『不動産男子のワケあり物件』の読書感想 – 部屋探しは人生の幸せ探し

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不動産男子のワケあり物件 (メディアワークス文庫)

部屋を借りるとき、営業マンの話を信じてはいけない?

成田名璃子著『不動産男子のワケあり物件』の読書感想(メディアワークス文庫)です。

あらすじ

ダメ大学生の濱田は、四回生になっても就職先が見つからず自己嫌悪に陥っていた。

そんなクリスマスの日、濱田は街で美人OLに声をかけられる。

美女は中堅不動産会社、イエサガ不動産のOLで、来るはずの採用面接の学生を探しており、濱田のことをその学生だと勘違いした様子だったが・・・。

舞台は賃貸不動産業界

「不動産屋を見たら、まず詐欺師だと疑え」(P4)

という過激な書き出し(というか大丈夫なのか?)から始まる不動産営業をテーマにした小説。

主人公は濱田充という五流大学の学生で、「モテない、金ない、覇気ない、そして大学卒業を控えた年末、内定が一個もない」(P6)男。九十九社から不採用通知を受け取り、なかなか就職が決まらず。

そんな濱田が、クリスマスの日、リクルートスーツを着て街をぶらついていると、中堅不動産会社イエサガ不動産の色白美人OLの杏奈から面接予定のエリート大学の須藤と間違われ、採用面接を受けることに。

エリート大学生になりすまし面接を受けた濱田は面接に合格、杏奈からもアプローチも受けて須藤になりすまし、働くことに。

賃貸営業マンとして働く濱田が徐々に成長していき、最後はめでたしめでたしというストーリーになっています。

不動産業界は怖い?

この小説の舞台は賃貸不動産業界。

そのため、この小説では、賃貸の用語がガンガン登場します。

【キメ・ナカ・アテ】(P23)

不動産の営業テク。まず最悪の「アテ」物件に客を案内。つぎにお客の条件のなかでまぁまぁいいかなと思ってもらえる「ナカ」物件に紹介。最後、本命の「キメ」物件を紹介する。

【元付と客付】(P29)

賃貸仲介の会社もいろいろあって、元付と客付、二種類の会社がある。

元付は大家に頼まれ直接入居者を探す不動産会社。一方、客付は、大家との関わりはなく、元付の不動産とお客の間に立ち物件を紹介する仲介業者の色合いが強い不動産会社。

【告知義務】(P181)

事故や訳ありで問題のある物件のことを、借り手にきちんと説明する必要があること。実際には、告知義務は一度誰かが住めば説明不要になる。

そのため、「物件で事故発生→賃貸の社員orバイトが入居」という手法があり、借り手が事故物件と知らずに入居してしまうことも。周辺相場より極端に安い家賃の物件は事故物件を疑うべし。

また、不動産業=怖い人というイメージに則ってか、濱田がバイトすることになるイエサガ不動産の社長の黒岩のキャラもそのイメージの定石通りのキャラになっています。

やり手ながら怖さはヤ◯ザ顔負け。普段ゆったりニコニコ、善人面をしていますが、「てめえ」等の恫喝の言葉を使い、客をぶち込む(成約させる)ために効率を最重要視する男で、物件紹介も効率と儲けを何よりに考えます(そんな黒川も、もともとは・・・)。

「理解力のないバカが大嫌い」な男で、周囲に緊張感を与えます。地方出身で上京するために部屋を探す客を「じゃがいも」客と呼び軽蔑。右も左も分からず部屋探しで不安を感じている客を、黒川にとって最も利益率の高い部屋へと誘導していきます。

そのやり方に反発を覚えた濱田は、「どうせ俺は偽物の須藤でおまけにバイトだ、クビになってもいいさ」とアクションを行動して、「筋」を通して頑張っていくのがこのお話です。

感想など

賃貸不動産をテーマにした小説ということで、タイトル買いした本。

この小説のメインは若く不動産業界に飛び込んだ濱田が「お客のため!」と理想を持ち頑張っていく姿、成長していくところが小説の着目部分だと思うのですが、予定調和的なめでたしめでたしになることは、最初から明瞭でした。

大学四回生にも関わらず就職が決まっていないのに賃貸営業のバイトにのめり込む濱田に、「お前の就職試験はどうなったんだよ!」と気にしつつ最後まで読んでみると「まぁそうなるよなぁ」という結末。

深く考えなければ、賃貸業界に入った若者の成長譚として、物語を楽しむことができます。

ただ、読んでいて「?」となったところもしばしば。

自分の就活を放っておいて不動産のバイトに熱を上げたり、関わった顧客に干渉しすぎていたり(顧客の飯田を一方的に芸能人のストーカー認定して「彼を犯罪者にしてはいけない!」と尾行)、ちょっとなぁと感じたのも正直なところ。

最後は約束されたハッピーエンドになりますが、予定調和的な流れで、物語を読み終えても、大きな驚きはありません。

個人的には、本の最初「不動産屋を見たら、まず詐欺師だと疑え」という過激な文言があったので、もっと黒い、ダークでえぐい話が出てくると思ってましたが、そこまでの話はありませんでした。

でも、賃貸はこの小説に登場するとおり、自分軸で賃貸を探さないと、「こんなはずじゃぁ・・・」という失敗をしてしまうのも確か。

転居すること、家を借りることは人生の転機。とても大切な瞬間になることは間違いありません。

部屋探しで、

「俺(濱田)、最近思うんです。不動産屋って、ただ単に部屋を探す仕事じゃない。その人の人生の居場所とか、もしかしたら、幸せとかまで探せる仕事じゃないかって。いや、むしろそういう不動産屋でありたいって」(P210)

こんなことを心から思う営業マンさんがいたら、部屋探しのお手伝い、ぜひお願いしたいところです。

本はこちら

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