること。生きて在る、つまり人生を考えるということは、自分の存在について考えること。
問いを発している自分、その存在はとは一体なのか。それは名前や体を持っている自分ではなく、問いを発している自分という存在の謎。
年収はどうである、仕事はどうである、そのように自分は某であると思っているこの「自分」とは何なのか。
それが哲学的に自分を考えることであり、人生を考えること。
思い込みについて(P43)
本来存在していないのに、それが存在するものだと思っている。これを思い込みという。思い込みとは人の思いで、私たちは、頭のなかでたくさんの思い込みを抱えている。
例えばお金。
お金それ自体は物理的なただの紙か、金属片。しかし、お金それ自体に価値があると思い込んだ人が、お金を求め、追いかけている。それが現代社会。
愛とは(P59)
愛とは自分が何ものでもないという一種の状態。愛は何か対象があって発生するものではなく、求めたり求められたりするようなものではない。
だから愛を失うということはなく、失われるものがあるとすれば、それは愛ではない。
ネットに頼るということ(P158)
ネットはとても便利なもの。
情報検索、情報獲得の点ではとても役に立つが、ネットに依存すればするほど、自分でものを考えなくなってしまう。
目の前にある情報を見て、それを受け取るだけ。ネットに慣れると、目の前に見えているものしか見えなくなってしまう。
最後には、自分の力で考えることができなくなってしまう。
感想など
ページを進めるたび、「これはどういう意味なんだろう」とつい立ち止まりながら読んでしまった本。
じっくりじっくり読み進めたので、読了するのにかなり時間がかかりましたが、こういう効率を度外視した読書も楽しいもの。
自分で考えて理解しようとする、これが読書の楽しみなのかも。
といっても、この本は一度読んだだけでは、まだまだ分からない、「それはどういう意味なんだ?」というところがたくさんあるのが正直なところ。
哲学の本は難しい本、さっと読むことが不可能な本が多いですが、この本はどちらかというと、講義のような感じで難解さはありません。
ただ、平易な言葉で書かれているので、さっと読めるには読むことはできるものの、一文一文、自分で考えて理解することを要求されている感じです。
ビジネス書を読む感覚で読めない本ではありますが、スローリーディングでじっくりコツコツ、文章の一つ一つをゆっくり味わって、自分なりに考えてみる。
文章から自分なりの答えを見つける。そんな読書の楽しさが味わえる本だと思います。