『本当は怖い小学一年生』の読書感想 – 小一プロブレム問題の本質は時代遅れの学校システムなのか

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(006)本当は怖い小学一年生 (ポプラ新書)

子どもの問題行動の裏側にある本当の問題について。

汐見稔幸著『本当は怖い小学一年生』(ポプラ社)の読書感想です。

この本について

いわゆる「小一プロブレム」についての本。

小一プロブレムとは

小学校に入学した一年生の子どもの問題行動のこと。先生の話を聞くことができない、授業中にそわそわ動きまわってしまう、集団行動ができないなど、様々な問題行動が特徴。

小一プロブレムを子どもの問題行動ではなく、「子どもなりの教育システムへの異議申し立て」という視点でとらえ、子どもにとって良い教育とは何なのか、考える内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

問題の本質は教育システムの問題?(P13)

日本の場合、幼稚園では保育園では自由に動き回れていた子どもたちが、小学校へ上がったとたん、授業中はじっと静かに座っているように強制される。

当然、それに馴染まない子どもも出てくるが、これは、子どもたちの問題というより、教育システムの方に無理がある。

海外では、子どもが徐々に机で勉強する体験をするための慣らし期間が設けられているが、日本ではそれがないがゆえ、子どもが小学校という環境に戸惑ってしまうのも当然。

子どもが授業中じっと座っていられないのは仕方ないところがある。

また、小一プロブレムは、子どもからのメッセージ。「今の教育システムは時代にそぐわない」という意義申し立て。

その視点で小一プロブレムを考えると、日本の教育システムの在りようについて、見えてくる問題がある。

生活感なき現代(P40)

現代は、子どもが生活のなかで世の中の「リアリティ」を実感しにくい時代。

昔のように親が子どもに手伝いをさせることも減り、「近所のおじさんおばさん」と接する機会もなくなり、普段の生活のなかで社会性が磨かれることはほとんどない。

このことについて、親自身が自覚しないと、子どもの生きる力が育つどころか、どんどん低下していく。

子どもの問題行動は親との関係性の問題(P54)

親が子どもに過剰に何かを押し付けると、それがどこかで暴発する。

子どもは親の顔色を伺い、期待に答えようと頑張る。それがストレスになり、暴力やいじめの問題など、様々な問題を引き起こす。

友だちとケンカした、万引きした、そんな子どもの問題行動の裏には、親との関係性に問題があることが多い。

深刻な家庭の教育格差(P61)

近年問題になっているのが、家庭の教育格差。

各家庭によって子どもへの関心や教育意識に大きな差があるのが現状で、日々生活するだけ精一杯、子どもへの関心を持ちにくい家庭もあれば、子どもへの教育に力を注ぐ家庭もある。

家庭の教育格差の問題の本質は連鎖性

親が生活するだけでやっとやっとの状態の場合、子どもも十分な教育を受けることができず、結果的に、子どもも将来貧困層になってしまう可能性が高い。

日本では、子どもの教育格差是正のための様々な法律が出来てはいるものの、現状、問題が解決されることは難しい状況にある。

過干渉が子どもを追い詰める(P70)

「あれしなさいこれしない、あれはどうした」など、必要以上に子どもに対して干渉していると、子どもは自分から何もしない受け身人間になってしまう。

子どもは任されれば十分自分で選択する力を持っている。親がすべきなのは、子どもにあれこれ指図するのではなく、子どもの行動を見守り、サポートをすること。

普段の会話のなか、子どもの話を聞き、考えさせ、子どもが自分の意見を言うように工夫すること。

便利で楽な暮らしの代償(P113)

敗戦後の貧しい時代から高度経済成長時代へ、そして日本は豊かな国になった。

日常生活では便利な商品が溢れ、24時間営業のコンビニなど、生活に便利な暮らしが実現できている。

しかし、生活が便利になったということは、自分の頭で考える機会が減ってしまうということでもある。

ボタンを押せば、コンビニへ行けば、○○さえすれば△△できる、そんな便利さが、私たちの生活のリアリティを奪い、より抽象的、現実性のない暮らしへと向かわせている。

感性を養うために(P149)

子どもの教育において大切なのは、計算や暗記といったようなものだけでなく、実体験を伴う感性を磨く体験をさせること。

音楽をする、旅行へ行き美しい景色を見る、自然のなかで美味しい空気を吸うなど、リアリティのある経験をさせること。

そうした経験が、子どもの感性を育み、美しさ、喜び、人間らしい感性を育てていく。

感想など

「小一プロブレムは子どもの問題行動=子どもの教育システムの不具合への異議申し立て」

という視点が印象的な本。

子どもの問題行動は子ども自身の問題だけではなくて、環境に問題があるとしたら、子どもの行動を「矯正」させようとするのは確かに難しいと思います。

現実問題、日本では授業崩壊やモンスターペアレントなど様々な問題がありますが、これらの問題は、「今の学校システムだからこそ起こっている」という側面もあると思います。

「アメリカの学校は自由」というイメージがありますが、実際はかなりイメージとは違います。日本の公立学校でアメリカのシステムが採用されたら学級崩壊はかなり減るでしょう。)

システム、制度的に問題がある現状、日本の学校制度が問題を抱えているのは間違いないのかもしれません。

小一プロブレムや授業崩壊などの問題も、時代にそぐわない学校システムの問題と考えれば、問題が起こらない方が不自然なのかもしれませんね。

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